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[あきれたようなメイの呟きには、また馬鹿にされるかもと思いつつも素直に、]
…これは、ご飯です…。 知らない人が……怖いから…
[知らず視線を伏せたのは、”知らない人”と仲良くなっているローズマリーの表情を見たくなかったせいだろうか。]
――客室――
[少女は窓から差し込む光に本を読みながら、時を刻んでいたが――]
……っー…
[癒えた筈の傷口が疼きだすのを感じる。
そう言えば昨日は薬も塗らず寝床に入った事を思い出し、軽く溜め息を吐く――]
少し位外に出ても…大丈夫よね…。
[置かれた紙の契約――破るのはほんのちょっとの時間――]
[少女はそっとドアを開け――]
[静かに廊下へと足を…]
――客室→浴室へ――
ん、少し、落ち着いた?
…よかったわ
[メイに微笑みかける。
それからトビーの言葉に、わたしは首を傾げる。]
知らない人?
[誰のことだろうと首を傾げて]
[ローズマリーの心配そうな声には、仄かに心が温かくなって、空元気も元気とばかりに。]
…ぁ、これくらい平気です!
ちょっと、お腹が空いてるだけ…だもん。
[メイの軽い口調には、ちょっと拗ねた風に口を尖らせるも。本気で拗ねているのではない事は、付き合いの長いメイであればわかるだろう。]
[ 漸くシンプルな黒の上下に着替えを終えれば部屋を出、階下に向かおうとすれば一箇所に固まる人の姿。緩に黒の瞳を瞬かせ其の中にメイの姿を見留めれば僅か視線は逸らされるも、階段を通らぬ訳には行かず傍に寄れば軽く頭を下げた。]
……大荷物だな。
[ トビーを見て思わず零れた言葉が似通っているのには気付かない。]
――浴室――
[途中、廊下ですれ違った人達に軽く会釈をして、少女は足早に通り過ぎた。
部外者が立ち入ってはいけない雰囲気に――胸が押しつぶされそうになったから――]
[滑り込むようにして中に入った浴室。誰も居ないのだろうかと、室内へ軽く視線を泳がせれば…]
誰か…居る?
[脱衣場の籠には衣服――
しかし少女は気にも留めずに服を脱ぎだした。
――殺せるものならここで殺してしまえばいい――
そんな思いを胸に抱いて…]
[そして疼く傷を抱えながら少女は中に入る――]
[水蒸気と響く音に、平常心を保ったままの声色で――]
こんにちは?お邪魔しますね…。
[知らない人が怖い、という言葉に、僅かに眉を寄せる。
こんな状況では、それも仕方がないとは思うから、それ以上は追求はせずに]
そうなの?
情けないなあ、しっかりしなさい、男の子っ!
[拗ねた素振りに、くすくすと笑いつつ、からかい半分の言葉を投げる]
……ええ、まあ。
何とか……ですけど。
[それから、ローズマリーには短くこう返す。
思い過ごしなのだろうけれど。
何かの弾みで簡単に切れてしまう事を悟られているようで、少し、落ち着かない感じがしていた]
あ、そうだわ
ギルバートさんはどこかしら。服、持ってきたのだけれど
[シンプルなシャツと黒いパンツ。誰でもはけるようにと、デザインなどはないけれど、それを見せる]
あと、包帯
[それからメイに微笑みを向ける]
ん、それなら良いの。
辛いのに無理をしては駄目よ?
いつか壊れてしまうわ
[不意に掛けられた(というか、きれいなお姉さんに意識がいってて気付いてなかっただけ)落ち着いた声は、彼のよく知ってる人のもので。
顔を上げると同時にむくれてしまったのは、まぁ色んな意味で足元にも及ばない青年への微かな反抗心ゆえだろうか。]
……大丈夫だもん。
[そんな風だから、余計に子ども扱いされるのだとは気付かずに。]
[突然かけられた声に、びくりと体を震わせる。
小さな水音が、先の声とともに浴室に反響した。
思わず身を守るように自分を抱き締めながらも振り向けば、ぼんやりとした湯気の向うから見えたのは煙る金髪。]
あ……。
[自分とさして年の変わらないであろう少女の顔を確認し、その強張った表情がゆるやかに和らぐ。]
こんにち……は。
[しかし、彼女もまた人狼である可能性をもった者なのだと気づき、緩みかけた頬は中途半端な状態のまま奇妙な表情を作った。]
……お早うさん。
[ メイの言葉にヒラと手を振り挨拶を返すも其の目は眇められ、]
まあ、俺はお早うでは無い訳だが。
[確りと憎まれ口の様なものを叩くのは忘れない。
トビーの強がりめいた口調を聞けば自然と悪戯っぽい笑みの形になり、腰に手を当てて荷物を沢山持った少年の様子の見遣る。]
はいはい。
[ここで叫んでもきっと、誰も気づいてくれない。
そんなことを考えたのに逃げようとは思わなかったのは、自分と同じくらいの年の少女を心底疑う気にはなれなかったから。
そのかわり、確かめるような視線を少女にのばした。
他人の裸体を見つめるのが不躾であると言う意識は、ヘンリエッタの環境にはない。]
別に、無理は……。
[してない、と。いつもの調子で言いかけて、止まった]
……あんまり、してないですから。
[大して変わらないけれど、完全な否定をする事は避けて。
曖昧な答えを返し]
……どうせ寝坊だよ。
[ハーヴェイにはぽそ、とこんな言葉を投げ返す。
実際大幅寝過ごしたのだから、その点に反論の余地はなし]
しっかりって……ぅー。
[彼なりに、考えた上での行動なのだけれど。
ローズマリーの前で、誰に怯えているのかを言うのは躊躇われて。
それでも、いつもどおりに見えるメイのからかいの声と笑い声に、尖らせた口元が緩む。]
……ギルバート…?
…ぁ、お兄さんならボクの部屋に!
[ローズマリーの告げる名には、不思議そうに小首を傾げるも。
手に持つ服に、怪我人のお兄さんの事だと気付いて、小さな声を]
[メイの曖昧な言葉には、少し、悲しくなった。
でもわたしは頷いて。]
ん、それなら良いのよ
…ちょっと昔の友人を思い出しちゃっただけだから。
その答えなら、大丈夫ね
[そしてトビーの言葉に]
あ、お名前。そうね、怪我をしていた人のことだわ
あなたの部屋にいるのね
眠っているのかしら?
用事が有るなら早く済ませた方が好いんじゃないか。
[ 拗ねてみせたかと思えば表情を和らげたり首を傾げたりと大忙しの少年を見遣り、然う声を投げ掛ける。手は腰に当て体重を片足に寄せた体勢で視線だけを向けはしたが、恨めしげな視線は当然気にはしない。
メイの零した寝坊の単語には軽く笑みを浮かべてからかいの表情を見せるも、]
……眠れたなら好かったな。
[小さく云えば、僅かに目を伏せ其の場に皆を残して階段を降り始める。]
俺は下に行くんで、此れで。
[跳ねる水音と響き渡る天然の音響の中、聞こえて来た声は年端も変わらない――]
あなただったのね…、こんにちは。ヘンリエッタさん…。
[僅かに安堵した表情で少女は、煙る向こうで身を守るヘンリエッタの表情を見て…小さく苦笑を漏らし――]
驚かせちゃってごめんなさいね…。私の身の潔白が証明されていないのに…近付いてしまって…。
[謝罪を口にしながら、少女はヘンリエッタに背を向けて――]
そうだよね…さすがに…何処の誰ともわからない人物と二人きりで居るのは嫌だよね…。
でも…どうしても背中を流したかったから。
少しの間だけ――我慢して…
[実際人狼と対峙してきた所為なのか。少女は人を警戒するという自己防衛の感覚が麻痺していた。そしてその感覚は時に、他人との尺度を計り間違えてしまうことを――
相手の反応を見て初めて思い出すほど鈍くなっていた。]
まあ、ある意味トビーくんらしいけどね?
[くす、と笑んで。ぽふ、と少年の頭を撫で。
ローズマリーの言葉には、ほんの少し、首を傾げる。
ただ、その言葉の意味を追求する気にはなれなくて、また、曖昧に頷くに止めた]
[ローズマリーの言葉に、部屋にいるであろう青年を思い出し、大丈夫かなと心配が首をもたげて。]
……あ、元気になったって……言ってたけど。
お薬塗りなおした方がいいよね、ぅん。
じゃぁ、ローズマリーさん、こっちです。
[腰に手を当ててこちらを見やる青年の姿には、こう、むらむらと「ハーヴェイさんのかっこつけー!」と叫びたい衝動に駆られたが、青年の発する「用事を片付けろ」という言葉には反論の余地などなく、内心歯噛みしつつもこっくり頷いて、先頭に立って歩き出す。]
うん、まあ、眠れたけど……。
[ふと、そういうハーヴェイは眠れたのかと気になったものの。
問う前に、彼は下へと向かっていて、ため息一つ]
……と、ボクも下に用事あるんだっけ。
[それからふと、思い出したように呟く]
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