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[ちらちらと視界を過ぎる肌色が何だか分からなくて、指先を伸ばしてみました。
触れることができたなら、それが手だと分かるのでしょう。]
色は、見えますから。
慣れれば、大丈夫だと思います。
[こくりと一つ*頷きました。*]
[完全に見えていないものだと思い込んでいたために、伸びて来たニーナの手が自分の手に触れたことに驚きの声を上げる]
わっ。
何だ、完全に見えないわけじゃないのね。
うーん、色だけ見えると言うのも不思議な話ね。
目が見えないと言うよりは、視力が弱いってことかしら。
[伸びて来たニーナの手を両手で包み、軽く握手をするようにしてから解放する]
番人
[すぐに見える灯りの元に居るアーヴァインに声をかける]
[新しい客人は地下へと男は聞いた]
――地下?
そこまであるのか
[足音が遠ざかっていった方向を見る]
[番人にはそれ以上言葉をかけなかった]
[男は手に灯りを持つことなく、そちらへと向かった]
[放置しかけたところで返る呻き声に舌打ちし、体を揺する]
おーい起きろー。
気付けはねーぞー。
[気の抜けた声を上げながら意識の有無と首筋の脈を診る。濃藍の青年と焦茶の男はどちらも闇に馴染んで見え難い]
あ゛ーどうすっかなー。
やっぱ気付けを取ってくるのが先だよな…おっと、
[薄灯りが見える]
[闇の中を動くのは慣れているのか、男の足取りに迷いはない]
[薄い燭台に導かれながら、隻眼の男は床を踏んだ]
[どこかへ向かうにしては、その灯りの場所は変わらない]
[相手が押さえた足音を捉えるだろう頃に、男は声を投げた]
――何をしている
手が必要ならば貸すが?
[泉に反射する緋色の群れを、足音ひとつ立てずに歩く。
周囲に響くのは、ざわりと揺れる花の音のみ。]
――……ああ。
[溜息をついた刹那、男は跳躍する。
彼はその動きの名を全く覚えていない。
しかし、其れは確かに「グラン・ジュテ」と呼ばれる跳躍ではあった。
――彼にその「理由」となるべく理由は無い。
しかし緋色に突き動かされたかのごとく、男は暗闇の中で一心不乱に踊っていた。まるで、祈りを捧げるように。]
んー、行き倒れを拾ったってところかね。
手は喜んで借りるぜ。
ここら辺に倒れてるから踏むなよ。
[動揺の欠片もない声に振り向かずに話し、四つん這いでナサニエルを超える。転がった蝋燭を拾うと高く掲げた]
うっわ、顔色悪いなー。
やばいんじゃねえの?
だいたいどこにいるかは、判る
[照らされた顔を見て、黒紅が細められた]
[歩を進め、二人へと近付く]
一人で運ぶのは無理だな
変に疲労を溜めるのは、望ましくない
どこかに運ぶか
お前は良さそうな場所を――知るわけがないか
[蝋燭を持つ男へと、倒れた男から視線を変えた]
[しばしの間、舞踊の動きを続けているうちに、男ははたと気づいて動きを止めた。左目に巻かれた眼帯の奥が、やけに疼く。男の肌には汗がうっすらと浮かび、花の緋(あか)と混じり合って消えた。]
なんだ、ここは。
違う。――…何故、俺はこんなことを。
[彼の眼前に、古い城が見える。
眼帯の奥の疼きが、その場所を見据えた。]
[男は、疼きに操られるかのごとく動きだし――…古城の中へと吸い寄せられた。]
[離れる前ナサニエルが呟いた名は欠片しか耳に留まらない。唇の動きも胡乱な目が闇の中見たかは定かでなく]
じゃ、俺は気付け取ってくっからよ。
アンタはコイツ運んで…あ゛?
[面倒ごとは押し付けて酒を取りにいこうとする前に言われた声に渋面になる。無視して行くか愛想を振っておくか考え、結論は強面の男に逆らわない方]
…わーったよ、手伝えばいいんだろ。
場所なんざ知るわけねえよ、今来たばかりだってのに。
運ぶだけ運んだら後は任せたからな。
[古城の中には、ひとりの男が居た。
彼は、「番人」と名乗って居た。
彼は、この地が何であるのかについては、特に何も語らなかった。
そしてこの舞踏家も、この地が何であるのかについて、特に問うことは無かった。]
[いくばくかの会話の後、彼は古城の奥に案内される。
蝋燭の光が静かに揺れるのが見えた。城の中に、人が居るのだろう――…静寂の中に、人の熱が揺らめき、踊るのを、彼は強く感じていた。]
気付けか?
お前はアルコール臭い
[ナサニエルに手を伸ばす]
[言葉は聞き取れず、仕方ないと二人がかりで広間に運ぶことにした]
己よりもこういうのを看病しそうな奴らなら居る
運んだら探しに行け
酒は逃げないんだからな
[手に触れた瞬間、声が上がりました。
わたしが何か悪いことをしたのでは、と不安も過ぎりましたが、ただ驚かれただけのようです。]
ええ、そういうことで――?
[答える最中、わたしの手は暖かくなりました。
相手の手に包まれたのだとは、すぐに感触で分かったのですけれど。
急なことにびっくりして、ぱちぱちと瞬きました。
そうして手を離された後に漸く気がついたのですが、暖かな紅茶と、クッキーの香りが部屋に*漂っていました。*]
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