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−客室−
[汗を拭いたタオルを、洗面器に注いだ冷たい水で絞って、青年の額に乗せる。]
……ちょっと、待ってて…すぐ帰ってきますから。
[食事と、水。それから着替えも。
いくつかを頭に浮かべながら、助けを得る為に、広間へと]
−客室→広間−
[ 呟かれた言葉の続きを問うでもなく、後から入って来たメイを見遣れば無言で椅子を引いたのみで、ハーヴェイ自身も其の一つに腰掛ける。其の距離は僅かに、開かれているか。普段と変わらず頬杖を突きつつ、皆の話を聞く体勢を取る。
ネリーが用意をしたのか、卓上には人数分の料理が並べられていたものの、スープは既に冷め切っていた。]
関係者……。
……『力』について、聞かされた時に。
少しだけ、聞いたけど……。
[詳細には、祖母は触れなかった事を思い返しつつ。
引かれた椅子に、かくん、と力なく座り込んで]
[ずっと嵌められていた左手の白い手袋を無造作に外す。
コーネリアスが手渡されたものと瓜二つの、薔薇を象った銀製の指輪。]
まずは、この指輪と密約について話さなければいけません。
この指輪は『秘密の共有』を約束するものでした。
アーヴァインは『人狼審問』の真実を、そして私は異端審問官としての地位を。
その秘密を共有する代わり、お互いに見返りがあったのです。
その見返りについては黙秘させていただきますが。
アーヴァインは部屋の管理を、私は鍵の管理を。
鍵と部屋を同じ人物が所持していては、すぐに事が知れてしまいますからね。
[事も無げに。]
[それは幼い頃に聞いた昔話――
人の姿をした化け物が、村を襲った恐ろしい御伽噺。
その話を聞いた幼かった少女は、ずっとそれは作り話だとばかり思っていた。]
[――二年前…人狼の手によって両親の命が奪われるまでは…]
[二年前のあの日、村の誰かが言っていた。
三十年近く前に起こった、無残な事件の詳細を――]
[その事件が、今、目の前で語られている事と合致するかは、少女には判らない。
しかし――]
きっと…あの悲劇は…繰り返されるのでしょうね…
[そっと呟くと、少女はルーサーの話に耳を傾けた。]
[広間では、赤々と暖炉の火が燃えていて、廊下で冷え切った身には熱いくらいなのに。
何故か、ひどく冷え切った空気に満たされているような気がした。]
……ぁの、 なに…が……?
[ひどく蒼褪めた顔色で、ゆるりと見渡して。
その場を支配するルーサーへと、視線は釘付けになる。]
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