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[一度カルメンへと視線を向けて楽器を構える。
何を演奏しようかとずっと考えて、漸く決めた音を指が紡ぐ。
選んだのはドビュッシーの「月の光」
月のいとし子たちを包むように緩やかに音が流れる。
その音は、広間にも届くかもしれないが
カルメンには届いているだろうか、喜んで、くれるだろうか。
やがて、演奏を終えたなら、普段と同じように礼をする。*]
─ 二階・客室 ─
[入ってきたのは、イヴァンとオトフリート。
>>182横たわる自身の骸にイヴァンが手を伸ばすのに、何をしようとしているのか最初は分からなかったけれど]
…あぁ。
[めくられたシーツから露わになった顔と、演奏の準備をするオトフリートを見て。
こんな状況になるとは夢にも思っていなかった、最初の日に交わした約束を果たそうとしてくれているのだと理解して。
微か、堪え切れない吐息を零した]
[先ほどいた二階から聞こえくる音色。
緩やかに目を伏せ、それに聞き入る。
音が止めば、再び前を向き、
広間へと立ちより、
ユリアンとエーファを見詰め、十字架を握った。*]
[やがて、収束する音に一つ息を吐き、ゆるりと顔を上げる。
一礼するオトフリートに対し、心からの拍手を向けた]
……良い音だった。
最初に聞いた演奏会の時の音より、俺はオトフリートの音の方が好きだな。
[事の発端となったものであるために忌避する部分もあるが、純粋に音だけ比較してもオトフリートの音の方が好ましく聞こえる。
奏でる音に彼の想いが籠もっているからなのかもしれない*]
─ 二階・客室 ─
[>>185用意出来た、とオトフリートからの呼びかけに視線を向けると其処には初めて見る演奏家の顔があり。
けして二人に見えることは無い、けれど女は演奏会に列席した様に凛と座ってその演奏を聴いた]
……………本当に、綺麗。
[>>186奏でられるそれは、女が最初に魅入られたと変わらぬ彩のまま。
仮面をつけた道化達の内なる悲しみが、繊細な旋律で彩られていて]
───…やっぱり、貴方は全部、知っていたのね。
―カルメンの部屋―
[演奏をしている間は他の事はあまり気に掛からない。
だけど、ほんの僅か変わる気配>>187に気付き、ちらりと一度だけ目を向ける。
月を想わせる曲は、今の彼には重かったかもしれないと
そう思いながらも音を止めることはなく。
最後の一音が空気に溶けて消え、拍手の音>>188に漸く肩の力を抜いて、笑う]
ありがとう。
そう言ってもらえるとやっぱり嬉しいな。
カルメンにも届いているといいんだけど。
[そう言って一度天を仰ぐ。人狼が行き着く先も天国であればいいと願って]
どうする?
広間に戻ろうか?
[広間に戻れば、彼らと顔をあわせることになる。
すぐに動きがあるとは思えないけれど
どちらにしても、これ以上避けることは出来ないのだと知っているから。**]
[まるで自分達の事を謳っているようなその詩曲の、闇夜に降り注ぐ光のように緩やかな優しさに。
オトフリートが奏でる音に込められた心遣いを感じて、目を伏せて]
…………二人とも。
約束を叶えてくれて、ありがとう。
二人はどうか───…生きのびてね。
[自分にとって、二人はそれぞれ生きる意思を支えてくれたから。
自分のように命を落とさないで欲しいと、心から願い、祈った]
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