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[慟哭が聞こえる]
[ハインリヒだ…と思う][目を伏せる]
あとで、作り終えたら、墓標にして、今はできているものを
…お酒も、用意しましょうか
[かすかに笑んで]
…皆、一緒にしてあげましょう。一緒の方が、さびしくないでしょうから
[呼びかけられた仔猫は階段と、居間とを見比べるような動きをして。
それから、困ったような、不安なような鳴き声をあげる。
どうしていいのかわからない。そんな気配が、伝わるだろうか]
―二階・自室―
[昨夜の寝酒が過ぎたのかぼんやりと目を覚まして。
屋外と階下の只ならぬ気配に身を起こす]
……何?
[窓の外を見る。一面の白…が広がるはずの台地にありえない色彩のコントラスト]
あ……れは……
[見た光景が咄嗟に理解できずに、誰か居るだろうかと居間に下りていく]
―二階→居間―
[建物の向こう。声が聞こえた。
僅かに目を伏せ、地に突き立てたスコップを引き抜く]
…ん。それまではあれで、我慢してもらおう。
ホットワインとか、いいかもな。
寒かっただろうから…あったかい物の方が。
[微かな笑みと共に返された言葉には、ただ頷いて。
皆が入れるように、広く、深く、掘り続ける]
ペルレ?
[彼は、イレーネと同時に白い仔猫に視線を向ける]
エーリッヒが、どうかした?
[ただならぬ様子に歩み寄りかけて、階段を降りてきたエルザを見つける]
あ、おはよう、エルザ。
[にこりと笑う]
[降りて来た女性が目に入るも。
聞こえた鳴き声に、仔猫の傍に近寄り抱き上げて]
……また、何か……やらかした………?
[自分もやらかしている、という自覚はさっぱりとない]
[エルザに、頭を下げ。ふら、と階段を昇る]
[居間に下りて、只ならぬ様子の人々に気付き声を掛ける]
おはよう…あの…何かあったの?外が…
[迂闊に口を挟めない重い空気に口を閉ざす]
[がり、っと音を立てて掘り進める]
ホットワインは、アーベルに作ってもらいましょうか。
それで、果物もおいておきましょうか
[つぶやくように言いつつ、][やがて穴は深く、広がってゆく]
―二階・廊下―
[ランプを階下に置き忘れた事には、気付かずに]
[廊下を歩んで、仔猫の主の部屋へと向かう。僅かに開かれた隙間]
……………エーリッヒ?
[声をかける]
[子猫を抱き上げて階段を登っていくイレーネを見遣り]
あれ、エーリッヒの猫…ね?
彼もまだ起きてきては居ないの?
[昨夜の彼の様子を思い起こして]
[彼の事はイレーネに任せれば安心かとその背を見送る]
─二階・個室─
[その頃の猫の主はと言えば、何とかして立ち上がろうとしていたのだが。思いの他消耗しているのか、それはままならず]
……イレーネ、か?
[不意の呼びかけに焦ったのも災いしたのか、おかしな力がかかり]
わ、とっ!?
[寄りかかっていた扉が一気に開いて、そのまま倒れこむ結果となった]
[彼は二階へ上っていくイレーネを気にしつつ、エルザの問いに応える]
狼の群れが自衛団の人達を襲ったんだ。
オトフリートとユリアンが御弔いしてる。ハインリヒも外に行ったけど…エルザは外を見ないほうがいいと思うよ。もうしばらくは。
[二人掛かりでも全員が入れる程の大きさの穴となると時間がかかる。
そう、自分の中で言い訳する]
[本当は、ハインリヒにどう声をかけていいかわからなくて、彼らを迎えに行き辛いだけ]
色々…出来るだけのことはしてあげないとな。
……狼、か…
[ぽつりと呟く。
狼の群れというアーベルの言葉が頭に引っ掛っていた]
[手はしびれてくるけれど][いまだ掘り進められない]
[早く弔ってやらねばならないのに]
そう、ですね。できることは。
[それから、次のつぶやきには、目を伏せる]
人狼…
[多分、風邪を引いていなければ、もしくは一歩後ろに下がっていれば避けられたのだろうが、現在の彼女は、運も酷く悪かったらしい。
ゴッ。
とかなんとか、形容し難い音。丁度、角が額に当たったらしい]
……〜〜〜〜〜
[物凄く痛そうだ。]
[仔猫はちゃっかり、彼女の腕から降りていたので、被害はなかったようだった]
[アーベルの話を聞いて背にひやりとした物を感じ]
狼の群れが…そんな、じゃぁ、あの外の赤い…あれが…?
[自分が見たときには既に粗方片付いた後なのだろう。
しかし雪に散った赤だけでその惨状は理解できた]
オトフリートたちが…そうね、あのままでは…。ハインリヒは自警団と関わりがあるのだったわね…
ありがとう、気遣ってくれて…
後で鎮魂の歌でも歌いましょうか…
少しは安らかにいけるかも知れないもの…
[ざく。ざく。
少なからず溜まる疲労が、単調な動きを鈍くする]
人狼、か…
[オトフリートの呟きをなぞって。
掘るのを止めた手が、無意識に自身の胸元に触れる]
[がん、と。そんな音が頭の中に響いた気がした。後頭部は見事、廊下激突。元々霞のかかっていた視界に、それまでとは違う霞がかかった]
……ってぇ……。
[呻くような声を上げた所に、下に行ったはずの仔猫の声。何故にと訝りつつ、どうにかこうにか身体を起こせば、こちらは扉と激突したらしいイレーネの姿]
あ……ごめん。
[他に言葉が出てこない]
…大丈夫ですか? 少し、休みましょうか…
[冷えた手からスコップを離そうとするも][握る手がうまく開かずに]
[雪を見て、目を伏せて]
人狼は、いる……のですね
ー居間・階段付近ー
[彼はエルザの言葉に頷いた]
うん、歌はきっと良いと思うよ。
ここにいるみんなも、あなたの綺麗な声を聞けば、少しは落ち着けると思う。
ホットワイン作ってあるんだ、飲む?
[テーブルの上のカップを指し示す]
[衝撃のおかげで色々吹っ飛んだ気もするが、意識がはっきりとして。茫としていた思考が、僅かに鮮明になる。平時の調子を取り戻し始め]
何を、して……いるのかな……
[溜息を吐きつ、額に手を遣る。当然、まだ熱い]
………歩け、なかった……?
[指が凍り付いたように鈍く動くオトフリートの手。
それに気付けば小さく苦笑して]
俺よりも、そっちのが辛そうだな。
俺は平気だよ。これでも体力はあるつもりなんだ。
[休んできたら?と首を傾げて。
続く言葉には視線を建物…その向こうを見るように]
…いるんだろうな。
狼の群れなんて見たことなかったし…
他で騒ぎがないみたいだから、此処だけが被害に遭ってるみたいだし…
しまった!病人に病人の面倒見させるわけにはっ!
エルザ、果物もあるから、お腹空いたら食べててね!
[彼は慌てて、二階へ駆け上がっていく]
[大丈夫ですよ、と微笑んで。][ゆっくりと開いて、閉じて]
[繰り返して、あたためる]
一人でやらせるわけにはいきませんし…
何より、こうしていたいんです
[つぶやくように][思い出したくないと]
そう、ですね。
なぜ、ここが狙われたのでしょうか…
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