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―広場―
[広場に着いたのは、青年よりも遅かったかも知れない]
さてと。
[取り敢えずは露店のある方向を目指し、歩いて行く。
――人の波に紛れながら、友人を見たのは一瞬だけのこと]
ミューラさんが愚痴を聞いて貰う側なんですか?
それはちょっと、意外な感じですね。
[軽い物言い。
奇妙だと指摘しているつもりは、当人にはなかった]
……ほんとうに、平気?
[じっと、カヤを見た。
少女を見つめる翠眼に映る少女自身の姿。
カヤにとっては、どう見えることか。
伸びて来る手を避けることはなかったけれど、]
――っ、
[声をあげず眉を顰める]
ほうほう。なるほど。
[ハンスから一連の答えを聞くと、うんうん頷いた。
そして、すぐに頭をひねると]
カヤ……カヤねえ。
どうも犯人像とはあんまり結びつかねえな。
[やはり信じられないようで]
変身する魔法とか、変身怪物とか、そういうの無かったっけ?
そういうのでなきゃ、アタイが見たカヤと、犯人が同じ存在に思えねえ。
……ああ。急いでんだよな。悪い、引き止めちゃってよ。
[苦笑しながら、最後にそう締めた]
……ん、と。
[今いる場所から、姉の姿は捉えられず。
それでも幾人か、見知った顔が見受けられて。
とりあえず、無駄なく事情を聞けそうな、と思うと、やはり限られるわけで。
歩みは自然、噴水の方へと向けられた]
[エルザの翠眼に映る自分の翠。
更にその中には翠眼が映りその中には更に。
その奥を覗くようにして、一瞬泣きそうな顔になる。
が、彼女の手に触れれば眉をひそめたのに
弾かれたように、手を離した。]
…――ぁ、
[眼を見開いて言葉を失った。]
[カヤの返答を聞き一瞬暗い表情を浮かべたエルザには苦笑いを浮かべ]
あー…………もしかして心配掛けちゃいましたか
うん、大丈夫です。愚痴も聞いてもらいましたし
[愚痴ってレベルじゃなかったが、それは置いといて
意外と言われて首を傾げると]
…………そうですかね
まあ、私も人の子ですから。愚痴を言いたくなる時もありますよ
─広場・噴水傍─
[粗方の情報を読み終わり、紙片は丸めて左手に持つ]
[大分短くなった、紫煙を立ち上らせる手巻きタバコ]
[調べるに足る紫煙は広まったことだろう]
[しばらくは通常の一服のように]
[紫煙を吐きながら隻眸を巡らす]
[声を響かせていた青年の姉は最初の場所には居らず]
[行商人と女剣士が話をしているのが見えた]
[別へ隻眸を向けて居たためか]
[友人の姿を人の波から見つけることは出来なかった]
[人込みの中のライヒアルトには気づいたか、否か。
肩の相棒は、一瞬そちらに視線を流したやも知れないが。
ともあれ、蒼が黒衣を捉える事はなく]
……なんか、空気が重いみたいだけど。
なんか、あったの?
[右手を上げるヴィリーの近くまで行って、足を止め。
投げかけたのは、短い問いかけ]
―広場・噴水より少し離れた場所―
結びつきにくいのは分かります。
さっきの通り、俺も本人からはそう受け取れなかった。
ただ状況的なものがどうしてもね。
[変身魔法と言われれば眉を寄せて]
そうしたものを考えていたら、キリがありません。
確かに可能性がないとも言えませんが。
……いや。
多分追いかけても無駄でしょう。
エルザがカヤ君を疑えているとは思えない。
それで俺は、こうですからね。
[手のことも気になったが]
[行っても逆に意固地になられるのだろうと]
[苦笑交じりの溜息が落ちた]
─広場・噴水傍─
ああ、ちょいとな。
[そう言って、聞こえたままのことを青年へと伝える]
[青年の姉が、連れて行くなら自分を連れて行けば良い、と言ったことも]
それでハンスが止めに行ったが、その後どうなったのかまでは知らん。
[視線はすぐに逸らされて、目指す方向へと歩いて行く。
途中ですれ違った青年と隼には気づかない。
そうして暫く歩いたところで、大柄な剣士と行商人の姿を見留める]
…。
[少し考えて、そちらへ足を向けた]
─広場・噴水傍─
……て。
[端的になされた事実の説明に、言葉が失せる。
蒼は僅かな焦りを帯びて、周囲を見回すものの。
捜す姿は、人込みの先で捉えられず]
なに、それ……何考えてんだよ、一体……!
[とっさ、口をつくのはこんな言葉]
[ゲルダの疑問への答えはあったが、今は紡がない]
うん。
[カヤの台詞に、微笑む]
……よかった。ありがと。
[親指の腹が、目元を擽るように撫ぜる。
言葉とは裏腹に、泣くことを促しているようだった]
[気まずいと思っていたが、なにやらほっこりした空気に]
(…………んー、これはこれで居辛いなぁ)
[とりあえず、二人の世界が出来てるような気がしたので、静観]
─広場・噴水傍─
どうもカヤってガキについてで自衛団員と揉めたらしい。
その流れで、あのガキを連れて行くぐらいなら自分が、と。
何を考えてそんなこと言ったのかは、本人にしか分からん。
止めに行ったハンスなら何か聞いてるかもな。
[青年の動揺も無理はないな、と]
[流石に口にはしなかったが]
性格とかじゃなく、状況が、か。
まあ……確かにそのほうが正しいんだろうけどね。
女は裏にいくつも顔を持ってる。なーんて言うしな。
[まるで自分が女性であることを忘れたかのように言い放った]
けど、それでも、アタイはカヤが犯人ってのは信じらんねえ。
もし、仮にそうだったとしても、自ら望んでやったんじゃないって信じるよ。
例え、その答えが誰に間違ってるって言われてもな。
[言った後に、ため息がこぼれるのを見ると、もう一度苦笑した]
アンタと、エルザの関係はアタイにはよくわかんねえけど、まあ、頑張れ。
応援はしてやるよ。それとも、精神注入代わりに飲みにでも行くかい?
…――――
[手を掴むと眉をひそめたのは、何かあったのだろうか?と想い
少女はエルザの手から離した手を、彼女の二の腕に触れられて。
眼元を撫でる手が優しくて、泣きそうな顔で見上げ、く、と一度下唇を噛んだ。]
…オレ…
[小さな呟きの後、目線をゲルダへと流し、ぱちぱちと。]
─広場・噴水傍─
カヤのこと……で?
[蒼を一つ、瞬く。
わかっていない事の方が、きっと、多いけれど
気持ちが全くわからない、とまでは、言わないから]
……そういう、問題……かよ。
[言えたのは、ただ、こんな言葉だけ]
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