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[『人狼がイヴァンを襲った、だから人狼は居るし、イヴァンは人だ。』
そう言えればどんなにいいだろうかと思ったが。
それは注意深く伏せられる。
未だ、印は彼の元に。]
[恐怖に麻痺したような頭。けれど、ほんの一部澄んだ部分がこう告げていた。]
[これでイヴァンについては片付きそう。]
[彼の、ゼルギウスの懐から、毒の匂いがする。きっと、彼は使ってくれる。]
[問題は守護者と…もう一人の「見極めるもの」。守護者の方は、まだ見つけるのに時間がかかりそう。]
[なら…。]
[ナターリエの返答に幾分か緊張した面持ちで]
ああ、だけどまたすぐに出て行くことになりそうだ。
[3人を手で制しながら]
そこで待ってろ、ちょっといってくる。
[広間の方を示してから、
広間へと向かった。]
そう、イヴァンも言ってたね。
信じなきゃ。
[ナターリエの結論。
それに、ふ、と思い出したかのように呟く。
抑揚に欠けた声は、さして大事な事でもなかったかのようにその言葉を紡いだ。
広間の方から聞こえてくるのは、いっそ怒号のようなものに変じ始めていて]
…しかたないよ。
行かなくて、いいの?…行って欲しいわけじゃないけど。
[マテウスの謝罪の言葉に、首を振ったあと。
こちらに近寄ったマテウスに問いかけた]
[よろけた子供へと伸ばす手は、自然と動いた]
手を出さずとも、一つは終わる。
[確信に近い、言葉。
それからでも、……構わない]
[階段を降りた先。
見える光景に、舌打ち一つ]
……なに、やってんだ……バカがっ……。
[苛立ちをこめた呟きは、何に対してか。
向けられた視線。
それに、当人は気づかず。
気づいたのは肩の猫。
長い尾がゆらり、揺れた]
力に飲まれ、本来なら無いものを見たんだろう!
[相手の叫びには叫びで返す]
[振るった短剣は予想に反し、的確にイヴァンの身体を捉えた]
[刃を振るう表情に躊躇いは無い]
[自分は為すべきことをしたまで]
[ベアトリーチェを護るための行動を──]
[ウェンデルの言葉に、子供は濡れた指先を降ろし、もう一方の手で、差し出された腕を掴んで、立ち上がった]
そう、ひとつ、終わる。
[うっとりと、囁く]
[ゲルダの視線に大丈夫だというように笑って返す。
広間に入り]
おいっ、どうしたっ!?
[聞くまでもなく。見ただけで状況は明らかだった]
イヴァンっ!ゼルギウスっ!
待てっ!早まるなっ!
[静止の声など、もはや彼らの様子から届くとは思えなかったが]
[駆けつけた広間。
混沌とした状況を解するのには時間が足りず]
待て!
[見えた刃に、理解追いつかぬまま部屋の中に踏み込む。
後ろから追いかけてきた同居人にも。そこに向かった視線にも。気付く余裕などあるわけはなく]
[最期に残ったのは]
[凄まじい形相]
[死してなお殺意を撒き散らすかのような]
[憎悪に満ちた]
[そう、ここに来る前の、朗らかで人なつっこい彼の面影を一切忘れてしまいそうなほど]
……っ!
[イヴァンに食い込む、刃。
揺らぎ。
いつか、どこかで感じたような感触]
……これ……は。
……レーネ……?
[真なる力を持っていた少女。
対成す力あるもの。
彼女が傷つけられた時に感じたものと、同じような──]
っ!
止め……っ。
[声は、痛みに遮られ。
その場に、がくり、膝を突いた]
ベアタを手に掛けようとする奴はユルサナイ。
[毒に神経をやられのたうち回るイヴァン]
[冷やかな真紅が彼を見つめ]
[再び刃を振り上げた]
逆らう者には──死を。
[確実に止めを刺すために]
[毒を滴らせる刃は再びイヴァンを襲った]
[真っ直ぐに振り下ろされるその先は──心臓]
[ゼルギウスの短剣がイヴァンを捕らえるのがはっきりと見えた]
ゼルギウスっ!
[イヴァンにエーリッヒが駆け寄るのを見て取り自分はゼルギウスの方に、
とつめて刺激しないように注意をしながら]
ゼルギウス、俺だ、わかるか?
[ゼルギウスの正気を確認するようにそう尋ねながら、
倒れたイヴァンの様子を伺った]
それは…そうだが。
[被害の事を言われれば、戸惑いの色を返す。
ただ戸惑う理由は『言えない事』が主要因だが。
老婆にどう映ったかは分からない。]
まだここに来て数日しか経ってないから、そう決め付けるのも早いと思うけれど。
[軽い混乱。返答にそう、言葉を濁す。]
…何かって、何を?
[問いを順に返す頃には、喧騒が更に大きくなっていく。
マテウスが向うに行ったようだったので、気をつけて、ともいえずただ見送り。]
…とにかく。いくら考えても、イヴァンを信じてる。
結局そこになるんだ、婆。
…ヨハナ婆は、イヴァンを信じてないんだな。
[そうぽつり返した。
その当人が、消え行く命だと。そんな事は知るよしもない。]
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