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―翌日 広間―
[それから誰もいなくならなかった夜が明けて、ベアトリーチェは広間にいた。
自分の亡骸がどうなったのかは見ていない。同胞の言っていた通り、何処かに捨てられたのだろうと思っていた。
きっと誰も、悲しまなかったのだろうと]
……。
[生きている者が出入りするのが分かる。けれどそちらは見ない。
時折聞こえる異なるこえも、聴こえないふりをし続けた。
今のベアトリーチェは、人間も、人狼も、大嫌いだったから。
黙ったままの少女が見つめているのは、人でも狼でもない――修道士の肩の上にいる、茶色の猫]
─ 広間 ─
……。
[寝不足は思考速度を遅くする。少しの沈黙]
俺が人狼だと?
なら何故、ビーチェの方を視なければいけなかったんだ。
疑うのは二人いた。ジットでも良かった。
ただ、俺は……。
[ベアトリーチェを殺したくなかった。そのベアトリーチェは人狼だった。思考が絡がってまた沈黙した]
……花もまだ健在なんだ。
俺が護られてるかもしれないと思って、そちらを狙って、阻まれたのかもしれないじゃないか。
[必死に考えて、もう一つの可能性を挙げた]
[感情が高ぶらないのは、訓練のせいもあるが。何より死んでしまった為にやっても仕方ない、という意識のせいだ。
それでも仕えた人が無事であるかどうかにだけは、注視してしまうのだけど。
ベアトリーチェが人狼らしい。
それを聞いてもそうなんだと思うだけだった。
気づけば小さな金髪が、ふわりと視界の端に居た。]
ベアちゃん。
[一度だけ呼んでみた。]
―広間―
[>>151 クレメンスが私的する可能性。ベアトリーチェが人狼だ。そう信じているからこそ何とか平衡を保っていたのだろうか、眉毛が下がる]
そーだな。人狼は、人狼を襲えない。
ゼルギウス先生自身が人狼なら、襲われないって筋は通る。
でもっ、極端すぎやしねー!?
ゼルギウス先生が、ベアトリーチェを生贄に捧げて生き残ろうって……
[だが、特異なものはもう見た。神の名の下に弟分を殺した友の姿を。――ゼルギウスも、そんな風に変わってしまったとしたと仮定したら事情は違うのだろうか。
日常なら迷いなくそんな馬鹿な、と声をあげられるところが、喉を誰かの指先で絡め取られたかのように、言葉がつまる]
[呼ばれ>>+8、僅かに肩を震わせて振り向く。
誰からも掛かることのないと思っていた声]
あ。
[いなくなったと聞いていたメイド服姿に、一つ瞬く。
襲ったのは同胞で、肉も口にしていない。故に罪悪感は薄いけれど。
暫く後にぎゅっと眉を寄せて、視線を逸らした]
あ。
[向こうが少しでもこちらの声に反応見せたなら>>+9、ぱあっと表情は明るくなった。]
よかったー、聞こえてるのよね!
何だかぼーっとしてるし、ひょっとして幽霊!?
とか思ってたから安心したわ。
そうよね私も幽霊よね。
[うんうん頷いて、自分が何者なのかを再認識してました。
ふわふわっと近づいて、嫌がられなければ頭を撫でてみた。]
― 広間 ―
[ローザが用意してくれた食事>>123は、自分も少しは貰っただろうか。
けれどそれを食べ終わらない内に、周囲の――特に伯父の会話に耳を傾け、考え込む。
たしかに、ゼルギウスかローザのどちらかが偽っている可能性もある。
だがもし、そうではなかったなら。伯父の発言は、彼らに人狼の可能性をなすりつけようとしている、残った人狼の可能性が高くなるだろう。
だが、伯父が人狼ではなく、守り手だったとしたら。彼を手に掛けるのは危険がある。
そんな事を考えている間に、クレメンスの口から聞こえた断定的な言葉>>157に、眉間にしわが寄った]
……伯父上、少し落ち着いて下さい。
[そう声を掛ける事で、彼の口を塞ぐ事はできるだろうか]
─ 広間 ─
兄さん、ちょっと冷静になってよ。
ゼルギウスが人狼なら、ベアトリーチェをかばわなかったのは不自然じゃないの?
自分が生き残る為の賭けにしたって危険過ぎるわ。
それならまだ、私が人狼だって方が説得力があるんじゃないの。
[朱花の所在を知らぬのと同じく、護り手の所在も知らない。
が、雪の下で眠っている彼らの中にはいないと思っていたから、今日は誰かが護られたのだと思っていた。
が、護り手のことを口にしないのは、強く否定するクレメンスの姿に何かを感じ取ったからで。
それを追及することで、その身に危険が帯びるのを防ぎたかったから。]
っ!?
[予想とは違った明るい声に、びくりと身体を竦ませた。
恐る恐るそちらを見れば手が近づいて来て、撫でられる。
嫌がりはしなかったが体育座りの膝を抱きしめて、顔を半分ほど埋めて]
…… 嫌いじゃないの?
[ぼそぼそと呟いた]
― 広間 ―
まぁ、アマンダ姉さん。
極端な可能性の検討してんだよ、クレメンス先生。
ローザねえさんも、ゼルギウス先生も両方偽っていて、それで、リーチェが人間ならば、みたいな。
[>>161 アマンダとクレメンスとの前提の違いを補修しようと口を挟む。
ずきずきと今も頭痛がする、その原因は――]
で、俺は『見極める力』も『死者を視る力』のどっちもねーから、今でもリーチェが人間だったらと思うと、怖い。だから――
なぁ、アマンダねえさん。アマンダねえさんは、はっきりとベアトリーチェが人狼って言い切れるんだな。
[からからと乾いた声を紡いだ]
─ 広間 ─
[交わされるやり取りに、口を出しはしなかった。
ヘタに口を挟むと混線が深まりそうだから、というのもあるのだが。
直接問わず、第三者の位置から見えるものもある、というのが、強い]
……過去の経験から、『蒼花』以外を受け入れない、とは。
[聞こえた宣>>163に、天鵞絨が細められる。
ただ、それがすぐに人である、との思考にゆかないのは。
伝承に伝わる事例の幾つか、情により、花を散らせぬ狼の物語。
それが、意識を過ぎったから]
ん?誰が?誰を?
[ベアトリーチェの質問が端的で、こっちはきょとんと首を傾げる。>>+11
が、程なくして思い当たると、ああと頷いて。]
んーと、ベアちゃんが人狼だからとか、
私を殺しちゃったからとか?
[死に際の事は相変わらず記憶に無かったから尋ねる。
どのみち殺したかもしれない相手に対する態度ではないのかもしれないが。]
─ 広間 ─
にいさ…
[クレメンスの言葉>>163を聞けば、言葉が出てくるわけもなかった。
欺かれたことがあるなら、信じることは難しいだろう。
辛く伏せた目は、エーリッヒの言葉>>165を聞いてまた開いた。]
そりゃあね。
ゼルギウスとローザ二人ともが偽物だとは思えないもの。
[こくりと頷き、彼をまっすぐに見つめ。]
ウェンデルはともかく、ユーディットに何か力があるなら。
ミハエルに絶対伝えていたはずだもの。
ミハエルが聞いて黙ってたならともかく、何も聞いていないなら。
ユーディットは何も力を持ってなかったのよ。
ユーディットが力を持っていない以上、ローザとゼルギウス二人ともが偽物なんてありえないでしょう?
[>>163 クレメンスが何故あそこまで平然といられたのか、その理由が全てその一言で氷解した]
そっか、だからクレメンス先生は……
覚悟なんて最初っからできてたんだな、ここに巻き込まれた時点で。
[そして、>>166 のゼルギウスの様子は、既視感があった]
なぁ、ゼルギウス先生! 落ち着けって!
[リーチェを殺すつもりだったのと同じように、クレメンスを殺すつもりだと思った。
止めなければ、と立ち上がろうとした]
[だって、止めなければ、ミハエラの大事な人が被害者にか加害者になってしまうじゃないか]
[が、体調があまりにもよろしくなく、一歩踏み出せば別のテーブルに倒れこんだ]
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