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─宿屋・食堂─
[向けられた表情。
しかし、引きつりに関しては、こちらも変わらない]
だーれが、諸悪の根源だよ。
『あの件』に関しては、むしろ俺、被害者なんですよ?
[口調は冗談めかしたものを維持しているが、目つきはちょっとじとん、としていた。
理由の大半は、呼ばれ方のためなのだが]
……っつーか、ここではその呼び方すんな。
ン…毎度ありだよ
有意義な時間を有難う、またどうぞ…ライヒ君
[ひらりと手を振ってライヒアルトを見送り。娘は去り際の青年の背に言の葉を掛けて。]
―――ううん
結局、僕は――御墓の事、なにも出来てないから
君たちに取って当たり前の事でも、僕にとっては違うんだよ
たとえ、為す側に何の感慨も無くたって…ね
[其れだけを伝え終わるころには雑貨屋のベルは来訪者を見送る音を鳴らし開け放たれた扉は静かに閉められて行く。]
[パタン]
[淡く笑みを湛えたまま背凭れに身を預け直し、
汗をかいた空のカップを見つめ午後のひと時を物思う]
[其れからの昼下がり人は疎ら。買い物客や買い付け商人と少々慌ただしい時が過ぎていく。特に生活必需品にもなる物は多くに補充しておかなくてはならず、遂には手狭な店内に収まりきらない量になった。]
――ンン、やっぱりこの時期は…骨が折れるかな
調味料に洗剤、保存が効く食べ物は優先しないと
[裏方がごちゃりとしているのを悟られぬように並べ方を工夫して。一通り終わると、娘は疲れたとばかり大きなため息をついた。大荷物にもなると手のあちこちが痛み、小さな引っかき傷も幾つか出来てしまう。]
は、ぁ…
今日の分は…是で終いに…っ
[最後の荷を運び終えると娘はその場に蹲り息を整えている。]
―宿屋食堂―
被害者にゃ被害者だが尻尾踏んだのはアーベルだろ。
あいつらヤバイって噂になり始まってたんだぞ。
巻き込まれた親父は怪我すんし、仕入れは邪魔されるし。
言いたくもなるっての。
[じと目を返され、溜息混じりに肩を竦める。
わざと呼んだわけじゃないから呼び名はすぐに変えておいた]
ま、いいや。今はナーセル労うのが先。
水と飼葉も欲しいんだけど。
[扉の閉じる音がして背を向けたまま一度目を伏せる。
背に投げられたゲルダの言葉は青年の耳朶に届いていた]
何も出来てないと思うなら……
と、これは彼女自身の問題か。
私が口を出す事ではない、けれど。
[青年の顔には微かに浮かぶ苦い笑み。
墓の主全てに同じ感情を向けるわけでも
何の感慨がないわけでもない。
ふ、と息を吐き感傷的な気分を振り払う]
さて、帰るかね。
[飄々とした空気を纏い直し青年は常のペースで歩み出す]
[青年は修道院に戻ると買ってきたばかりの紅茶を
袋から取り出し厨房の戸棚へと並べる。
荷を置いて中庭の花を摘み修道院を出た。
隣接する教会、その裏手にある墓地に行き
ゲルダの弟が眠る墓に花を一輪添える。
胸の前で十字を切り祈る仕草をして]
――……、…………。
[微かに紡がれた言葉は風に攫われ音をなさず。
目に掛かる黒髪を軽くかきあげて
青年は一つ一つに花を捧げ祈りを捧げてゆく]
─宿屋・食堂─
そこはそれ、俺の主義上の問題だから。
[相手の意図──自分たちの名を上げるために、こちらを嵌めようとしていた事──には、気づいていたけれど。
『勝負』に誘われて受けないのは、主義に反する所だった]
……まあ、巻き込んだのは、悪かったと思ってるけどさ。
[一応、そこは気にしていたから、肩を竦められると、ぼそり、とこう呟いた]
ん、ああ。
……はいはい、お泊りのお客様には変わりないもんな。
んじゃ、用意してくるわ。
[飛び出す前は、主にそちらの仕事を手伝っていたから勝手はわかっている。
もっとも、帰ってくるなりやる事になるとは思ってなかったが]
─村の通り─
あぁもう、しまったなぁ…
石鹸は切らさないように気をつけてたのに。
おじいちゃんに見られてたら絶対怒られてる…
[仕事を中断している為慌てた足取りでせかせかと目的の店へと向かうものの、湖からだとさすがに距離があり。
はぁ、と息を切らしながら幼馴染が店番をしているはずの雑貨屋へと向かう。
途中誰かに会えば挨拶くらいはするが、気が急いているために見るからに落ち着きがないのがわかるだろう。]
―村の通り―
[振り返ってももう自宅は見えない位置。
団員は追いかけては来なかったようで、視線をバスケットに落とした。
蓋を少しだけ開け、中身を確認し]
そうね、お届けを先にしようかしら。
となると……
[元通り蓋をして呟き、辺りを見渡す。
少しの思案の後、雑貨屋に行くのに一番近い道に足を向けた]
─雑貨屋─
[残した仕事が気がかりで、足取りは段々足早にというよりもほとんど駆け足に近くなり。
雑貨屋に着いた時には呼吸がし辛い程息切れしながら店の扉を開けた。]
は、ぁ…はぁ…っ、げるだ、居る?
悪い、んだ、けど…っ急、ぎで。
欲しいのが、あるん、だ、けど。
…ゲルダ?
[ようやく息が整うと、店の中にいるはずの彼女の姿を探し。]
―宿屋食堂―
……しゃーねーな。
ま、俺はこうやってちゃんと来れたし。
そっちもいい里帰りの機会になったんなら良しとしとくか。
[そうした矜持を持つ人間は嫌いでないから。
ぼそりと呟かれれば苦笑して水に流しておくことにした]
そーそ。今は俺がお客さん。
あ、世話は自分でやっからさ。
[それこそ主義の問題。旅の友は自分の手で寛がせてあげたいのだ。部屋に荷物をおけば早々に厩舎へと回るつもり]
─宿屋・食堂→厩舎─
ま、そろそろ親父とお袋のとこに顔出すつもりでもあったんだけどな。
[里帰りの機会、との言葉に浮かべるのは苦笑]
んじゃ、部屋の方は、ベッティに聞いてくれ。
世話まで手出しはしねーよ、人の手に任すとは思ってねぇし。
[行商人の親子の旅の道連れへの態度は、外でも見知っているからこう言って。
厩舎に向かい、水と飼葉の準備にかかる]
……っつーか。
この空間も、ほんとに変わってねぇなぁ……。
[久しぶりに入ったその場所で、浮かべるのは、苦笑]
細工師 ゼルギウスが村を出て行きました。
―――ハ、ァ…
[一息付きながら痺れる腕を軽く揉み、呻く様な音が喉から漏れて。この華奢な細い腕で無く、逞しい腕の男であればとさえ娘は思う。ジンとした感覚が明日に響かなければ好いと願うのみ。疲れ果てこのまま蹲って仕舞おうかと思考が過るが呼ぶ声に裏方から名を呼ぶ声に娘は返す声を上げる。]
ン、 … …
クロエの声かな
[幼馴染の声の元へ姿を現し、
石鹸を買いに来たと思しき彼女の元に姿を現した。]
やあやあ…
そんなに息を切らして如何したんだい?
僕の雑貨屋は逃げないよ?
[淡く笑んで首を傾ぐ、その物いいは少年のようで。
彼女が落ち着くのを待とうと、背をそっと撫ぜて要件を聞く。]
11人目、細工師 ゼルギウス がやってきました。
―村の通り―
[ミハエルの姿に気がついたのは、
色眼鏡をつけ強い光の下では視力が悪い男よりも
妻の方が早かったかもしれない。]
御機嫌よう、ミハエル君。
私たちは、見ての通りだよ。
[社交用の相手とは違う、自然な笑みで返事を。
日光を遮る為の装備に対して、笑われることは慣れているし
彼の年頃ならそうして当然であるが、押し込めた相手の裡は知らぬまま。]
君は相変わらずだね……―――
[子供らしくない口調と気遣いに、
色眼鏡の濃い茶のガラス越しに紅を細めた。]
嗚呼、うん、また後で。
[ひらひらっと、ともすれば男の方が子供っぽい仕草
片手を振ってその背を送ろうとすれば、ユリアンの声が聴こえた。]
あれ?ユリアン君は今年は1人なのかい。
一人前になったってことかなぁ。
うん、また今年もよろしくね。
[その姿にクテリと首を傾げて、
ミハエルとまとめてになったか
別方向――宿屋へと向かう背を見送った。]
やっぱりこの時期は、村にも活気がでるね。
[そして、また歩きだせば
なんだかものすごく急いでる風なクロエに追い越された。
その背に、微笑ましげな感想を向けつつ、
歩く速度は身重の妻に合わせて急くことはない。]
あ…ゲルダ!こんにちは、あのね…って、ぁ…。
もしかして、在庫整理かなにかしてた?
ごめんね、邪魔しちゃった。
[幼馴染の顔を見るとぱっと明るく微笑むが、彼女が出てきた方を見るとその表情がしまった、というようなものに変わり。
自分の背をなでてくれる彼女を見て申し訳なさそうに眉を下げた。
彼女から用件を聞かれると、うん、と頷いて。]
あのね、いつもの石鹸あるだけ欲しいんだ。
買い置きまで切らしちゃってたの忘れてて…
あ、あと灰色と黒色の糸も2束づつ欲しいな。
[作業着の繕い用の糸も切れかかっていた事を思い出して、他には無かったかなと思案しながら。]
[作業自体は、外で世話になっている安宿でもたまに手伝っている事。
故に、手順は身に着いている。
最初はかなり、驚かれたものだが]
……よしっと、こんなもん、かな。
[一通り、準備が整ったなら、手についた藁くずやら何やらをぱたぱたと叩き落としつつ、言って。
外に出ると、ん、と言いつつ身体を伸ばした]
─雑貨屋に着くちょっと前─
あぁもう、遠いなぁ…!!!
[自分のせいで急ぐ羽目になったのに八つ当たりチックな愚痴を零しながらほとんど駆け足で雑貨屋に向かう途中、店でよく顔を合わせるおしどり夫婦の背を見つけて。]
ゼル兄イレ姉こんにちは!
ごめんね、ちょっと横を失礼!
[口早に挨拶だけしてイレーネ達が危なくないよう気をつけて横を駆けて、ちょっと振り向き]
イレ姉もゼル兄もいつも仲良しだね!
暑いから、二人とも身体気をつけてねー!
[そう大きな声で手を振ると、改めて踵を返して走っていった。]
─細工師の工房─
出来次第届けて貰えるとありがたい。
報酬は、これで。
[細工師と相対しながら、お金の入った小袋をテーブルへと置く。
先払いは信頼の証明を兼ねたもの。
依頼の完遂を約束させる意味もあったりもするが]
では、完成を楽しみにしているよ。
[話が終わると席を立ち。
依頼をした細工師の工房から立ち去った]
─村の通り─
ふぅ……残りはゼルギウスへの依頼だけだね。
[一人になると多少口調は砕けて。
張り詰めたままだった気を少し緩めて小さく息を吐いた]
んー……少し休憩してから行こうかな。
[堅苦しい貴族の服、堅苦しい口調。
嫌だと思うことは無いが、息苦しさは多少あって。
一人の時はつい口調も崩れる。
日差しを避けるように路端の樹の下に入ると、傍らに転がる大きめの岩にハンカチを敷いて腰掛けた]
……そーいや。
[さて戻ろうか、と。
思った所でふと、ある事を思い出す]
どたばたしてたから、煙草切らしてんな。
後で、買いに行くかあ……。
[ないといられない、というほどではないけれど。
ないと思うと寂しいものだから。
後で雑貨屋に行こう、と思いながら、再び、宿の中へと戻っていく]
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