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[名前を、と言うエーリッヒの言葉に多少ズレては居るがそちらへと顔を向け]
…カーラ、は、カーラ、なの。
え、と……エ……エー……。
…エー、ヒュ?
[エーリッヒの名を紡ごうとして、別の音が混じる。
確認を取るように、ゆっくりと首が傾げられた]
[エーリッヒが向けるのはあくまでも柔和な。
だけど、それにも警戒は崩さずに]
…ハインリヒ。
ハインリヒ=レーヴェ、だ。
[問われたことだけを短く返す]
[「そんな」と、言いよどんだ様子に]
謙遜する事はないのだけどね、冗談でもお世辞でもないのだから。
[そして、俯けで手を握り締めたゲルダを見つめ]
なんだか、気遣いさせてしまったようですまないね。
[と瞼を閉じて言う]
[視線の先からポツリポツリと名乗りが聞こえる]
カーラさんですね。
わたしは、エー リッ ヒ = ク ライ バー と言うんだ。
よろしくだよ。
[と、手を差し伸べる]
[が、外から聞こえる音色に耳を奪われたか、気もそぞろな様子だった]
あぁ、ハインリヒ=レーヴェさんですか。
よろしくお願いしますよ。 そう長い間でもありませんが、ここで御一緒するのですからそう警戒されなくとも。
とはいえ、余所者という以上の理由は分かりますので、今は仕方ないかもしれませんね。
ま、お手柔らかにお願いします。
エー……ヒ……?
エー、ヒュ。
[改めて名を聞いても正しくは紡げず。
結局は先と同じ音を紡いだ。
手を差し伸べられても視線はエーリッヒの少し左に向けられたまま、気付くことは無い]
[隣でクロエに言われようやくそれに気付き。
差し伸べられた手を握り返そうと、自分の手を宙に浮かせるも、エーリッヒの手にまでは届かない。
右手が宙を彷徨う]
あんたが悪いやつじゃないってのは、そこのゲルダを見てればわかるさ。
信用できるかどうかはこれから、だな。
こちらこそよろしく頼む。
[形式的なものだったけれど、それでも少しだけ警戒は解いた]
[カーラの手が彷徨っているのを見て、彼女のまなこを見つめる]
(光が薄い……、そうか……愛されし者だったのだな)
[彷徨うカーラの手を包み込むようにして言う]
わたしの事は呼びやすいように読んでもらって構わないよ。
名前は大事だけど、全てではない。 大切なのはそれに籠められた想いだからね。
あらためて、よろしく。 カーラさん。
[しばらく彷徨った手はエーリッヒの手に包まれ。
途方に暮れていた表情がようやく笑みに変わる]
うん、よろ、しく。
[瞳こそエーリッヒを捉えては居なかったけれど、微笑みはきちんとエーリッヒへと向けられて居た]
[それから顔を少しずらし]
ハーリ、あの、おと、だぁれ?
[ハインリヒの名を呼び、聞こえて来る音色について訊ねる。
彼に聞いたのは知っているような素振りに聞こえたから]
宣教師…。
[エーリッヒを見て眉を寄せた。
顔を背けていたが、カルメンが名乗るのに視線を戻す]
カル、エーリッヒさんは握手がしたいって。
そちらから触れてあげてください。
[後半はエーリッヒに向けて言い、ゆっくりと息を吸う]
あの音…?
[外から聞こえてくるそれについて問われたのだと気付き、カルメンに合わせるようにゆっくりと返す]
あぁ、あれはユリアンが吹いてる笛の音だ。
ユリアン、わかるよな?
僕は…クロエ、です。
[名だけを短く名乗り頭を下げる。
葦笛に気を取られてる様を装って、再び顔を逸らした]
へぇ。ユーリ、笛吹けたんだ。
クーリェ、ありが、と。
[握手の後、教えてくれたクロエに笑みながら礼を言う。
ハインリヒの返答には僅か驚くような表情を乗せ]
ユー、ラ?
うん、わかる。
ユーラ、も、ふえ、ふくんだ。
[ユリアンが笛の音を奏でているのを今まで聞いたことは無く。
驚きと共に一緒に奏でたいと言う想いが浮かぶ。
けれど邪魔してもいけないと言うのは理解しているため、今は胸元のオカリナに触れることは無かった]
君は……クロエ君と言うんだね。
よろしくお願いするよ。
[ハインリヒの言葉に]
先程の彼はユリアンさん、ですか。
情感あふれる音色ですね。
[眼を細め、耳を遠い音色に傾ける]
あんまり人前じゃ吹かないみたいだけどな。
[音色の主がユリアンであることへの驚きにはそう返す]
俺も聞くのは久しぶりだし。
そのあたりのことはあまり聞いてないから。
[笛を奏でることに理由はあるのだろうけれど、憶測ではなにも言えず。
それだけ言うとその笛の音を*静かに聴いている*]
そう、なんだ。
きれい、な、おと。
[頼まれれば披露するカルメンとは違い、ユリアンは人前では吹かないと聞いて少し残念そうに言う。
今聞けたのは運が良かったかな、と思いつつ音色に耳を傾けた]
[一音一音記憶するように、カルメンは音を*聴き続ける*]
よかったね。
[カルメンの礼には小さく口元を緩めて言う]
でも、教会の人は、僕には信じられない。
[言えばゲルダはまた怒っただろうか。
それでも顔を背けたまま]
どうしても、今は特に。
ごめんなさい。
―2Fの一室―
遅くなってごめんなさいです。
[ダーヴィッドに言って、冷たい水を張った桶と、タオルを元通りに枕元に置く。
ブリジットの涙の跡を見て、ロミルダは眉を下げた]
新しい人が来てたですよ。
教会の人で、エーリさんて言ってたです。
[などとダーヴィッドに話していると、外から笛の音。
ロミルダはぱたぱたと窓際に寄って、外を見る]
ユーリにぃ?
[眼下に佇む人影に、少し意外そうにまばたき。
こないだの反省があるから、身を乗り出したりはしないけれど。
その傍に浮かぶ蓮の蕾の白い色も見えた]
[クロエの言葉が耳に入り]
いや、気にする事はないさ。
ところで、部屋は空きのところを自由に使ってよかったんだったね。
誰か案内してもらえるかな?
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