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[ 相手の様子にくすりと笑いを漏らす。]
はい、夢見が良くなかったようで。
気分転換にベランダに出ようと。
お見舞い……ですか?
くす…ありがとうございます。
名目と言われると困ってしまいますが。
[ 己の正体を隠そうと笑みを作り続ける。]
あァ、――もしや、聞いていなかったか
[ようやく気づいたとばかり、狐はわらう。]
彼にも困ったものだな。
伝えておいてくれたなら良いものを。
アヤメ嬢の事も、聞いてないンだろうな
[笑うロザリーへと手を伸ばす]
俺は、 知っているぞ。
――最初から。
[ 伸ばされた手に瞬き、首を傾げる。]
アヤメ殿のことは聞いています。
手を出さぬほうがいい、とは。
嗚呼、けれど彼のことをご存知だとは……。
最初から知っている、とは。
[ 伸ばされた手をただ見つめ返す。]
それは……どういう意味でしょうか?
[ 冷静を装うも、何処か動揺を隠しきれない。]
[抵抗もない。
その髪に触れる。すくう。]
わからないふりは、しなくてもいいぞ。
俺には何も言うつもりはない、 いままでのように
隠すのは、疲れないか――?
[ 触れられた部分を視線だけで追う。]
――――――…。
何も言うつもりはない…ですか…。
[ 信じていないわけではないが。]
女には秘め事の1つや2つあるものですよ。
まぁ、疲れはしますが。
ケイジ様。
全てをご存知のうえで私と話をされていると?
[ 笑みを浮かべた表情は先程までのものと変わる。
何処か奇妙で、何処か歪んだ、そんなもの。]
世界のことわりとやらを、
[その表情を見ても、狐の調子はかわらずに。]
壊す、のだろう?
目的は。
――そう、すべて、知っているし、知っていたさ。
[ 何処まで知っているだろうか。]
嗚呼、よくご存知で。
[ 隠す必要がないと感じたのか。
背中の羽根を大きく広げる。]
……私を脅しているのでしょうか?
知ったうえで、黙っているとは。
もしくは…またお戯れですか?
[ 気持ち悪い笑顔のまま訊ねる。]
脅し?
[くすりと、わらった。
背中の翼――色を見て。]
そんなことはしないさ、ロザリィ。
ただ、そうだな。戯れ――というよりも。
どちらが愉しいかとおもっただけだ
[ 納得したように1つ頷く。]
成程。
ごもっともな理由ですね。
[ 頷いた後、くすくすと嗤う。]
では、ケイジ様。
このことは内密に願いますね。
お約束頂けないなら。
その時は貴方様であろうと――――――。
[ その先の言葉は押し殺した。]
言っただろう?
何も言うつもりは、ない。
[くすり、わらって]
こわいことだ。
その時は、訪れないだろうが。
あァ、そうだ。
邪魔なら、手伝おう。――必要か?
[ 言うつもりはない。
綺麗な笑顔を浮かべて謝礼を。]
ありがとうございます。
そのお言葉に偽りがないことを信じておりますわ。
[ けれど、後に続いた言葉に思わずきょとんとしてしまう。]
お手伝い……ですか??
嗚呼、アヤメ殿は邪魔ですが…。
[ 手伝いという響きに不思議そうに話す。]
守護天将の血とはねェ。
[わらう]
そう、手伝いだ。
気をそらすなりなんなり、してやろうか?
そうすればお前もやりやすいかと思ってね。
守護天将の血……ですか…。
[ 面倒くさそうに溜め息をつく。]
…と言っても何をお願いすればいいか。
嗚呼、エリカ殿も邪魔ですね、そういえば。
彼女を消すことができたら、とは思っているのですが。
アヤメ殿の術を彼女から外せないかとは思っています。
[ 元より1人でもやるつもりだったが。]
噂話になっていなかったか?
[ゆるりと首を傾け]
なるほど。
アヤメ嬢はひどく、くるしむだろうなァ
[それは愉快げに]
そういえば……
お前たちを見つけられる者もいるのだったか。
あまりいい顔での会話ではなかったが。
噂…ですか…。
いえ、私は初耳ですね…。
[ 決まった人からしか話を聞いてないことを思い出した。]
―――――…。
私たちを見つけられる者ですか…?
そんな方がいらっしゃるのなら、早急に消えて頂かねば。
[ その言葉と共に羽根から黒いものが蠢きだす。
足元にぼとりと落ちた黒は居場所を求めるかのよう昇る。]
さて、いったい誰で、どんな力なのやら
[うごめく黒に触発されたか、狐の額のやみがうずく。
たかぶる感覚は歓喜か狂気か。
しかしそれを持つ男は、それすら愉しみ、わらう。]
どちらを……ねらう?
弱りましたね。
長老殿にまた脅しをかけておいたほうがいいでしょうか。
そんなものに惑わされるな、と。
[ くすくすと嘲笑う。]
何処を狙いましょうか。
今日はエリカ殿をもう一度、とは。
まぁ…失敗すれば彼のようになりますから。
どうしようかとは考えていましたが。
[ 左目に闇が差し始める。
それを隠すかのよう手を翳した。]
長老殿ね
[くつり、わらって]
扱いやすい、長老殿――
エリカ嬢は、うまく運べば、味方をしてくれるかもしれないな
ロザリンドまで封じられては詰まらないから、
そうはならないことを俺は願おうか
[隠す彼女を見透かすような、黄金の狐のひとみ]
味方…ですか?
[ 驚いてばかりいるか、今日は。]
なら、エリカ殿は残しておきましょうか。
詰まらない…ですか。
…私も封じられるつもりは全くありません。
全てをハカイし尽さなければなりませんから。
[ 狐の面をじっと見据える。]
[夜空を飛び戻るも、そこにオーフェンとアヤメの姿はなく。
天将の血脈に対するささやきに、事の原因を察した。]
『……なるほどな。
長老の問いとは言え、余計な事を口にしてしまった。』
[オーフェンの術を行使する前、ラスが暴れないかとの長老の問いにアヤメの力の縄があるからと答えた事に臍を噛む。
青年を戒める力が紫星であり己が術を使えぬと長老が知る以上、偽りを口には出来なかったのでは在るが。]
………皆早く帰れ。
堕天尸はまだいる可能性が高い。
[睥睨し集まる人々を散らせ、重い溜息を吐く。
足元に寄って来た疾風が小さく鳴いて角の根元を摺り寄せた。]
うまくすれば
或いは、な。
すべての破壊、ね。
そうなったその先が愉しみだ
[狐がわらう]
ではアヤメ嬢の気をそらしに向かおうか――……
………疾風、帰るぞ。
行かねばならない所も…あるのでな。
[慰めたいのか寂しいのか。
足元に纏わりついて離れない小さな体を抱き上げる。
円らな瞳が主の消えた場所を見つめ哀しげに鳴く。
その背を黙って撫で、聖殿を後にした。]
[夜空を飛び、ラスの家へ。
不安に暮れる家の者に、淡々と事実のみを連ねていく。]
……ラスは今、結界樹の中で巫女の側近く眠っている。
目覚めた時には元に戻っているだろう。
………しばらく風当たりが強いだろうがあまり気に病むな。
性質の悪い…流行り病にかかったようなものだ。
誰にでもなる可能性があり、命取りにもなりかねん病にな。
[慣れぬ言葉を紡ぎ、その心の負担が減るように願う。
最後に疾風の頭に手をやり、褒めてからその場を辞した。
向かったのは―――施療院。]
困りましたね。
どうしましょうか、今日は。
様子を見るのも一興かもしれませんね。
[ 海を眺めながら嗤う。]
嗚呼、ケイジ様。
お気をつけくださいね。
虚は、―――――大好物ですので。
[ 狐の面を指差す。
憎しみを嘲笑うかのように。]
─森の奥・両親の墓─
[森の懐の奥深く。
知る者の限られた、白の花咲く木の根元。
そこは、異邦人たる両親が眠りの場所として選んだ場所]
……っ……。
[そこまでたどり着くのが限界だった。
身体的も、精神的にも。
未だ花の開かぬ木の下に崩れるように座り込み、はあ、と一つ、息を漏らして]
……くっ……まだっ……まだ、崩れるわけにはっ……。
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