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―厨房―
[立ち上る湯気は何か煙のような香りがした。珍しい香りだと思う。
やがて淹れ終え、トレーにカップを乗せて広間へと戻る]
―厨房→広間―
まあ、ホットミルクには嫌な思い出がありましてね。
ミルクティーやココアも受け付けないのですよ。
シチューは平気なのですが。
[特に気にした風もなく、ナサニエルに答えを返す。]
あ、どうも。
……ふー。やはりこの匂いは落ち着きますね。
[煙に似た匂いを吸い込み、ほうとため息。]
―広間―
そのうち、わかるのかしら?
[本当は、違うことはもうわかっているけれど。
それから続いた言葉に申し訳なくなる。でも、わたしがそれを今、口にすることは出来なくて。
たとえ周りが知っていたとしても]
ありがとう。本当に、嬉しいわ。
あなたは、優しいひとね。ナサニエルさん。
[安心させるように、笑ってみせよう。]
[ 静かに響く雨音を耳にしながら部屋を後にすれば、慣れない下駄で廊下を歩み階段を降りていく。一歩間違えれば盛大に転びそうな気がして、此れを履き熟す東洋人は偉大だ等と少し間の抜けた事を考えつつ広間へと向かえば、賑やかな声。]
……今晩和。
[ 逡巡の後に扉を開き、軽く会釈をする。]
今日も大勢の方がいらっしゃるようで。
[二日酔い、の言葉に無意識に眉をしかめる。]
おいしいものが食べれなくなるまで、飲まなきゃいいのに。
[いくらかきつい口調で言うと、すこしだけ表情をやわらげて、声をかけて来た牧師の方に首をめぐらせた。]
ウメボシ?とかナントカ茶は良くわからないけど、確かに、クリームよりもお茶の方が二日酔いにはいいと思うわよ。
[梅干しを入れた番茶、という言葉が丁度耳に入る。
ありましたっけ、と問おうと使用人の姿を探すと、既に厨房へと向かっているところであった]
…ま、自重しますよ…。
[多少反省しているのか小さくため息をつき、
からころと(多少ぎこちなく)鳴る下駄の音に目をやってクスリと微笑む。]
おや、これは風流な。
まあ、私には必要のない薬ですがね。
何せ私はうわばみですから。ふふふ。
[ヘンリエッタに笑いかけながら、ラプサンスーチョンを啜る。]
ヘンリエッタさん。
お酒の飲みすぎも良くないですが煙草も良くないのですよ。
味覚が鈍くなってしまいますからね。
おいしい食事をしたいなら、煙草は吸わない事をおすすめします。
[まあ、まだ煙草の吸えない年ですから関係ないでしょうが。と付け加え。]
[デザートの甘さにほんの少し、張り詰めていたものが緩むのを感じつつ。
聞きなれた声に振り返って]
…………。
[沈黙、数瞬]
……ハーヴェイ、どしたの、そのかっこ?
[何となく、想像はつくけれど。敢えて聞いてみた]
[ヘンリエッタがそう言ったのに呼応するように、使用人の少女が茶器を牧師の前において行く。
紅茶にしてはいささか特徴のある、薬じみた匂いが鼻を突いた。]
……へんな匂い。
[それを口にし、ため息を吐く牧師をもの珍しそうに見る。]
[ミルクティーもダメとの言葉に少し驚き]
…重症だな、それ。
[とぽつりと。
ミルクティーは美味しいのに、と付け足して。
優しい、とのローズの言葉には軽く首を振る]
俺は優しくはないよ?
……俺にも言えない事がある、だから訊かない。
君が笑ってくれるなら、いくらでも優しくなれると思うけどね。俺は。
[それは半分は社交辞令で半分は…だけどそれは胸の内に隠しておこう、と。
旅人に好かれても、寂しいだけだから]
[牧師の言葉に、ヘンリエッタはしかめ面でこくこくと頷く。]
お酒も煙草も嫌いよ。
このお菓子の方がずっとおいしいわ。
[さりげなく、2杯目のチョコームースをよそいはじめた。]
[ 元々目立つ事は得意では無い為に、皆の多様な反応と注目する様子に思わず其の場から逃出したくなったが危うく踏み留まる。いきなり逃走するのも奇妙極まり無いが、其の上こけようものならば恥に違いない。]
……どうも有難う御座います。貴女程ではないですが。
[ 普段通りの微笑を浮かべながらローズマリーの褒め言葉にはそう答えはするものの、数瞬の間沈黙したメイには半眼になり僅か顔を俯かせ額に右の人差指を当て、左手は右肘を支え腕を組む。]
如何したも、斯うしたも。
雨の所為で着替えが全滅したんだから仕方が無いだろう。
[ 好きで着ているんじゃないと云いたげに溜息を吐いた。]
優しいわ。
……ありがとう。
[社交辞令だとわかっていても、その言葉が嬉しくて。
わたしは、いつか、いつか。彼のかなしみも癒したいと思った。
それから、ハーヴェイの言葉を聞けば、首を横に振る。]
大変だったのね。でも、とても懐かしい気がする。
……本当、とてもよく似合っているわ。
[彼の母親を思い出す。]
…おや、着替えが。
[それは災難でしたね、とハーヴェイに声をかけ。]
サイズが合いそうなら、僕のを持ってこさせましょうか?
でもまぁ、その姿もお似合いですよ。
義兄の蔵書に翻訳モノの推理小説なんかもあったでしょ。
…それに出ていた挿絵の方に良く似ています。
[半ば予想通りの反応に、楽しげに笑いつつ]
ま、着る物ナシじゃ、困るもんね。
まさか、何にも着ないでいるわけにもいかないし。
[さらり、と返しつつ。ムースを一匙、口に運び]
でも、いいじゃない。似合ってるし。
[程なくして、使用人が銀髪の男性の前に番茶を運ぶ。
それを横目で見ながら、耳に入ったハーヴェイの「仕方ない」との言葉に]
…申し訳ございません。
替えのものをご用意させて頂きます。
[青年の横を擦り抜け、着替えを*探しに行く*]
[ハーヴェイの言葉には少し同情的な気持ちを浮かべ]
あの雨で、か?
災難だったな。
[旅をしていればそれは日常、しかし彼には厳しいだろうか、とふと思う。
そして礼の言葉を口にするローズには笑って]
礼を言われる事はしていない、けどな。
[優しいのではなく、自分が嫌われたくないのだ、とは言えずに]
[ ローズマリーの台詞を聞けば、苦い表情で首を傾けた。]
……明日も帰れそうにありませんね、此の様子だと。
[ 然し次いだ言葉に彼女から視線は逸らされ火の揺れる暖炉へと向けられる。其れは幾度か見せたぎこちなさと似たものだったが、一瞬の事で。]
そうですか。
[ 微笑と共に、そう、端的に。]
…あんな目?
[その言葉に気になりはしたが、あまり訊くのも悪いかと]
まぁ、いろいろあったんだろうな、そこまで重症なんじゃ…。
[と一人で呟く]
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