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[未来、未来。
繰り返される単語が耳元を過ぎる度に、胸が痛い。]
自分の未来があるのなら、大切にして。
護りたいものがあるのなら、護り抜いて。
いきたいように、いきて。
選べるなら。
[それは、イレーネだけに向けたものではなく。
それと、己のしようとしていることは、真逆だけれど。]
見えていても、届かないんだよ。
だって、わたしは、縛られているから。
出ようとしても、駄目なの。
その中で、いきるしか、ない。
[知らず、拳を握っていた。
冷たいのに、熱い。]
[アーベルの言にはこくり、と頷いて。
未だ収まらぬ興奮をどうにか抑え付けながら]
奪わなきゃ護れないなんて、そんなの違うもん。
ここは、私が今までいた所と同じ。
空気も、空の色も、皆が喋る言葉も、アーベルがいる事も。
だから――何も違わない。
貴女が何を言ったって、誰が何と決めたつもりだって、
世界は何も違いやしない。
[気丈でいられるのは血が上っているから、そして、
傍に心強い人がいるから]
次は、止めない。
[こちらとて、容赦も躊躇もするものかと]
臆病なお子ちゃまに出来るのかしらね。
一応、楽しみにしてるわ。
[不敵な笑みは消えない。
アーベルのことで翼をばたつかせるイレーネを見れば]
あはははは!
面白いわぁ。
そうねぇ、アナタからアーベルちゃんを奪うのも面白そうだわ。
アナタの傍からアーベルちゃんが消える。
アナタはどんな表情を見せてくれるのかしらぁ。
[クスクスとさも楽しげに笑う]
その甘い思考がいつまで続くかしらね。
直に理想と現実の差を突きつけられて絶望するに決まってるわ。
精々頑張ることね。
[きっぱりと言い切るアーベルの言葉には]
あん、つれない。
そう言うところもゾクゾクするんだけどぉ。
[楽しげな笑みは絶えない]
敵対するアタシとアーベルちゃん…。
まるで古の物語にあるロミオとジュリエットよね…!
[どこかへトリップしたような表情。
その表情は恍惚としたもの]
あーん、テンションが上がってきたわぁ。
でもそろそろ休まないとアタシも体力が持たないわね。
次に会える時を楽しみにしてるわぁ♪
[残る者達に視線を向けて。
アーベルに対しては投げキスのおまけつきだったが。
分散していた影を足元に集め、その中へと沈み込んでいく]
届かないなら、ずっと見ていれば良いんだ、よ。
私、空が欲しくて欲しくて――仕方なかった。
でも、外に出られたって、空には届かなかった。
欲しいよ、欲しいよって。
思っていれば、想い続けられる。
[井の中の蛙は大海を知らない。
でも、空の青さを知っている。
眺める幸せ、いつか――と思う強さ]
選ぶんじゃない、もん。
向かう、んだ。
選択肢なんて一杯ありすぎて。
その中で、向かうのは一つだけ、だから。
[心底可笑しそうに笑われて、さっと眼差しが冷える]
面白さで動く貴女は。
きっと、温かさで動く事なんて――できないの、ね。
そんな人にアーベルは絶対、消させない。
アーベルには、私より確かなみらいを持ってる。
だから。
[アーベルが消えるくらいなら――]
空はね。
知っているの。
知っていたの。
でも。
翼を失って地に落ちた鳥は、もう飛べない。
翼を与えられても、落ちるのが怖いから。
だから、鳥籠の中だけで暮らすの。
見ていることすら、辛いから。
想い続ける強さは、もう無いよ。
――選択肢も、ね。
[握り締める端末はお守りのよう。
鈴が、場違いな程に軽やかな音をつくる。]
……ああ、もしかしたら。
これすら、まやかしで、
まがいものなのかも、知れないね。
[沈む影を見送ることすらない。
深く深く、己の思考に捉われて。
揺らぐ水面を見つめている。]
[沈み込む影には最後まで敵視を投げたまま]
落ちても、翼はまた与えられたのに――?
落ちても、生きているのに――?
雛は落ちる事を知らないから、飛べるのかな。
落ちる事を知ったらもう、雛から大人になれないのかな。
眺めるだけでも想いは続く、よ。
辛いと思ってるなら、想いは続いてる、よ。
もう飛べなくても、夢の中でも飛べるなら。
飛ぶ夢を思い込みでも見れるなら。
それは幸せだよ。
[まやかしだとか、まがいものだとか。
言葉の意味は分かっただろうか。
まやかしでも、まがいものでも。
感じる事ができるなら幸せときっと彼女は言うだろう。
夢を思い込みでも見れるなら幸せ、と言うのだから]
そうだね、いきている。
なんで、いきているんだろうね。
[笑みがつくられる。
おかしいわけではなく――それは、自嘲のようだった。]
雛には未来があるもの。
だから、また、飛べる。
落ちることを知っても、未来を信じられるから。
[ふっと、表情が失せる。]
しあわせだよ。
――しあわせだった。
[それでも、ブリジットにとって、夢を夢と知ってしまえば、それは崩れさるものだった。知りたくなどなかった。]
さっき、いきなきゃ何もないって、ブリジットは言った、よ。
だったら別に――いきてる理由なんてどうでも良く、ないの?
いきてる中に何かがある事が幸せだから、
“いきなきゃ何もない”って言ったんじゃないの?
いきてても何もないから嫌なら、死んじゃえば良いのに。
死んだ後の世界が何もないとは、決まってないもの。
でも、それをしないブリジットは。
何かを夢見てるように見える、よ。
[不思議そうに、心底不思議そうに首を傾げた]
羽根をなくしたらみらいがなくなるなら。
羽根のない生き物はどうしたら良いのかな。
羽根のないみらいだって、沢山あるんじゃないのかな。
[答えたのは、それだけ。]
わたしの道は、ひとつだから。
わたしは、「約束」を守るよ。
[交わされる会話は、ちぐはぐで、場違いで。それでも、少女には、大切な意味があった。
自らに言い聞かせるように紡いで、口を閉ざした。
無機質な足音が、遠くから響く。
「遊戯」の一つの終わりを知って、
*敗者の未来を奪うために。*]
――どうして、知ってるの?
[不思議は続く、何処までも]
死んだ後の世界に逝った人は、冷たいけど。
それは、外から見たものだもの。
どうして、知ってるの?
本当に――冷たいの?
[答えは返ってきただろうか、こなかっただろうか。
どちらにせよ、何処か納得のいかない表情で]
どうして、道しか歩けないと――言うんだろう。
ブリジットも、オトフリートも。
わかんない。
[話の区切りがつけば、アーベルの後に着いてその場を*後にした*]
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