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もし、あなたが隠し通すというならそれでも構いませんけど。
[元より簡単にあかすとは思ってはいない]
50年前の事件でも、人狼のことを知りながらそれを隠した人物がいたと聞きます。
今のあなたのような。
……なぜですか?何のために人狼を……
[庇うのか、と言いかけて言葉を切る]
[彼のそれは、庇うのとも違う気がして]
[生きている人と]
[生きていない人]
[人と]
[人ならざるもの]
[真実は]
[真実って]
何、かしらね。
[ちぎれてしまった両腕を広げてくるくると回る]
[誰かの話し声が聞こえたような気がした]
[知っている。][もう知られてしまっている。]
[その事実が、少しずつ彼女を、彼を、蝕んだのか。]
[それとももう既に。][彼女が気づいた時点で破綻していたのか。]
[蒼い花の蜜の香り。][それはこの上なく甘美に思えて。]
[誘われるように、導かれるように。][狂わされるように。]
私の、真実?
それは本当の名前のことかな?
…でも、それはずっと昔に失われてしまった。
イレーネにも、兄さんがいたんデシたっけ。
私にも、兄さんがいてね。
でも死んだ。母さんを食い殺して。父に殺された。
それ自体は恨んでないけど、でも、とても、とても悲しくて…。
だから、私は、俺等は、我等は、
5つに分かれてしまって。
[声は低く高く。][混ざる。][抑揚だけが無くなってゆく。]
[どこか悲しげに。][どこか楽しげに。]
だから、いまの私の名前は。
俺がどこまで知っているかは、そうですねぇ
[シスターを見た目は、少し笑う]
たとえば満月の夜、一つの場に、ある人数の人と、ある人数の人狼と、ある人数のそれに対抗するものが居たら、どうなるかとか。
あとは血の定め、くらいですかねぇ。
[そして続いた言葉]
…そうですねぇ。何のためというと。
その研究により、再び地位を手にいれんがため、という理由だったでしょうか。もっとも俺は、生まれたときからその研究をすることを決められていたわけですけれど。
いやぁ、子供すら利用してのその外道な振る舞いにはどうも共感を覚えはしませんでしたけどね。
俺は、人ですよ。
ただちょっと、人狼の血を使われ、実験台になっていたくらいです。いかに人狼にならず、人として彼らを見抜けるかという実験台であり、完成体ってやつでしたね。楽して知ろうと思っていたようですから。
そしてブリジットは、まぁ…
わかるでしょう?
……お前には、一体。
何回そう言われてるんだろうな、俺。
[ため息混じりに呟いて。見つめる青を、蒼で見返す]
……そっか。
でも、正直言ってどこまでできるか、俺にもわからん。
そも、方法がわかってねーし。
失敗するかも知れんし。
[むしろ、その可能性のが高いけど、と。
苦笑が滲む]
……だから、さ。
離れとけってば。
[今は、血を求める衝動はないけれど。
いつ、それが蘇るかは、わからないと。
言葉には、しないけれど]
――――ドゥンケル。
[闇と、呟くと同時に。]
[その姿は銀色の狼へと変わってゆき。]
[イレーネににぃと、歪んだ笑みをうかべ飛び掛った。]
さあね。
数え切れないくらいじゃない。
[へなりと、場違いに暢気な笑みが浮かぶ。
けれど、それは、一瞬で、消して]
……ねえ、アーベル。
リューディアが、死んだよ。
[確かめるように、言葉を紡いだ]
50年前のがいったいどういう人だったのかは俺は知りませんよ。
俺とはまた違った方法で、わかっていて言わなかったんでしょうねぇ。
…さて、俺は人狼をどうしたいんでしょう?
[シスターの疑問に、付け入るようにわらった]
別にかばっているわけでも、ありませんよ。
俺は、人狼も、人間も、どうしたいとも思っていません。
ただね、組織の壊滅の時に、俺はまたもう一つ、自分の身で実験をしているんですよ。
それが、止めることを許してはくれませんでね。
それに俺も疑われていたんですよ?
たとえ満月の時はやめろといったとして、ギュンターさんや村の人たちが、やめたとお思いですか?
[木立の向こう、ようやく人影を見つけて、男はあがってきた息を整える]
…たく、年はとりたくねえぜ。
[ダガーを握りしめ、気配を殺してゆっくりと近付く。人狼に、それが通用するかどうかは知らないが]
[話を聞いていた。そうなのか。と
そして部屋の気配が変わると同時に、扉に手を掛け、あけると同時に剣をブリジット…いや、銀色の狼に投げつける]
[ヴァイオリンの弓だけを手に。
白いブラウスだけの姿で。朱花が透ける]
兄様は、姉様を食べたわ。
父様は、その前に殺されたわ。
似ているようで、少し違う。
――もしかしたら。
私もあなたのようになるところだったのかもしれないわ。
[じっと見つめる]
Dunkel…暗黒。
そう、それを選んでしまうの。
[クレメンスの言葉が、耳にではなく頭に直接響くような気がした]
[予想していたことと、そうではなかったこと]
…やはり、伝承の事はご存知だったのですね。
[彼が、知らない、といっていたのはやはり嘘で]
地位を手に入れるため…その為に、人を利用して…。
では、あなたには判るのですね?人狼が誰か。
最初から判っていたのですね?
……ブリジットが、そうであると。
……数えられてたら、こぇぇよ。
[はあ、とため息混じりに呟いて。
直後、何かを感じたように、視線が空へと向かう]
………………。
[紡がれるのは、声なきコエ。
蒼は微か、不安を宿すか]
……って……ああ。
知ってる。
[しばしの間を置き、ふるりと首を振り。
返したのは、短い言葉]
違う道を。
一緒に探して欲しかった。
[肩から全身へと駆け抜ける痛み。
それを堪えて見つめた背後]
けれど。
[ブリジットの背後で開かれた扉。
廊下の明かりが一気に差し込んでくる。
そして、強い銀の光が]
[もうひとつ、声。
それを求めて振り向くも、
潰れて硬く閉じ、未だ赤い涙を流す右目。
虚ろに見開かれたまま、光を映さぬ硝子玉のような左目。]
…見えない。
何も見えないんだ。
見つけなきゃいけないのに。
探さなきゃいけないのに。
いくら探しても、何も見えやしない。
[何かを探すように、赤い景色の中をまさぐる。]
気持ちいい・・・
[ひるがえるスカート]
[重力からの解放]
[交錯する運命]
[生ける者の宿命]
全て 埋めつくして・・・
[白い雪の中に拡がっていく 紅の世界]
[ふと もう一度聞きたくなる声]
[あれは 誰の声だったか 思い出せず]
ええ。
この村に辿り着いた時から、ここに人狼がいることはわかっていましたね。
血が騒ぎましたから
[シスターに笑いかけた]
ま、先人達が何を考えていたか、俺は「知っている」だけで、本当のところそうだったかは知りませんけどね。
地位なんてたいしたものじゃありませんからねぇ。
俺の場合は、研究に携わっていたのは、そうですねぇ…家族だからでしょうね。
それに俺自身、戻れないところにいましたし。
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