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――…吐いたな、ラッセル。
いや、『フィン』とやら。
まあ、名前なんざどっちでもいい。
くだらない与太話みたいなものさ。
そして、そちらの青いお兄さんは君のお仲間さんかな。別に、違ってても良いけれどね。
『あかの海に沈める』ねぇ――…
元より、俺は他者に興味などなかった。
……『護り手』としての覚醒を余儀なくされたお陰で、多少、幾人かには意識を向けたが。
[淡々と語る。
それが真意か否かは定かではなく。
蒼氷に宿る想いも窺い知れぬ]
……彼岸に身を置く今となっては、無為な事。
[紡がれる言葉。
紅蛇はしゅるりと腕を一つ、巡る。
虚空。
真紅の紡ぐ短い言葉。
それへ返る言は、何一つ*紡がれない*]
[緊張感に満ちた静かな言葉が交わされる中、狙うのは一点]
…ならっ、てめえが沈め!!
[狙うのはナサニエルの腕に身動き取れぬ*ラッセルの心臓*]
くだらなくは、ないよ。
――僕にとっては。
[呟く一瞬、瞳は翳りを帯びた。
問いかけに答える事は無く]
そう。きれいな、あか。
僕は色を知らないけれど、それだけは、分かるから。
[ぽたぽたと。
腕から落つる、熱い滴を感じる]
[炎がじわりと目の中に入り込むように]
[ラッセルの指がその炎に飲まれるように]
[それはぞっとするほど、焼きついた光景と重なった]
――っ
[後ろからケネスが行く]
[止めることはできない]
[緋がゆれる]
[少しうしろに、シャーロットの姿]
下がってろ!
[火が広がったら、彼女を助けられるようにと、*そちらに足が進んだ*]
[少年を抱いていた腕が、力を喪いだらりと垂れる。]
[冷たく獰猛だった笑みは、陽に照らされた雪が解けるように消え失せた。]
[浮かぶのは、苦く]
[虚無に満ちた]
[階段に近付いて、聞こえて来たのは]
…『あかの海』?
[唐突にそれだけを聞いても、浮かぶのは身体に流れる緋色が広がる様子か、外の緋色の花の群れ]
[ケネスが前へと踏み出す]
[クインジーがこちらを向き叫ぶ]
[下がれと言う言葉に、足はその場でピタリと*止まった*]
(人を殺すことになんのためらいも無いのに)
[男の感情は、今も冷静に、ただ事態の成り行きを見る]
[火の手から少女を救おうとする気持ち]
[そして、ラッセルの望みをかなえてやりたいという気持ち]
[頭は割れるように痛んだ]
[火の中で 緋が散る *まぼろしを見る*]
ギィ、―――――。
[もう一つ。
紡いだ名は誰に、届いたろう。
愛称ではない、同胞の名を。
眼差しは一時、笑う男へと向けられた。
眼を伏せて力の抜けた腕から身を離す。
焔を揺らす燭台へと手を伸ばそうとし、
刃が迫るは*その直後*]
[階上では未だ、音がしています。
少なくとも片方は未だ生きているのでしょう。
廊下を照らす灯が、微かに揺れています。]
…あれを全部床に落として回ったら、
終焉を見れるかしら。
[赤い色の少年が似たようなことを考えているなど、わたしには分かりません。
手許を照らす色は、あの華の赤よりも*綺麗に映りました。*]
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