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[エーリッヒの腕に比較的大人しく抱かれていた猫は、ねぐらに増えた気配と匂いに耳をぴんと立てて前足に力を入れた。
まだティルの匂いには気付いていないが、隙あらば逃げ出して家の中に飛び込もうと首を下げる]
ああ、えっと。
[村には長く住んではいるが、普段は森に引っ込んでいるために、新しい人間を覚えるまでには時間がかかる。出かけた名前は喉で引っかかった]
……いや、お茶菓子貰いに来たわけじゃなくて、お届け物。
[視線で腕の中の猫を指し示す。
力を緩めた腕からは、猫が望めばすぐに下りられそうだった]
[傾けていた首を戻して、今度は縦に振る。
構わないらしい。
蔦の話にもう一度、考えるように頷き。
相手の動きを待つように、ゆっくりと目的に向けて歩き出した]
―通り→ ―
村の設定が変更されました。
[肯定の仕種に、こちらもとことこと歩き出す。
年齢のわりに小柄なためか、動きは忙しなく見えるかも知れない]
そういえば、今やってるのはどんな細工なのです?
[目的の蔦の場所へと向かいつつ、何気なく問いかける]
毬なしで虫もなしの栗を籠いっぱい、じゃからな。
[皿に釘付けのティルにそう言って、アーベルの悪態に目を細めた。ティルが隅に寄る様子には気づかずに皿を運び出す]
こらこら、お茶菓子は切れちゃいないさね。
おや、ツィムト。坊に連れて来てもらったのかい。世話かけたねェ。
[薄茶猫は開いた扉と緩んだ腕に、飛び降りてすり抜ける様に中へ]
[戸の向こうに立っていたのは森番の青年。]
よし。どうぞお入りください。
[お茶菓子を貰いに来た訳じゃ,の言葉に安心して中へと案内する。]
あれ、ツィムト?
どうかしたんですか?
[挨拶代わりに耳の後ろを掻いてやろうと猫へ手を伸ばした。]
いや、崖崩れなんてあったから。
独りで出歩いていると心配かなって、
[伸ばした少女の手を擦り抜け、駆けていく猫を見送る]
何か見つけたんかな。
[やる気のなさを漂わせているツィムトにしては素早い動きに首を捻った]
ああ、別に用事はないから、すぐに帰――
[る、と言い切る前に思い出したのは、口止めの約束]
いや、あった。
お邪魔します。
[ご近所でも愛想が悪いと評判の薄茶猫は、リディの手を易々と逃れて家の中。下手に手を出してたら、ティルに続いてツィムトにまで引っかかれていたのだから、ある意味運が良かったのか。
そして、縄張り侵入の泥棒猫へ、ツィムトは本日の鬱憤全てを込めて踊りかかった]
[背の高さの分、先に行きがちではあるが。
時折立ち止まりかけたり、一応速度を合わせるようには努めているらしい]
さっきの奴の、首輪。
[森まではそんな感じで、森に着いた後は逆にミリィについて行く形で。
問いにはそんな答え。
単語から邪推さえしなければ、猫のことだと推測はできようか]
[ウェーバーさんにお茶菓子のことを指摘されるとえへへと肩をすくめた。
食器を運ぶのに手を貸そうとそちらに歩み寄る。]
そういえば、さっき二人めの怪我人て言っていたけど、あの崖崩れで誰か怪我した人が居るんですか?
[手を動かしながら、その舌も休まることはない。]
[エーリッヒの呟きで飼い主はようやく猫の動きの理由に思い当たった]
あァ、いかんいかん!
これツィムト、おやめ!
坊は勝手にお邪魔してておくれ。嬢、お菓子じゃ。
[皿をリディに押し付けるようにして、猫を追う]
[歩調を合わせてもらって、どうにか遅れずに通りを抜け]
さっきの……。
[森に入ると、下草を踏み分けて進みつつ、ほんの少し思案の素振り]
猫さんの……ですよね、首輪。
[人に首輪、というのは普通はない、という突っ込みの入りそうな事を呟いた。
白い鳥が、突っ込むようにくるる、と鳴く。
その内に、たどり着くのは、蔦の絡まる木の所。
大小の葉が重なり、色と影のコントラストを織り成す自然の造形]
これ、なんですけど。
ね、綺麗でしょ?
[中に入ると予想外に中は賑やかで、保育園でも始めたかと思ったのは口にはせず]
ヨハナ婆、ギュンター爺に告げ口した――
[投げようとした台詞は、それより真っ直ぐ何処かへ向かう猫に阻害された。
その上、少女の問いの答えを思い切り指し示されて、ぱちり瞬く]
……わわ。
いたずらっ子なんだ、ツィムトってば。
[突然押し付けられた皿をそれでもしっかりと受け取って、ウェーバーさんを見送った。
来訪者を振り返り、軽く首を傾げるとお茶の準備を続ける。]
あ、ヨハナおばあちゃん。
えーと、
……なーむ?
[誰に対してだかはわからない。]
[それからさっきの、お菓子をいただいていた部屋に戻る。]
[まだ紅茶が残っている。]
ちょィとアーベル、見てないでお止め!
[楽しげに見ている青年に声を投げて、薄茶猫に手を伸ばす]
あァもう、ツィムトおやめったら。
今日はお客さんなんだよ!
[猫を追って行ってしまった家主の、問いに対する答えに再度来訪者を振り向く。
目を瞬く金髪の青年をなぜか尊敬の目で見上げ、矢継ぎ早に質問した。]
貴方が怪我したの?
崖からおっこちたの?
崖が崩れるところ見た?
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