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「アーベル、もうその辺りで良いぞ〜」
[ギュンターがそう声をかけつつ、
雪をかく手を止めた青年に湯気がのぼる大ぶりのマグカップを持って来る。
青年は、今まで雪かきに使っていたスコップを片手で持ち
そのマグカップを、礼を告げながら受け取る。]
[昨日降り始めた雪は弱いながらも一晩中降って、村全体を薄く白に塗りあげた。
人通りがなくなた後、広場に、市庁舎前に、民宿が集まる一帯にも雪は積もり
それは、多くの観光客の妨げとなっていた。
……そんな時に駆り出されるのは自警団や、村の若い男手で。
まだ、観光客がまばらな午前中に雪かきを済ませてしまおうと
手が空いている者をかき集めて一斉に雪かきを始めた。
青年も当然のことながら駆り出され、
朝早くから、今まで労働を余儀なくされていた。]
[さすがに、昨日風邪で倒れた
(そして青年がおぶって運ぶはめになった)
エーリッヒの姿はなかったが。]
[雪の方は昼に入る前には降り止み。
元々威力が弱い降雪だったこともあり、
雪かきの方も、今時分にはあらかた完了することが出来た。]
[自警団長のギュンターが、雪かきに参加した男達に
グリューワイン…赤ワインに香辛料とシロップを入れて沸騰直前まで温めた物…を
振舞っている…青年はさらにシロップを追加してもらいつつ、それを受け取ると
賑やかな一団からは、少し離れたベンチに腰を下ろした。]
[昼食の時間も過ぎ、観光客が増え始めた通りをぼんやりと見る。]
[この村は、豊富な自然資源と、温泉と妖精祭りの二大観光スポットのおかげで
小さな村ながらも村の規模にしては豊かだ。
……おかげで、青年のような、身寄りもない者が
大きな苦労はせず、今まで暮してこれたのだから……]
[目の前の屋台…屋台とは言っても年に一度×それなりの期間使用するため
結構しっかりとした作りで、土台部分を見れば小さな木の車輪がついている。
…では、村の名物菓子シュネーバルを売っているようだ。]
[小麦粉を練った生地を細く伸ばし丸めて揚げ、
そこに粉砂糖をまぶしたり、チョコをかけたりしたお菓子だ。]
[昼食替りに幾つか買い求め…ふと思い立ち、
昼食替わりにするには多いと思われる量を追加購入しつつ
グリューワインを飲み乾し、昼食分を食べ終わる頃には
次の祭りの準備に*駆り出されるだろう*]
[――窓から降り注ぐ、冬の陽射し]
[随分と長く、眠ってしまっていたのだろうが。太陽の位置は、大分高かった。
降り積もった雪が光を反射して煌めき、夜の闇とは違う美しさを見せる。
おかげで、疲れはすっかりと失せていたが……屋敷に居た時の自分と比べると、]
……怠惰だ。
[向こうでの、殆ど休む間も与えられない勉学の日々よりも、此方での生活の方が、彼にとっては余程大変だった。自由な時間があっても持て余してしまうばかりだし、外に出れば出たで、予測不可能な事態ばかり起こる。
矢張り、此処に来るのは止めておくべきだっただろうか]
[既に午後の御茶の時間らしく、広間では母を含めた女性三人が、にこやかに――一人は些か緊張気味の様子で――談笑していた。平民の出である彼女は、貴族にしては随分と気さくで。束縛の無いこの場所では、余計、自然に振舞えるのだろう]
[その姿を認め、挨拶の言葉と共に恭しく礼をする]
……申し訳ありません、母上。
役目も果たせなかった上、このような時刻まで眠ってしまうとは。
[彼の謝罪に、母は穏やかな深緑の瞳を細め、楚々とした笑みを浮かべる。自分が、寝かせておくようにと言ったのだと。昨夜の事情も、大体は侍女から聞いているようだった]
[取り合えず座るようにと勧められ、彼も席に着く。
侍女は慌てて、食事の用意をと、広間をぱたぱたと出て行った]
[それにしても、と。
母は頬に白い手を添え、考え込むような仕草をする。
肩にかかった金糸の如き髪が、ふわりと揺れた。
「その毛布を被った男の人……」
何か覚えがある気がする――
そう呟いた彼女の言葉は、*彼の耳には届かなかった*]
[ぱた、ぱた。ぱた、ぱた。
雪かきが済み、歩きやすくなった道を、辺りの店を見比べつつ、ゆっくりと歩く。
片手には大きな籠。
反対の手には、表は買うべき物を、裏には店の地図が書かれた一枚の紙。]
……ぁ。
ここ…ですよね…。
[紙片と店を見比べて、一つ頷き。扉に手をかける。]
[――からん。
古ぼけたベルが鳴る、その内側は、様々な匂いが満ちていて。]
…こんにちは。
[ひょっこりと顔を出した店主に、挨拶して。
彼女の分が増えた為に、次の配達予定よりも早めに減りつつある食材のいくつかを買い足していく。
――やがて、再びベルが鳴って。
少し重そうに両手で籠を下げて、店を後にする。]
[ぱた、ぱた。ぱた、ぱた。
行きとは別の意味で、ゆっくりと歩く。
その足がある角を曲がろうとして、ぴた、と止まり。]
…あぁ。
ここ、でしたか…。
[視線の先には、行きには目的地の方角ばかりを見ていて気付かなかった、『Fairy's fire』の看板。
辺りを見回し、一つ頷いて。
再び、足を動かして、別荘への帰り道を辿る。]
[別荘の裏手から厨房へと入れば、ちょうど先輩であるイザベラが、食器を下げてきた所で。
主が軽食を兼ねたお茶を終え、一旦部屋に戻った所だと聞かされて。]
遅くなって…すみません…。
[ぺこぺこと慌てて頭を下げるも、気にせずとも大丈夫だからと言われて。
何処に置くかまだ詳しくは知らない食材の入った籠を手渡し、代わりに手早く食器を洗い上げていく。]
[洗い上げた皿を拭きながら思うのは、先程の、主の母上様と一緒にお茶をいただいた時の事。
先輩は今までにも一緒にお茶を飲んでいる様子だったけれど、自分は…なんだか色んな意味で落ち着かなくて。傍目にもきっと緊張して見えたに違いない。
――主が起きてきたのを幸いに、厨房へ逃げたと気づかれはしなかったろうか。]
[身体の弱い、元舞姫の、ご主人様の…お母上。]
……まさか、ね…。
[ぽつり。
小さく呟いた声は、誰にも*聞きとめられることなく。*]
――はい、では。
御身体に気をつけて。皆さんにも宜しくお願いしますね。
[今日は特に頼まれる事も無かったから、バスケットの中にはクッキーやマフィンが一つずつ丁寧に包まれて]
[だいぶ軽くなったそれをちらと見て、また歩を進める]
[余った分は如何しようか、なんて考えながら]
…あの人でも風邪引くのねぇ。
[先程立ち寄った詰所で、差し入れついでに聞いた話を思い起こせば]
[ぽつりと呟いた言葉は失礼にも聞こえるものの、本人に悪気は無い。多分]
[ぎゅ、ぎゅ。]
[小さな軋み音を立てて、雪の上へと足跡を並べていく。
屋台通りの雪かきは、村の人たちに寄って既に済まされた後だったけれど
少し裏道へと入れば、まだ真新しい雪が残っている場所は多々あった。
…雪は好きだ。都会では滅多に見られない様だし。
冷えた空気と白い色が、見慣れた村の顔を変えて見せてくれるから。
囁く様に息を吐けば、白く形作って。――そして直ぐに空へと消えた]
っはー…。…幸せ。
[先ほど屋台で買った瓶詰めの中から、ピンク色の星屑を一粒選んで。
口に放り込めば、カキリと砕けて甘い味が広がる。
この甘さが堪らない、と言わんばかりにクスリと口元を押さえれば
瓶の中で小さな星々が跳ね返って、チリン、と小さく音を鳴らした。]
[チラリと、通りから続く自分の足跡を振り返って見やれば
闇に紛れて、屋台の灯がと揺れているのが見えた。
―――昨夜よりも幾つか増えた屋台の数]
さって。……今日は何買おっかな?
[ふふ、と小さく笑みを零して踵を返せば、
今度は自分の足跡を辿るようにして、雪の上へ平行線を付けていく]
[ふわふわ気分。祭りの空気。
子供は今は、部屋の中。
昨日のことを、思い返して、
とても嬉しそうに笑った。]
あまいお菓子はしあわせの味。
[それから今日も、部屋をでる。
とっとっと、階段を降りる音。
いってきますと子供は笑い、
ぱたんと扉は閉められた。]
[子供が出て行ってしまった後、
施設の大人たちは顔を見合わせる。]
「なんだかビーチェ、いつもより元気ね。そんなに祭りが嬉しいのかしら?」
「そういえば去年もそうだったわね。おばあさまが亡くなった後だったけれど。」
[そんな話はすぐに終わる。
どの子はどんな子で、と話し合う。
施設の大人たちは、子らが好き。
だけれど、盗み聞きする悪い子ら。
うんうんと頷いた。]
「にぎやかなの好きだよな、ビーチェ」
「うん。あ、ビーチェと温泉行く約束してるんだ!」
「ずるいっ、わたしも!」
[そうして子らは、
ゆっくりしずかに
閉じた扉を、
ひらいて、しめた。]
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