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……お仕事の話?
んじゃ、邪魔しちゃダメ……だよねぇ。
[こてり、と首を傾げて。
落ち着かない様子に、持っていたランタンを一度、下へ置き。
肩には手が届かないから、なだめるように腕を軽く叩いてみた]
ん。
[少女に声を掛けられ、振り向く。]
はい、アナちゃん?
[見れば、傅く騎士の姿はなく]
おや、どうしたんでしょうか……
[視線を彷徨わせると、ゲルハルトは丁度ホラントを従えて木立へ入るところ。]
[刻まれる円舞曲に、舞う紅の衣を見つけたのなら、そちらにも、にへらと]
ツィンカくんもキレイなのだよ、うん。
あれだね。
旅人として、僕も一芸身につけるべきか悩むところだねっ!
[普段よりも抑えた声は、未だ紡がれる歌に配慮して。
そうして、また微かな声で同じ歌をうたう。
ルイの視線に気付いて、少しだけ照れたような笑みが浮かんだ]
[ゲルハルトとホラントに気付かず。
口を尖らせたまま、遠くを見つめていた]
そりゃあ、あたしもびしょ濡れになりたくない、けど。
だからって、イゾルデがびしょ濡れになっても良い、ってことじゃない、よ。
[カタ、と、手の中のランタンを揺らし]
どうしても、って言うなら。
川よりもう一歩。こっちで歩いて。
―小川―
さすがは詩人さん。
[月下で歌うルイを見て、少しの間聞き惚れた]
でもヒルダさんも上手だね。
[小さく口ずさまれる歌を聞き、ヒルダを振り向きにこりと笑う。
深刻そうな空気にはまだ気づかないままでいた]
・・・ええ。
直にお話は終わりますわ・・・
[「邪魔しちゃダメ」との言葉に頷きを返し。
ランタンを置く様子を眺める。
そうして少年が腕を軽く叩いてくる仕草に、目を丸くして]
・・・ありがとうございます。
[少し落ち着いた様子で、礼を囁いた]
こんなに月が蒼い夜は 不思議なことが起きるよ
どこか見知らぬ森の中で さまようわたし
[再び伏せる瞳。
肩の青はぱさりとひとつ、羽ばたいて]
[――間近のアナは気付くだろうか]
こんなに月が蒼い夜は 不思議なことが起きるよ
[ただ月光を浴びているだけにしては。
随分と鮮やかに銀糸が煌いていることに]
[告げられた言葉に頬を掻こうとして、ランタンで手が塞がっていることに気付く。
少しランタンを掲げる形になりながら、続く言葉に観念したよに頷いた]
分かった、そうする。
[小川から一歩陸地の位置に立ち、これで良い?とマルガレーテに訊ねた。
掲げる形になったランタンの光が、柔らかく微笑む表情を照らす]
だよね、難しい話ばっかりじゃ、疲れちゃうし。
[にこぱ、と笑ってこくこくと頷く。
落ち着いた様子の礼の言葉には、照れたように頬を掻いてから、またランタンを手に取った。
ふわ、ふわり。
光が揺れる]
― 小川傍の木立 ―
[子供らや、若者達の声が届かぬところまでくると、ホラントに話しかける。]
さて、ホラント君。
君には礼を言わんとな。
[言葉とは裏腹に、先程よりさらに険しい顔でホラントをねめつける。
ホラントの目が丸く、丸く開き、口がぱくぱく、ぱくぱく動く。
もう…あぁ、もう、我慢できない。]
[こんなに月が蒼い夜は 不思議なことが起きるよ]
……
[繰り返される一節に少女はぽーっと見惚れながらも
ぼぅやり月を見上げた。
銀月が柔らかく空に浮き、微笑んでいる。]
……?
[ゆっくり詩手に視線を降ろすと。
ようやくその銀糸が月光を浴びている以上に、
自ら煌くかの様な鮮やかさを放っている事に気付く]
『あっははははははは!
びっくりした?びっくりした?
もう、おにーちゃんってば金魚みたいな顔するんだもん。
"おじさん"の真似するの無理だよぅ。』
[騎士が騎士ならぬ高い声でケラケラ笑うと、
騎士の背からふわりと舞う金の粉。]
『おにーちゃん、皆を集めてくれてありがとう。
お礼に、おにーちゃんから宴に招待するよ!』
[王に授かった呪法を唱えると、ホラントの足元に円く穴があいた。
穴は様々な色が混ざり合い、虹色に輝く。]
愛することは信じること
[跳ねる音色。
僅かに変わる曲調は音の終幕に向けて]
いつかその胸に抱かれ
眠った夢を見る――
[外套に隠れた唇が紡ぐ音は長く伸びて消え。
リュートが響かせる音色もやがて途絶える]
[音の余韻を残す中で、ふ、と吐息のような声]
[アナの小さな声に同意するように、小さく頭は頷いて。
肩の青も、ち、と声を上げた]
[…イゾルデから了承の声が聞こえると其方の方へと向き。
此方へと一歩歩いてくれば、小さく頷いて]
…うん。
それで、良いよ。
[ようやく微笑を浮かべた]
大体。沿って歩ければ良いんだから。
わざわざ、危ないところまでギリギリじゃなくても。良いよ。
[其処まで言って、ふと気付いたのか。
自身もまた一歩、川から遠ざかった]
[調子の変わった旋律がまた戻る。
耳を傾けながら、視線は木立の奥とこちらを交互に動いた。
マリオンの持ち直したランタンの明かりが目の端で揺れる]
不思議なこと・・・
[不安よりも不思議な気分になってくるのは歌詞の為か。
無意識に言葉を辿り、銀の髪を照らす銀の月を仰ぐ]
[トン、と騎士の身体で背を押すと、ホラントの姿はあっという間に穴の中。]
『いってらっしゃーい!』
[彼を見送ると、咳払いをして厳つい顔を作った。
虹色の穴はもうなく、代わりに残るは茸の輪。]
[先程までの見惚れる視線では無かった]
……ぁ
[ごしごしと擦り見ても確かな鮮やかさ
思わず小さな声が漏れてしまった]
…
[けれど大きな声をあげてしまえば煌きは失われそうで
此方に応答する様な頷きと青の、ち、という声。
こくり、と喉を鳴らし、凝視。]
それはそうなんだけどさ。
川向う確認しながらだと、ついつい川の方に寄っちゃうかな、と思って。
[言いながら、川淵から少し離れたところを歩き始める]
そうそ、やっぱマルガレーテは笑ってる方が可愛いよ。
拗ねてる顔も可愛いけど、笑ってる方が断然良い。
[ようやく見れたマルガレーテの微笑みに満足げに笑んだ]
―小川―
[はたた、とどんぐりまなこをしばたかせたのは、褒められるとは思ってなかったから。
首を横に、ふる、と振って]
本職には負けるのさっ。
[終わり行くうたを惜しむように、自らくちずさむのを止めて、うたいびとのうたを聞く]
不思議なこと、うん。
きっと起こるのだよ、こんなに月がキレイなのだからして。
[にこ、と、微笑みをクルトに返す]
[きら、きらり。
金の強さを持たない静かさを湛えた銀]
[その髪から同色の粒子を仄かに零して]
……秘密。
[アナに向けて立てた人差し指を己の口元へ。
枯草色の外套は襟元が下がり、僅かに弧を描いた唇を晒す]
『宴へようこそ!』
[ちっ!]
[青の声と此処にはいないはずの女性の声が
彼女にだけ届く高さで重なる]
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