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[床に散らばった綿毛を取り、布に居れ。
そうっと絵筆を2本、揃えて。]
これで、さみしくないわ?
つがいだもの、ね。
[笑いながら話しかけていたが、はたと思い出し、
鞄からエーリッヒから借りたままのハンカチを取り出して包む。]
これでもっと、寂しくないわ?
[嬉しそうに言うと、鞄へとそっと閉まった。
それから、描き終えた(といっても大した出来では無いのだけれど)絵を見て、首を傾げる。]
これで、良いのかしら?
そっか。…………ありがとな。
[ポツリと呟き]
ん。そだな、行動しねぇとわかるもんもわかんなくなっちまうしな。
[そう言って、アーベルとともにアトリエへ。]
[書庫から出て、館内にいた男性に倒れた司書を頼み。
誰かが彼と接触していなかったか、1人1人に尋ねる。
そうして得たのは]
…エルザ、さんが?
[1人の少女の名前]
まぁな。行動してわかるんなら俺としてはありがてぇ
[そしてブリジットに告げてから診療所を出てユリアンとともに真っ直ぐアトリエまで向かって]
―アトリエ―
[アトリエには見張りなのかなんなのか。そのものに止められ]
ミハエルに会いてえんだけど…あ?オトフリート先生が尋ねてきてその後しばらくしてから出た?どこに向かった?
…なんか変な様子だったって…
[そんなので黙って見送ったのかとばかりに睨みつけるが、そういってもはじまらないと、いった道を聞いて]
図書館…かね。やっぱ
[と言うかそれ以外該当するのが浮かばないが確認するようにいって同意が帰れば今度は図書館へと]
―自宅前―
[自宅の中、奥の扉を開き。
桃色の花の上にそっと、絵を置いた。
小脇に抱えられる程のサイズのキャンパスだが、
何処かに誰にも見られずに運ぶ自身が無かったから。
そうして、鞄に大事に絵筆を入れたまま、家を出る。
鍵もかけずに出るのは何時もの習慣。
誰かが家に入れば、綿毛を敷き詰められた床の向こう、
中庭へと通じる扉を開けば、
くらりとする程の良いとはあまり言えない芳香を放つ桃色の花の中、
まだ染料の乾かないキャンパスが見付かるだろう。
少女は、ゆっくりと自宅を離れて歩く。]
[図書館の前で楽しげに歌う彼女を、何人もが覚えていて。
何かを手渡していたようだ、という者もいて。
疑念は確信に変わる。
少女の自宅の場所を聞き出すと、即座に駆け出した]
[アーベルと連れ立ってアトリエにやってきたわけだが、]
んだよ使えねーな。
[アーベルが目で訴えてることをこっちは口に出して言ってみる。
行った道とアーベルの言葉には]
だな。…………つーことはまさか。
……とりあえず俺らも行くか。
[そう言って、図書館へと歩き出す。]
─図書館前─
[思索を打ち破ったのは、微かな震え。
それは、『絵筆』が使われる時の、特有の震えで]
……俺、どんだけ寿命削られるんだろうか……。
[思わずこんな呟きをもらす]
……じゃなくて。
今度は、誰……が?
[絵筆を持って行った少女。
彼女が誰を描いたのかと。
そう、考えた所に駆けてくる弟。
図書館の中から聞こえる声を聞けば、おおよその状況は掴めて]
……ほんと、何考えてんだ……。
[口をついたのは、呆れたような呟き]
ああ、こんなときだから…なんもなかった。なんてことは多分ねーだろうしな
[もう結果的に見ながらも立ってただけの人は無視して図書館のほうへ向かった。
現在図書館から出て行こうとしているなんて知らない]
[2人が図書館に向かう道を、司書を診療所に運ぶ一団が通り過ぎるかも知れない。
探されているとは知らず、聞いた方向へひた走る]
…く、
[時折つまづいたりしながら、歯を食いしばる。
己の体力のなさを呪いながら、それでも止まろうとはしなかった]
[図書館を飛び出し、駆け出して行く弟の姿。
逡巡している暇は、なかった。
今は、なんら干渉はできない身ではあるけれど、しかし、追わずにはいられずに]
……まったく、だから少しは身体を動かせって……!
[辛そうに走る様子に、思わずこんな言葉が口をつく。
緑の瞳に浮かぶのは、弟を案ずる光のみ**]
[図書館へ向かったところで、誰かを運んでいるのが見えて]
ん?今度は何…ってっ。オトフリート先生?
[運ぶ一団を押しのけて近くで見れば間違いなく。更にそれは最近よくみた症状であって]
まじかよ……ちっ!…でこれどこで?…図書館でミハエルが…か。
そんでミハエルは!?
[一団の一人に詰め寄って聞けば]
エルザ…?おいっ!?エルザがなんなんだよ!言え
[胸倉を掴んで揺すれば、歌っていた。とか。オトフリートと喋っていた。ミハエルが家の場所を聞いて向かった。と言われそれ以上は知らないらしく。一団の他のものに止められる。]
………いくぞ。ユリアン
[一団を見送る暇もなく低く呟く。
何があったかまでは詳しくは知らない…内心どこかで、知りたくないということなのかもしれないが]
エルザの家は知ってる。
[ついて来いというように*駆け出した*]
―綿毛畑―
[立ち入り禁止の紐を跨いで入り、ぺたり座り込んで鞄を開ける。
座り込めば、荒らされたとは言え、まだ大分綿毛の残る畑にに
頭のてっぺんまで、隠れてしまう。
中にモノが入っているのを見て安心すると、ふと、鞄の底に黒い石が連ねられたペンダントを見つける。]
……――
[無言で引き摺りだして、首にかけようとするが
やはり、首の後ろで留め具を着ける事が出来ず、
結局手の中に握りこんだ。]
…何時かしら。いつかしら。
ふふふ、ねぇ…――?
[きゅ、と握った手を鞄の上に置き
綿毛畑の中、小さく歌声が、響いた**]
[そうして図書館へと向かっていた途上。
こちらへと走ってくる一団に足を止める。
だがその一団に運ばれていたのは、探し人の片割れ。]
な!? ……どういうこと、だよ。
[理解が追いつかない。
オトフリートが犯人で、それをミハエルが? いや、ならここにミハエルがいない理由が。
いやむしろ前提が違う? オトフリートは犯人じゃない?
思考は混乱し、]
…………え? エル、ザ……が??
[だからこそ次の言葉でそれが完全にフリーズした。]
[ただただ、出てきた名に呆けていたが、アーベルから掛けられた言葉にハッと我に返り、]
あ、ああ。わかった。
[そう言ってアーベルに続いて駆け出す。
内心は、その結論が間違っていて欲しいと言う願望。
しかし、彼の中の理論の部分はその結論を肯定し、そして残酷にもそれこそが*真実なのであった*。]
[目的の家の前。
よろめき、扉にぶつかるようにして止まった]
…ッは、
[肩で息をしながら、強く扉を叩けど返事はない。
ここにはいないのか、そう思いながら手を掛けて]
開いて、る?
[すんなりと扉は開いた]
…え、と。
[踏み込むのを少し躊躇ってしまうのは、他人の家だから仕方のないこと。
けれど今はそう言っている場合でもなく。
首を振り]
エルザさん?
[呼び掛けながら、中へ踏み入った]
[やがて一通り見回った後で、中庭に通じる扉を見つけ]
…っ
これ、は。
[そこにあったのは、咲き乱れる桃色の花と。
己にとっては異質な存在の『絵』]
[どうして封じられたオトフリートが、彼女に絵筆を渡したのか。
そんな疑問はあったけれど。
同時に浮かぶのは、古くからの伝承]
「心の力を集めれば、空へ」…
[低く呟いて。
く、と下唇を噛み、踵を返す。
中庭の扉も玄関も開け放したまま、外へ走る。
思い当たる場所など、もう一つしかなかった**]
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