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―診療所―
つっかれた…
[ミハエルにまた後で。といって別れ。そして手伝いを終えて、今やっと椅子に座った。
材料を取りにいったりや、力仕事が主であったが、やはり緊張するものがあったりして余計な疲労感があった。…なんか治療以外の雑用もさせられた気がかなりあったりしたが
その途中ユリアンがつれてかれたときには驚いたが、絵によるものでもなく。ただの疲労らしきものであったのでほっとしたが]
絵筆…まだ戻ってなかったんか
[そういえば、リディのこと。ミハエルが封じたということ。町ではどのように噂が伝わってるのだろうか。]
ま、暗くなってても、仕方ない、か。
どっちにしろ、ここに漂ってる分には考えるだけ、無駄だし。
[ため息を一つついて、思考を無理やり切り替える]
しかし、未だに絵筆は戻ってない、か……。
早めに何とかしないと、色々とまずいとは思うんだが……。
手の出しようがないからな、こちらからは。
[一応、ただふらついていたのではなく、あちら側に干渉できぬものかと思いつく限りの手段を講じては見たものの、成果はなく。
氷面鏡の間に行ってはみたが、やはり、変化らしきものは見えなかった]
……向こうにいる連中に、なんとかしてもらうしかないんだろうけれど……。
……あぁ。
全く、もう。
[親指の爪を噛む。
その癖は変わらず、感触はいつもと同じで、
ぼやけた世界との相違に奇妙な心持ちになった]
言っても仕方ないとはわかっちゃいるが……。
[じっとしていられないのが、己の性格。
疑問を解消するために、手っ取り早く、
オトフリートの元へ行く事を望んだ。
“心”に従い、彼女の姿は消え――
そして、書庫で会話を交えれる二人の姿を、見た]
[オトフリートの言葉には、また驚いて。
一度ふる、と頭を横にふる。
きゅ、と鞄を手で握るように抑えた時
頭の中、昨日まで聞こえていた声が届いた気が、した。]
あたしだけでも、…――って。
あたしは、やっぱり…戻りたい。
…――そらに。
[言葉を紡ぐ表情は
ほんの僅かに眉を下げてから、笑みを戻す。]
[ことり。
絵筆を置く]
…ん。
[描き上がったのは、頼まれたもの。
赤い髪の薬師の絵。
昨日激情に任せて描いたものとは違って、なるべく丁寧に描いたつもりだったけれど]
[望まぬなら、やめろ、と、言いかけた言葉は、少女の笑みに押しとどめられた]
そうか、わかった。
では、エルザ。次に描くなら・・・・
[ユリアンを、と言おうとしてやめた]
描くなら・・・俺を。俺ならきっと、お前を空に送ってやれる。
これまた、考えてても、仕方ない……か。
[今は、弟や、その幼馴染たちを信じるしかない、と。
そう、割り切って]
……幼馴染……かぁ。
[直後、緑はふと陰る。
いつからか、不可解な距離を感じるようになった自身の幼馴染]
あいつもあいつで。
なに、抱え込んでんだか、ねぇ……。
あなたを?
[きょとん、としてオトフリートを見上げる。
単眼鏡のその奥の、瞳の更に奥まで見るように]
あなたを描いたら、終わるの?
ほんとうに?
[じいいいいっと、覗き込む。]
ああ、本当だ。
[覗き込む少女に微笑みを見せて]
全て、終わる。
だが、もうしばらく待て。
解放には、もう一本の絵筆が本当に必要だ。俺が、取って来てやる。
[言って、傍らに置かれた絵師の肖像を抱え上げた]
[抱え込みに関しては、自分が劣悪、という自信はある。
空しいが。
が、その自分から見てもそう見えると言うのはどうなのか、というのもある。らしい]
……ん。
[また一つ、ため息をついた直後に走る、震え。
リディの封じの時ほど、大きな衝撃ではないが、それは間違いなく、『絵筆』の用いられた感触]
……無闇に使うなってのに、もう……。
[苦笑を零しつつ、意識をアトリエへと向ける。
揺らぎの後、ふわり、と景色は入れ代わり]
うん、わかったわ!
ありがとう。
あなた、とっても良いひとね。
[にっこりと満面の笑みを浮かべ深く、頷いた時には、もうオトフリートは歩き出して居た。
少し駆け足で彼が図書館を出るのを玄関で背中に手を振って見送り。
図書館の入り口の脇に、しゃがんで頬杖をついた格好で上機嫌に歌を歌い始めた**]
─アトリエ─
[たどり着いた先で目に入ったのは、赤色の目を引く絵]
……ミリィ姉の?
そう、か……確かに、依り代がなければ、それだけ不安定になる……。
[描かれた理屈は察しがついたが、しかし。
ほんの少しだけ、複雑なのは否めない]
─診療所─
……ん。んう。
[ゆっくりと気だるげに眼を開く。]
んあ。…………ここ、は?
[灯りに手を翳し……自身の黒く染まった手が目に入り、思い出す。]
……ああ、そっか。アトリエでぶっ倒れて。
てことは、ここは診療所。かな?
[歩き出す背に、エルザの歌が聞こえる。ざくざくと岩を砕いて均された道を踏み、その歌から遠ざかる。アトリエに着くと「絵師」の護衛なのか見張りに立っていた一人にキャンバスを見せて]
ミハエルに、これを届けに来た。
[そう告げた]
[若干の迷いはあっただろうが「絵師」と幼なじみであることは知れていたし、何より手にした肖像の効果は絶大で、そのまま道は開かれる]
ミハエル、絵を持ってきたぞ。
[アトリエの戸口で幼なじみの弟を呼ぶ。彼が、自分が勧めた通り、薬師の絵を描いたなら、絵筆はここにあるはずだった]
[為される会話に挟むことばは持たず、
あったとしても、聞こえることはない]
……っ、
ばっかじゃ、ないのか。
[その姿は二人の目には止まらない。
隣に置かれていた絵を抱いて、出ていく男の背を見送る。
依り代が形作られたために鮮明になっていた世界は、
水の奥底から見るように、*揺らいだ*]
[表で話す声が聞こえる。
やがてそれは、己を呼ぶ声へと変わった]
え…あ。
はい。
[扉のほうを振り向き。
瞬いた後、急いでそちらへと向かった。
漆黒の絵筆は、描いたばかりのキャンバスの前に]
ん?よっ。起きたか
[椅子から立ちあがりユリアンの下までいき]
何があったか聞きたいとこだが、動けるか?
[と聞きつつも。ブリジットにユリアンが起きたことを伝える]
[戸口から聞こえる声に、そちらを見やる。
聞きなれた、声。
いつもであれば、その言葉は額面通りに受け止められたのだろうが]
…………。
[図書館で交わされた言葉は知らない。
だが、何故か、不安を感じた]
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