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やれやれ…
[絵師兄弟の会話を、やはり呆れた様子で耳にしながら、自室へと引き上げる。キノコ茶でも入れてやるかと考えたのは、単に気まぐれからか]
…相手に怪我がないなら、まあ良かったけど。
その子も心配したんじゃないの?
[相手のことを聞いて、やや表情は和らいだが]
『絵師』が心配掛けてどうするの。
[その役目が年の離れた兄に引き継がれた時、己はまだ3歳。
故に先代のことは知らないが、流石に緩過ぎるようには見えた]
ああ。大丈夫なときになったらユリアンが報せてくれるだろうし。そういうことだから仕方ねーんだよ。
[なんとも自然な口調でユリアンに飛び火を与えつつ
無邪気な様子のエルザを見て今更になって罪悪感が少しだけ出てきて、今度はすまい。と。過去に何度も何度も思ったことを今日ももう一度思った。多分また次も思うことだろうけど]
[アーベルのフォローに感謝……しかけたが、そもの原因もアーベルだったことに思い至り、てめぇあとで覚えていろよと内心ぐつぐつにゃーにゃー。
エルザの無邪気な言葉にはぎこちない笑みを浮かべつつ]
エエ、考エテオキマスデス。
まあ、ちょっとは驚かれたけどなぁ。
[心配、という言葉に掠めたのは苦笑]
まあ、そうなんだが。
……まだ、次の『月』は出てないし、気をつけてるから、大丈夫だって。
[続いた言葉は、僅かに真面目なものとなる。
『月』──『絵師』の素質を示す、蒼い三日月の痣。
それを持つ者は、今の所は見いだされてはいない。
故に、それなりの自重は、という自覚はあるらしい……一応]
[乾燥したキノコをポットに入れて、お湯をそそぐ、香り付けに少しだけ蜂蜜を入れるのは、母のやり方を忠実に守った入れ方だ。カップを二つ直に手に持って読書室へと戻る]
帰る前に一服していけ。
[口調は相変わらず]
と、おんや。
[カップを持って戻ってきたオトフリートの姿に、緑を一つ、瞬かせ]
別に、気ぃ使わんでもいいのになぁ。
村の設定が変更されました。
けなげな弟への労いだ。
どうせ兄弟してろくに食ってないんだろう?茶くらい飲んでおけ。
[言いたい放題だが、食事まで提供する気はないらしい]
…。
信用していいのか、いまいち迷うな。
[『月』。
その意味するところを理解すればこそ、返答に少し間が空いた。
再び口を開いた時には、やはり先の表情だったが]
本当、気をつけてよ。
[取り敢えずはそう締めたところで]
あ、…済みません。
[出されたお茶に、戻って来た人を見上げて礼を言った]
……俺は、ちゃんと食べたぞ。
[それも結局は、弟の差し入れがあったからだが。
あの場で差し入れがなかったら、林檎と飴玉だけで済ませていた可能性は否めない]
……とはいえ、せっかく淹れてもらったんだし。
いただいてくよ。
それではブリジット、留守の間は頼む。
[助手たる少女に言いやり、本を携えて診療所を出る。
手早く用事を済ませようと図書館に向かう途中、広場に集う面々の中にある顔を見つけて、急いていた足をぴたりと止めた]
ユリアン=エルデミッテ。
お前はまた、何をやらかしたのかな?
親父さんが怒っていたぞ。
[ぶしつけに名を呼び、きっかり90度方向転換してそちらに向かった。]
……お前な。
俺を、なんだと……。
[迷う、という物言いに、ぼそり、と呟くように。
それでも、まとめの言葉にはああ、と頷いて、自分もカップに口をつけ]
ところで、何か用事があるわけではないのかしら?
お荷物があったら持つわ?
綿が要るなら取ってくるわ?
[にこにこと笑ったまま
ふたりを交互に、見た。
言いながら口の中で小さく歌を紡ぎ出す。]
[と、突然ぴたりと、歌はとまる。
現れた薬師の姿に、肩をすくめると
ふたりの後ろにさっと隠れた。]
どこも、悪くないわ?
[薬師の、僅かに纏う香りに僅かだけ眉をひそめながら
笑顔をぴくりとすこし、ひきつらせた。]
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