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─回想・昨夜─
[自衛団詰め所でカルメンに引き合わされ、彼女も人であったと知った。
青褪め打ちひしがれる自分に、蒼鷹はただ寄り添って温もりをくれて。
けれど自衛団員たちは、人狼を見つけられぬことにあからさまな落胆と批判を向けてきた。
それに返す言葉もなく、ただ罵られるのを無表情に聞き。
けれど、ミハエルがカルメンを殺めたと聞けば驚きに目を瞠った。
その後、自衛団員に言われるままに宿へと帰り。
誰かにカルメンについて聞かれれば、人狼ではなかった、と言葉少なに答え、早々に部屋に戻った。]
ミハエル君、どうして…
[思い返すのは、カルメンと木陰で楽しげに話していた姿や、イレーネのおなかに触れ尊いものだと感じていた様。
決して、人を殺められるようには思えなかった。]
─宿屋・自室─
……そうか?
[笑みと共に返された言葉に、真顔で返しつつ]
そういう事。
……ま、中々当たりは引けなかったが、な。
[人数の部分には、頷いて返し]
ん、ま……そこらは、話せるようならな。
[そんな言葉を投げて。
食堂へ行く、というベッティとは別れ、部屋を出ると階段へと足を向けるが]
…………。
[別れ際に投げかけられた言葉。
ひとつ、ふたつと蒼を瞬き、そして]
……それこそ、お前に言われたくねぇよ。
[返したのは苦笑と、冗談めかした、言葉]
─朝/宿屋・食堂─
[ゲルダが着替えを望むなら先に部屋へと戻らせて。
その場合はイレーネに傍についていて貰うことになるだろうか]
[食堂へと降りて来たなら、ゲルダを座らせ休ませて。
自分はゼルギウスの傍へと歩み寄る]
さっきの話だが。
[紡ぐ声はゲルダには聞こえぬよう抑えたもの。
イレーネも共に居るなら、声は聞こえたことだろう]
───この怪我は、昨夜カルメンを手に掛けた時に付いたもの。
つまりは、そう言うことだ。
[直接的な言葉は使わず、怪我を持ち出して遠回しに伝える。
意図を飲み込めぬようなら、はっきりと告げるだろうが]
―宿屋・食堂→厨房―
[アーベルと別れてから]
こんなときに言えるようなことじゃねぇよ。
[自分の胸の中にあるものを見透かしてのことか、それとも一人でということにか]
アーベルにはいつも甘えてるつもりだけどな……
[厨房に引っ込み、朝食の準備をと、食堂に人が着始めたのはそれからのことだろうか]
― 宿屋/ユリアンの部屋前 ―
[ミハエルとゼルギウスの話を聞きながら暫くはへたり込んだままで。イレーネからも出るように促され肩を置かれ、娘は漸く立ち上がる気になったのか其方へと貌を向けて。]
ン……ごめんなさい
気遣わなきゃいけないのはイレーネさんの方なのに
[ゆる、と頸を横にしながら詫びを入れて。ミハエルからも手を伸ばされたのなら、娘は二人の手を取って起き上がった。
二人の手はとても温かくて、ユリアンやブリジットの様な冷たさとは違うから。一層娘の胸を熱くさせた。]
…ミハエル君も、ありがとう、ね
皆、辛いのに、僕ばっかりこうで…
[泪を滲ませる目許は細められ弧を作り。此処から出るように二人に見守られてユリアンの部屋を後にするか。ゼルギウスや他の面々とも会えば、一度だけ礼をして。]
― →食堂 ―
[あの少年が今どうしているだろうと思いながらも様子を見に行く事もためらわれ。
ベッドの上で膝を抱え、隣に添う蒼鷹の温もりをただ感じていた。
そうしているうち、何時の間にか眠っていて。
そして、朝。
部屋の外の気配で目が覚めた。]
……これ、って…
…っ……!!!
[昨日の朝と同じ目覚め方に、嫌な予感は募り。
着替えもせぬまま、外へ飛び出した。
ゲルダ達が丁度食堂へと向かったところだったろうか、誰にも会うことはなく。
もう何度嗅いだかしれない鉄錆の臭いの濃くなる方へと蒼鷹と共に向かった。]
[背の向こうで聞こえる咳の音。
昨日ミハエルから聞くまで知らなかった其れは
隠しきれぬのか既に何度か耳にしている。
青年は厨房で紅茶を淹れる。
食事を取る余裕もないかもしれない。
それなら少しでも栄養を取れるように、と、
ロイヤルミルクティーを用意した。
ミハエル、イレーネ、ゲルダ、と其々の前にカップを置き]
ゼルギウス、残さず飲めよ。
[ぽつ、と呟いてゼルギウスの前に置いたのは一見他と同じ。
けれど飲めば甘味を強く感じるかもしれない。
咳止めと鎮痛に効果があると言われる甘草を混ぜていた]
─ →宿屋・二階─
[階段に近づくと、二階からの騒がしさが届く。
それに、微かに眉を寄せながら、階段を駆け上がり]
……え?
[今、訪れようとした部屋に出入りする自衛団員の姿に、目を瞠る]
なに……が?[零れ落ちたのは、疑問の声。
とりあえず、団員を捕まえて、状況を問い。
ユリアンの死を知らされると──ぎ、と、唇を噛んだ]
……馬鹿野郎。
ジョーカーが、取られてどうすんだよ……。
[ユリアン自身のカードについて、はっきりと確かめたわけではない。
けれど、推測は出来ていたから、小さく呟いて]
……は。
こいつは本気で、全力勝負、か?
[呟く刹那、掠めたのは、一匹狼としての、笑み]
………あ…っ… !?
[丁度自衛団員がユリアンを運ぶところに出くわして。
シーツに覆われたせいで誰の骸かは解らぬものの、伝わるものは変わらなくて。
その場にへたりとしゃがみ込んだ。]
……どう、して……っ
[また、命が奪われた。
それはそのまま、自分の無力を責めるものになって。
傍らの蒼鷹の鳴く声も、耳には入らぬまま。]
─宿屋・二階廊下─
[思考を巡らせている所に届いた、声。
視線を向ければ、座り込むクロエが見えて]
……大丈夫か?
[行かねばならぬ所はある、けれど。
こちらも放っては置けないから。
近づいて、そう、と声をかけた]
―宿屋・厨房→食堂―
[ライヒアルトが姿を見せれば紅茶をと、そこは任せて自分は朝食の準備を一人していた。
彼が用意を終えて出て行くのを見送り]
今日は皆起きるの早いのな。
[他にも複数、食堂の方に会話の様子を感じる。
人数を確認して出した方がいいかと、自分が食堂に顔を出すのはライヒアルトからやや遅れてのこと]
朝食は食べるやついるか?
[ユリアンが殺された話を聞くのはそこでになるだろうか?]
― 宿屋/食堂 ―
[二人に椅子へ座る様に促されて。イレーネから夜着の儘だと指摘されると白の寝巻は所々紅く染まっていて。]
あ………そっか、さっきので…
[ユリアンの血が付いたのだと知ると、はっと貌を上げ。]
…えっと、僕、後で着替えてこようと想うのだよ
イレーネさん達、何度も言っちゃうけど…有難う、ね
[ライヒアルトからミルクティーを貰うと、有難うと礼を述べて。先日はスープしか口にして無かったからじわりと温かさが身体になじむ。]
あったかい…
ライヒ君…ミルクティー美味しいのだよ、有難うね
これ飲んだら一度お部屋に行くね
[寝巻についた血を隠すように服の生地を手で覆いつつ。
ミハエル達が話し込む様子は、視線だけを向けていた。
話す内容までは聞き取れずにいたが、内容は推して知るべしか。]
[自衛団員達はこちらに見向きもせぬまま遺体を運んでいった。
蒼鷹は心配そうにその身を摺り寄せてくるだろうか。
その身体を、震える手でそっと抱き寄せると目を伏せた。
そこに聞こえた声に、ぎこちなく顔を上げて。]
ベル、兄。
…だい、じょうぶ。
もうちょっと、ここに居たい、けど。
[震える声で、小さく頷いた。]
―食堂―
[ベッティの言葉に軽く瞬きして]
――…朝食はもうちっと後の方が良いかもしれんな。
ユリアンが襲われて――…
その現場を見てきたとこだから。
今頃、自衛団がユリアンを運んでるところだろ。
[彼女に向ける声は他の者を気遣って控えめなものだった]
私は大丈夫だから、ベル兄は皆のとこ、行って。
キーファーちゃんも居るし、少し、休みたいだけだから。
[本当はアーベルに聞きたいことがある。
けれど、それを問いかけてもしも彼に辛い思いをさせてしまったら。
自分の問いのせいで彼の身に危険が及んだら。
幼馴染を悲しませることになる選択は、取れるわけがなかった。
だから、ぎこちなく微笑んでアーベルを見送ろうと。]
─朝/宿屋/食堂─
[辿り着いたその場、席につけば近寄ってくるミハエル。
その唇から告げられる事実に、紅は一度大きく見開かれた。]
そう……―――
[頷けば、けふっと一つ咳が出る。
何を謂うべきか迷う間、妻の視線を感じ、一度紅は青を見、翡翠に向けられる。]
何かを得ようとすることは、きっと何か代償を払うということ。
ミハエル君がそこまでして手に入れたかったものが、
手に入ると佳いと思うよ。
[ただ、穏やかに、クロエに向けたと似た言葉を紡いだ。
ゼルギウスが望むのは、その代償は……―――。
運命の歯車が、望むままに回ってくれるのならば、護りたいものの代わりに、自らのもう幾許もない生を差し出したい、と。]
―宿屋・食堂―
[ライヒアルトからかけられた言葉、二階にあがったアーベルは帰っておらずそちらの方を見る]
そっか、ユリアンが……
[落ち込みながら少しばかり人の死に慣れてきたような、そんな感覚を感じて]
そうだな、朝食は後にするか……。
[そう返し、再度階上を心配するように見上げて一度厨房へと引っ込んだ]
……それ、と。
[過るのは、微かな逡巡]
……ごめんな?
なんていうか、お前にばっか、辛い思いさせて。
[死を多く重ねる事が、死に接する者の負担になるのは知っている。
実際、以前共にいた霊能者は、最後には発狂して死んでいったから。
それを和らげてやれぬ事への、謝罪を、紡いで]
ん、じゃ。
俺、ちょいと行ってくる。
急ぎでいかないと、ならん所ができたんで、な。
―食堂―
如何致しまして。
[礼の言葉には軽くそう返して。
ゲルダの紡ぎにゆるく頷く。
ベッティの返事には嗚呼、と声を返すが]
……あ、
[彼女を紅茶の席に誘おうとするも
それを言う前にベッティは厨房へと姿を消した]
─宿屋/食堂─
嗚呼、ありがとう、丁度喉、乾いてたんだ。
[ミハエルへ言葉を紡ぎ終えると、また咳を一つ。
それを喉の渇きの所為にして、ライヒアルトから差し出されるミルクティーを受け取る。
口に含めば、常より甘く感じるそれに、つっと紅が上がる。
音紡がぬまま、唇が『ありがとう』と再度動いた。
そして、ゲルダには、唯微笑んで首を横に振って見せる。
気にしないで、と。]
[離れ際、もう一度頭を撫でて、手を離し。
ゆっくりと踵を返して階下へと向かう。
右手はポケットの中のダイスを握り締めたまま、食堂へと顔を出し]
─ →食堂─
……っとー……ああ、いたいた。
[探す姿を見つけたなら、常と変わらぬ調子で声をあげ]
ライ、ちょっといいか。
……サシで、話したい事がある。
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