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ぅ…
……えと…
[覗き込んでくるローザの目から、まるで逃げるように視線は彷徨う。
離れた場所にいるクロエを見て、次にハインリヒを見た]
……ふぇ?
[ふっと脳裏に浮かぶのは、赤い月。
なぜだか嫌な気分になって、ロミルダは両手を自分の頭に添えた]
味方の少ない方につきたがる癖があるんでね。
[ゲルダの笑みを耳に、優先順位を切り替える。
器用と言われるのは、悪い気もしないものだが]
裏技ね…。
あるよ、って、言ったら?
――…じょーだんだけど。
[戯れの言葉を投げるのは、隙ができる事を期待して。
振るわれる腕の先、服の内から抜き出したナイフを掲げる]
[舞い散った新たな真紅に、間に合わなかったか、と舌打ち一つ。
ゼルギウスとダーヴィッドの様子を横目に見つつ、カルメンの前に立つ]
……死ぬ気で、ここにいるやつの方が。
珍しいんじゃね?
[ゲルダに向ける言葉は、静かなもの]
半分は、人?
全く、幻想ですねえ。
人であったのは確か。
でも、人の真似を出来る、獣に過ぎないんですよ。
[寝台を一瞥する。
起きた赤子が泣きだしていた。
けれど其処へは行かない。
更に下がり、窓辺へと。
此処は二階。高さは大分ある。
陽の高い時間では、獣と化すことも、完全には出来ない]
[ロミを、そっと抱きしめる。
"見る者"だった彼女には、きっと自分には解らない痛みがあっただろう。
思い出させようとしている自分は、きっと酷い。
でもせめて、もう感じられない温もりだけでも、与えてあげたくて。]
はっ、あるはずないだろ?ってか、あってもむしろ。あんた言う気はねえじゃねえの?
[ダーヴィッドの冗談っぽくいう言葉に一笑し、ただ掲げられたナイフには
腕を少しずらすが。ざっくりと切り裂かれ、血が滴り落ちる]
…いってぇなぁ…当たれや
[顔を顰めながらもなんだか無茶なことを言って、己も短刀を取り出し、腰を落として構え。ダーヴィッドを見据える]
…一応聞いといてみるけど。あんた。人?
[ゲルダの綴る言葉に、蒼は険しさを帯びて。
窓辺に下がる様子に、そことの距離を測る]
……で。
猫かぶりやめて、どーするつもりなんだよ?
[距離を測る。
痛みは、まだある。
その理由は、よくわからないけれど]
[ロミの視線と交差すれば、じっと見つめ返しただろう]
カル。
[此岸へと届かない手を伸ばす。
流れる紅を止められないと知りつつ押さえようとする]
Domine deus...
[祈りの言葉を口にしながら。
ユリアンによって引き離されたその身体を護るように、触れられない腕で抱きしめる]
どうしましょうね。
名案があれば、教えて頂きたいところです。
[くすくすと笑った。
心底、可笑しそうに]
まあ、逃げましょうかねえ。
[窓を開いて。枠に手を伸ばす]
[同情を買う──演技。
ゲルダの態度でそれが知れても、カルメンはショックを受けるにまでは至らない。
偽りだったとしても、自分が為さねばならないことに変わりは無かったから]
じんろー、すくう。
なおせない、なら、ころすしか、ない。
しねば、みんな、おな、じ……。
[傷口を押さえながら、視線が落ちた。
本当ならこうならないのが一番だった。
何事も無く、皆で生活出来れば一番良かった。
けれど始まってしまった以上、後戻りは出来ない。
力を持つ者として、終わらせる義務がある。
今のカルメンにその手段が無いとしても]
……そう言われて、はい、そーですか、いってらっしゃい、とか。
[開かれる窓、枠に手をかけるゲルダ。
迷いは──あったか、なかったか]
送り出せるかっつの!
[声と共に、駆けだす。
間に合うかはわからない、けれど。
銀の刃を、繰り出して]
ローザさん。
[届かないと知りながら叫ぶ人の名を呼ぶ。
それ以上掛ける言葉を見つけることは、ロミに対してと同じように見つけられないけれど]
[自分を抱きしめてくれるローザの死を、ロミルダは聞かされていなかった。
けれど]
……ぇ…
[記憶の赤い月が変化を遂げる。
――真っ赤になった台所の床と、
『殺されかけたから逆に殺した』という、淡々とした言葉]
――…や、
[2人の死の光景が、記憶の穴に埋められる]
[眉を顰めた、そこに問いかけられた言葉]
――っ
[映像が入れ替わる。
昨日の夜中、赤い月が出ていた時刻。
冗談めかした『共犯者』の言葉と、そして ]
…。
[ふ、と。嫌いという言葉に、嬉しそうに口の端を上げた]
お礼を言いたいのは、こっちなんだけどねぇ。
[「場」を望んだことを。
つい、教えたくなるけれど。今は、目の前の対処に追われ]
[ゼルの手が汚れるのはイヤだった。
でも、それ以上にゼルが傷つくのがイヤだった。
だから、ただ、何も出来ないのが哀しくて。
悲しくて。泣きそうになった、その時。]
ロミ、ちゃん…!?
[腕の中の少女が、叫んだ。]
は。自称チキンが被った……が、負けません。
ですよねえ。
[笑った。
酷く、楽しそうに]
―― 一つ御願いがあるんですが。
[刃が迫るのを見ながら暢気に口にする。
繰り出す刃を避け、腹に、蹴りを繰り出そうとして]
ま、護るものと見えるものだっけ?後人狼
舞台はそっちに任せて端役は横にいよーぜ
[軽い笑みを浮かべ邪魔させまいとダーヴィッドに集中する]
[半分は。それを幻想だと言い切れるその存在が。
ただどこまでも羨ましいと思う]
…さァてね。
俺は利益第一主義だから、見合うものを差し出されたら考えると思うぞ、っと!
[服で不意をつけたからか、飛び散る紅]
…人だったら?
もう人を殺したあんたに関係あるの?
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