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ああ、
まったく、なんだと言うんだ――
これでは、まるで。
[医師は覚めない眠りの中。
夢へと誘ったのは、獣の仕業。
*誰かが、御伽噺のようだと、囁いた*]
魂が抜ける?
あれはそんなものじゃなかったはずだが。
[振り返ってヒルダの手を見る]
まあ、じいさまなら作ってないとも限らないな。
体のほうに飲ませればいいんじゃないか。
……問題は、今の私にはどうしようもないってことだな。
…私です。
先生を呼びに来たら、もう……。
中には、入っていません。
見つけた後に来たのもマルガレーテさんだけで、中には入れていませんから…。
ヒルダさんは、そうさせて頂きますね。
お手数おかけします。
……ホラントさん、も?
[呟いたヨハンの言葉に視線を向ける。
言いようのない不安が胸に去来した]
…とにかく、ヒルダさんを村長のお宅へ。
[言ってヨハンを促し、村長の*家へ*]
ううん。ヒルダは半分じゃない。
青いの零れて、気付け飲んで、そしたらぐるぐるした。
[振り返られて少し躊躇ったけど、額に向けて*指を弾く*]
このまま死んだら、怨んでやるっ。
…けど、せんせの方が痛そうだから、これだけにしとく。
うお……っと。
[反射で額を押さえるが*痛みはなかった*]
……気付けはよくなかったか。
それは悪いことをした。
だが怨むのはじいさまにしておいてくれ。
私が作ったんじゃないからな。
アナはねアナはね識っているの
『御伽噺』は御伽噺でしかない…………なんてことはないの
誰も知らない昔、ここではない何処かであった悲しいこと
それを忘れないように語り継ぐのが『御伽噺』だって
そう、おばあちゃんが言ってたの
でもね、おばあちゃんはこうも言っていたの
語られることが真実とは限らない
時に、人の悪意によって御伽噺も歪められるって
英雄も殺人狂へ、善意も偽善に、美談も醜聞へ
斯くも人は愚かしい生き物だって
だから、アナは自分で見た物を信じることにしているの
[弾いたかどうか、感触の曖昧な指。
言葉を濁すヴェルナーの上を、ぽんと宙返りした。]
ヒルダは行くよ。
身体どうなるか気になるし。
じゃーね、せんせ。
元気で…っていうのもおかしいけど。
……ホラントのランタンとか、服の切れ端っぽいのとか、森ん中に落ちてて。
んでも、あいつ、いなくて……。
[神父の声にぽつり、と呟いて]
ん、そーっすね。
いつまでも、俺が抱えてるのもなんだし。
…ランタンと……服の切れ端、ですか…。
[眉根が寄る。
尤もそれも表面上だけなのだけれど]
お邪魔します、ドロテアさん。
申し訳ないのですが──。
[村長宅へとつくと、対応に出て来たドロテアに説明し。
承諾を得ると中へと通してもらう]
客間を貸して下さるそうです。
そこまでお願いしますね。
……わりぃっすね、ドロテアさん。
[ぺこり、と頭を下げてから客間へと]
よっ、と……。
あーあ、っとに。
こんなに静かになっちまいやがって。
調子、狂うっつの……。
…結局、ヒルダさんがどうしてこうなったのかが分かりませんね。
調べられそうな先生も……。
[通された客間で呟き、言葉が途切れる]
……そうっすねぇ……。
ちょっと前まで、あんなに元気よかったのに、なんでいきなり、こんな事になっちまったんだか……。
先生がいてくれれば、なんとかなったかもしんない、けど……。
……はぁ……これから、どーなっちまうんだか。
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