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─回想─
[庭園から、ホールへ向けて歩き出したものの、その様子はどこか落ち着きなく]
『……ちょっと、まずい、か……』
[知らず、握り締めた右手に力がこもる。
合わせるようにやや滞りがちになった歩みに、蒼の髪の青年は異常を察知したのか、どうしたのかと問いを投げてきて]
あ……ん、ちょっと……な。
悪い……俺、部屋に戻る。
……調べたい事も、あるし……。
[一応、嘘は言っていない。先ほど話題に上がったいくつかの事を、確認したい、という意思はあったから]
[とはいえ、食事をせずに引っ込む、と言う意見はさすがに周囲の不興を買ってしまい。
それは、部屋に軽い食事を運んでもらう、という事で決着をつけて、2階へと]
─…→2階・客室─
まったく……お節介なヤツが多すぎるよ、御大の周りには……。
[部屋に入るなり、口をつくのはこんな呟きで。
その言葉に、カーバンクルは諌めるような鳴き声を上げた]
ん……わかってる。
それに、救われてるようなもんだし、な……。
さて、と……。
[小さく呟き、窓を開けて室内に風を呼び込む]
それにしても……どうしたものかな…………っ!
[夜風に金の髪を遊ばせつつ呟いた所に、衝撃を感じてその場に膝を突く]
「……エーリ!」
ん……大丈夫だ、けど。
っとに、無駄に厄介だよなあ、これ……。
[ため息混じりに呟きつつ、襟元を開いて。
ここ数日、押さえつけている辺りを見やる。
そこには、何かで傷つけられた痕のようなものが走り。
均整の取れた身体に、歪みめいたものを織り成していた]
……これが痛まないのは、助かるんだけどな。
[ぼやくように言いつつ、先にテーブルに投げ出したレポートや、それ以前から集めていた資料を鞄の中から取り出して、愛用のペンと、書き取り用のノートを準備する]
……とにかく、やれるだけやる。
俺の力が及ぶ事は。
[及ばぬ範囲の事はどうするのか、と。
そう問われたら答えようはない……のだけれど]
[ふるり、と頭を振って、用意した資料と向き合う。
カーバンクルは傍らで、その横顔を不安げに見詰めていた。
……途中、食事が運ばれてきたものの集中のために中々気づかず、また、研究中のクセが出てか自分の状態に無頓着になっていたらしく。
運んできた者に、傷痕を見られた可能性には、*どうやら意識は回らなかったらしい*]
─2階・客室─
……ふぅ。
[一つ、息を吐いてまとめ直した資料をそろえる]
……しかし、調べれば調べるほど……。
[先行き不安というかなんと言うか]
まあ、あれに関わって動かせる……という事は。
どう考えても、普通じゃないって事だろうしな……。
[そういう……言わば、人ならざるもの。
妖精と深く絆を結ぶ彼にとっては、ある意味近しき存在とも言えるそれらが事に絡んでいるのは、否定すべくもなく。
それだけに、悩ましいものがあって]
―回想:昼―
[ここしばらくはきちんと眠れていない。
そう彼女は思って苦笑する。
部屋の中には紙がやはり散らかったままになり、未完の絵が捨てられていた。]
あ、見に行こう。
[ふと、昨夜の執事の言葉を思い出して、彼女は部屋を出る。
まだ明るい時間。
階段を下りて、向かうは庭園。]
――すごい。
[先日とは違い、花が綺麗に開いた様子を、彼女は十字架を宿したまま見つけ。]
[だんだんと冷たくなっても、彼女はただただ、その薔薇を見つめて。
それでも、それを描くことはできない。
黒と白の薔薇。
手を伸ばすことはなく、ただ目に焼き付けるように。
それは陽が沈んでも。]
……ところで……ローゼ?
[ふと、何か。睨むような視線を感じてカーバンクルを見やれば。
真紅の瞳にはやや、怒ったような色彩。
その色彩と、まとめを始めた時と同じ空の色に。
自分が『やらかした』事に思い至る]
……あー……また、やっちまったか。
[研究に没頭して、食事をとり忘れるという、ある種の日常茶飯事。
それを、この真白の妖精が快く思っていないのは知っているのだが]
……わかったわかった、何か食べに行くから!
そう、怒るなよ?
[苦笑しつつ立ち上がり、身支度を整えてから、カーバンクルを肩に乗せ、部屋を後にする]
─…→ホール─
[ホールに顔を出せば、昨日よりはいくらか、慌しさは鎮まっていただろうか。
その代わり、緊張らしきものは張り詰めているようにも感じられ。
取りあえず、飲み物と軽く摘める物を用意してもらい、一先ず空腹を誤魔化しておく]
……別に、研究中はいつもの事だろうに……。
[中々機嫌を治さないカーバンクルの頭をつつきながらこう言えば]
「今は、おやすみなのにー」
[返って来るのはこんな言葉]
―客間―
よ…く、ねたか、ね。
[たどたどしい口調でぼけっと起き上がり
そういえば結局泊まったんだったか…なんて思いながら
日課どおり知恵の輪を弄りつつ、昨日あったこと思い出す]
―回想/ホール―
あ、オルゴールの絵を描いていたんだ。
[ナターリエからそう聞き、あー、そりゃ見に行けばよかったなーとこっそりと呟きながらも、出来上がったら見せてもらえるらしいので]
そのときはよろしくお願いいたします
[と、お願いした。その横で、ナターリエとヘルガが絵、というよりオルゴールやギュンターの容態について喋っていたようだがそれには加わらず考える。]
[単なる予想とはいえ、なんかこの状況は帰れそうにないな。じゃあ自分は何をしようか。工房とかでもないのかな。とか悩んでいると、それを心配したのか。ザムエルに声をかけられる。それに対して...は考え込みながらもザムエルの顔を見て。
書庫だな。
と、その思慮深き雰囲気からかインスピレーションを感じたのだろう。
もし考えている途中にヘルガやナターリエやブリジットに声をかけられていたら庭園だっただろうか。
それはわからないがそれはともかくとして、声をかけてくれたザムエルに大丈夫ですよ。と一度言った後]
いえ、ただ同じよう早く落ち着かないかな。と思ったのですよ
[内心でそんなことを思っているとは知らないだろうが、別に嘘ではない。そうじゃないと仕事が…とは続けなかったけども]
さて、と。
[当初の目的を果たしてしまうと、一人で─正確には一人と一匹、だが─ここにぼんやりとしているのも居心地が悪く]
……庭にでも行くか。
[部屋に戻るのもなんだし、と思うと結局そこに行くしかないようで。
ふらり、ホールを出て庭園へと足を向ける]
─…→庭園─
[昼の陽の下と、夜の月の下。
表情の違う黒白の花は、しかしいつ見ても綺麗なもの。]
オルゴォルにも合うかしら。
[思い出して呟くも、それを形にすることができず。]
[さて、どう過ごそうかも決まったな。ということでホールを去ろうかと思っていた頃。
噂話にあげていた人物。オトフリートがホールへと顔を出した。
噂をしているときはそこには居らず、去ろうとしたら現れる。そのタイミングについての見解が、ヘルガに内心で同意しながら
オトフリートは皆に、伝えるべきことがあるという。
そこからオトフリートが反応を探ろうとしているのか。などということは頭に浮かばず。
やっぱり何かあったのか…と半分は予想していた通りだったのでそれぐらいしか漠然と思わなかった。でもオトフリートが口にするということは必要だからこそ喋るのだろう。
それは明日。ということなので。じゃあ明日。ということで、今日は帰るのは諦めて
書庫に向かい、いくつか本を借りて客間に戻ったのだった]
─庭園─
[庭にやって来れば、今日も今日とて先客があるらしく、人の気配が感じられ]
……そういや、ここで誰にも会わないって言うのが少ない……な。
[そんな、どこかずれた事を呟きつつ、ゆっくりと奥へと歩みを進めていく。
夜闇は静か、月光はもまた同じく静かで。
その心地良さにふ、と、抱えていた緊張が緩むような気がした]
……で、誰がいるのかと思ったら……?
[白い花に指先を伸ばす。
触れた感触は上質の絹より柔らか。]
…綺麗ね。
ここで咲いてるのが、きっと一番綺麗。
[ふわと笑って、その手を引いて。
振り返った彼女は、ようやくそこにエーリッヒの姿を認めた。]
今晩和。
あなたも薔薇を見にきたの?
あ……こんばんは。
[声をかけていいものかどうか、悩んでいた所に逆に声をかけられ、挨拶を返す。
カーバンクルも真白の尾を振りつつみゃう、と声を上げた]
いや、薔薇を、という訳じゃなく。
どうも、落ち着かないんで、散歩に、ね。
[…ぽむぽむ。
少女は自分の頭に手をやった]
…
[むぅ。小さく唸りつつ考える。
…今日の題目は、自分の頭は気持ちいいのかどうか。
ナターリエにも撫でられた。
ユリアンには、なんだか顔を合わすたびに撫でられている気がする。
少女は部屋で一人。
起きた時には日はてっぺんまで登っていて、気になったことはぼんやりと考える。
…ここまでゆったりとした時間は取ったことがないのか、ベッドに寝転がり、ごろごろとしていた]
庭園は綺麗だものね。
[不自然さには気づいているのか、しかしそれについては口にせず。]
こういう場所は落ち着けるでしょう?
あなたも
[と、カーバンクルにも微笑みかけて]
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