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[コーネリアスの悲しげな表情を見、困ったように一度目を伏せて、まっすぐにその紫紺の目を見た]
でも、助ける為と…
あれは、嘘だったの?
そのままの……ね。
つまりは、君もここの関係者である、と。
[左右対称の不自然な笑みに、低く、呟く]
この状況で大人しくできるようなら……俺はとっくに、彼岸の住人になってるぜ?
[冗談めかして言いつつ、タイミングを計る。
長々と相手をしてはいられない。
なら、どうするか。
肩から提げた鞄の紐を握る手に、力がこもる]
いいえ、嘘ではありませんよ、レベッカさん。
私は、貴女達を助けて差し上げるために来たのですから。
この退屈な、現実から。
…エッタちゃん?
[浮かび上がるように現れた赤の少女の姿に、青を僅かに見開いた。
──ふわりと、少女の近くへと]
大丈夫?…まだ、平気?
[魂の力を失えば失うほど、あの氷柱に引き寄せられやすい。
幼い子なら、尚更。
彼女が此方へ来ることを、自分は止められはしなかったけれど、
せめて吸い寄せられないように。小さな掌を握ろうと]
[尻餅をついたレベッカの様子に、黒猫は案ずるような声を上げる。
それから、魔術師の手が少年に伸ばされる様子にせめてもの抵抗といわんばかりに、爪を立てようと試みて]
ええ。
ワタシは主に造られしモノ、人形《DOLL》ですから――
[偽りの笑みを浮かべたまま、じりじりと近くへ。]
――それは困りましたね。
あまり、手荒な真似は好みでは無いのですが。
人形……作り物、って事かよ……!
道理で、普通の動物にゃ避けられる訳だ。
[近づかれるだけ、後ろに下がる。その内、背後は怪しくなるだろうか。
その時どうするか……と思った時、ふと、鞄の奥のものを思い出して]
俺だって、荒事は好きじゃないんですけどねえ……。
しかし。
その主さんは、なんだってこんな厄介な事をしてくださる訳かな?
[黒猫の爪と、レベッカの体当たりを避けて、ぐるりと身体を反転させる、リックの頸に伸ばした手は離れたが、その腕は掴んだままで、ため息を一つ]
まったく、どうしてそんなに逆らうのか。
永遠の安寧、永遠の美……過去の哀しみ、過ちからの解放。
全てはお前達の望んだものだろう?
[少年の問いに、少しだけ。言葉を詰まらせる。
自分は、明確な答えを知らない。──けれど]
《DOLL》は長い間ずっと、ラッセル君の身体を乗っ取ろうとしてた。
でも、簡単に行かなかったのは──多分。
身体と魂は、強い力で結ばれているんじゃ、ないかな。
だから、私も「戻った」時に、ちゃんと戻って来れたんだろうし。
[あくまで、予想だけどね。
苦笑交じりに、ふわりと笑みがこぼれる。少女の姿が揺れた。]
元は、ラッセル君の身体だもん。
ラッセル君が戻ろうと思えば、きっと──戻れる。
だから。
[願って。君が想うとおりに。
赤の少女の手を取ったまま、囁くように。]
誰がそんなものを望んでるって?
そんなの望んでるのは、あなたじゃないの。
おれは、大人になりたい。
永遠なんて望んでない……!
ただ、一緒に、ヘンリエッタと、いられて、大きくなれたらいいんだ。
余計なことするな!
大人にか、それがお前の望みなら、叶えてやる事も出来るぞ。
ヘンリエッタと共に大人になり、永遠に共にいる事も出来る。
そう、魂はそのままで構わない。
ヴィンセントのように、我と共に在る事を望むなら。
[少年の髪を白い指が掬い取り、囁く]
…私は、ニーナ。
ニーナ=ベルティって、言うの。
[あの時は自己紹介、してなかったね。
瞬く薄紅に、小さく笑みが映る。遠い光に、僅かに目を細めて。]
掌はもう、平気?
[些細な問いを投げながら、僅かに、小さな掌を強く握る。
何処かへ行ってしまわないようにと]
[避けられてべたり、と床に手をつく。
そのままくるりとコーネリアスに向き、再びその腕にかじりつこうと飛びかかる]
過去の悲しみ、過ち。
それを消してどうするの…
そこから、学んで消さずに、何のための生だというの…!
そんなものいらないよ。
与えられるばかりが子供だと思ってない?
おれは、自分で考えて、自分で生きていたいんだよ。
誰かにそうやれって強制されるのなんて御免だね。
ええ。
あの黒猫だけが寄って来てくれるのが、嬉しかったようですよ。
“ラッセル”は。
[まるで他人事のように、人形は笑う。]
――御知りになりたいですか?
今暫く静かにして頂ければ、分かると思うのですが。
ニーナさん。
もしかして貴方が昔見たサーカスというのも、
「これ」なのかしら…。
[ふ、と手のひらを握り締める彼女と少女にほほ笑みながら]
……ニーナ。
[名前を繰り返して緩く首を傾け、]
ての、ひら?
[覚えがないというように、
周りの存在にも、
不思議そうなかおをして。]
ウィッシュは、な。
俺と一緒にいたせいか、特殊な色々に慣れちまってたからねぇ……。
ま、それで喜んでいただけたなら、何より。
[口調だけは冗談めかして言いつつ、鞄を肩からずらして中の紅い天鵞絨包みを握り締め]
生憎、それじゃ、遅い気がするんでね。
……やっぱり、自分で確かめさせてもらうよっ!
[言葉と共に包みをつかみ出し、同時に鞄を投げつけ、走り出す。
短剣の他に入っているのは、手帳やら飴玉やら。
それ自体の衝撃よりも、一瞬の目くらましになればと、そう、思って]
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