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[駆け出した黒猫は一度足を止め、鳴き声を上げる。
大きな目に映るものが何か、それは他者には知る由もない、けれど。
魂を視る力を持つ青年と長く共にあった黒猫にも、その力は伝わっているかも知れない。
黒猫は、青年の方を振り返り、高く鳴いて、また駆け出す]
ニーナも?
嗚呼、そう言えばヴィンセント先生が・・・・
『視えた』って、如何いうことですか?
[碧はただ青年を映すのみ。]
そうですか?
十分、驚いていますけど――
少し、慣れたのかも知れませんね。
ああ、すみません、何か余計なものが見えてしまって……昨夜も寝ていないもので、幻覚だったようです。
[振り返るレベッカの手を強く引く]
あの光は、この世で最も美しいものの放つ光。
さあ、傍に近付いて、良く見ましょう。
あなたも、きっと魅了されるはずですよ。
……すみませーん。
ええとね。
銀髪の魔術師さん、どこにいるかしってる?
え? さっきはいないって言われたけど
そっかぁ。
じゃあここのどこかにいるのかな。
[コーネリアスに強く手を引かれ、バランスを崩して階段でつまずき、舞台に手をついた。
黒猫の声が聞こえた気がして、振り返る]
ウィッシュ…?
説明すると長くなるんだが……。
俺は、生まれつきなのかなんなのか、魂の姿が『視える』体質でね。
ここの敷地内に、姿を消したり昏睡状態になったりした人たちがいるのが『視えた』って事さ。
……ま、約一名、違和感が付きまとうんだが、もしかすると、ここの空気と近いかも知れんね、その違和感。
[詳細を省いて説明する。
黒猫の声と、走り出した事には気づいていた]
慣れた……ねぇ。
それだけにしちゃ、だいぶ目が虚ろに見えるんだが……。
体調は、良くなったんだろ、確か?
そう、聞いたけれど。
……まぁさ。
見世物の一番すごいのって言うくらいだし?
厳重に注意しておかないとねー?
そういうもの、先に見たら悔しがるだろうし。
……ヘンリエッタを返してもらうように、いえるしね。
[黒猫の名を呼ぶレベッカの肩に手をかけ、耳元に唇を寄せる]
気のせいですよ…ここには動物は多い。
さあ、レベッカ……行きましょう。
あぁ、えぇ。
ニーナを…ヴィンセントさんとアーヴァインさんを、助けなきゃ、ね。
[再び目を半分閉じ、コーネリアスの言葉に頷く。]
・・・・そうだったんですか。
魂の姿が。
約一名、とは?
[あっさりと頷き、碧の眼を細め――]
ええ、気分はすっかり。
虚ろって、――そんなに変ですか?
[黒猫はぴたりと足とめ振り返り。
大きな瞳に少年を捉えれば、促すように短く鳴くだろうか。
微妙な焦りが、その声にはあるやも知れず]
昨日、呼び戻しに挑戦する、と言ってた当事者だが。
そして、どうやら誰も戻った様子はない……。
これは、俺の推論だけど。
……戻すつもりは、最初からなかったのかも、な。
ま、あの二人がどっちもサーカスの関係者だとしたら、ね。
魂抜かれたアーヴァインさんやニーナが、ここの新入り扱いで芸やってんだし。
[さらりと言いつつ、肩を竦めて]
まあ、元々ぼーっとしてるかな、って印象はあったけど。
……今の君の目、まともにこっちを見てるようには、ちょっと思えないかな。
うっわー、マジシャンさん。
思い人のいる女性の方をそんな風にするんじゃないって、教わらなかった?
あのね。
ヘンリエッタ、かえして。
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