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なんてことない……。
涼が、俺を頼っていたんじゃない。
俺が、涼を頼っていたんだ。
それだけだったんだ。
[フラリと歩き、自分の居場所だったはずの空間を触れようとすると、フ……と同化しそうになる]
畜生……。
なんで……気づいてしまったんだ……。
[眼から涙が零れ落ちた]
気づかなければ……俺は、俺のままで生きていくことが出来たのに……。
ずっと、涼と一緒に生きていくことが出来たっていうのに……。
っ…──!
い、や。
しん、じゃ、やだ…!
[史人達の名を出され、大きく瞳を見開く。震え、目を合わせる蓮実に視線を向けたまま首を横に振り]
史人も、玲ちゃんも、蓮実君も、他の皆も、死ぬのは、嫌なの…!
護りたい…でも、私には、そんな、力が、無い、から…。
説得…。
[じっと涼を見る]
…涼ちゃん。例え説得してくれても。
魔に変じてしまった人をそのままには、できないよ?
涼ちゃんには大切な仲間、なのかもしれない。
けれどこれは、私の役目。私の務め。投げ出すことはできないの。
それに…私にも、私の大切な人が、まだ残っているから。
[蹲っていた榛名。何かの覚悟をしていた兄]
殺さずに終わらせられる力があれば良かったけれど。
私には、その力は、ないから。
[それでも?と問いかける声はどこか静か]
……それでも。
そうなったら、私が、やるから。
だからお願い。
――るりは私を大切な仲間だっていってくれたの。
もう一人は、わかんないけど、るりは大切な仲間だって言ってたの。
だから、
――私は、周りの人が、そうだったって、知っちゃうのが、やなの。
今……初めて思う。
消えたく、ない。
元の俺に、戻りたくない。
人として、死にたい。
人のまま、死にたい。
涼という温もりを、失いたくない。
何も、変わりたくない。
今までの生活に、戻りたい。
[涙が止まらない]
ええ。ですよね
[全てを失わずに済ます。それが既に不可能なのは知っていて
だが嘘の笑みを浮かべる]
私だって大したことなんてできません。
ですが、できる限り…やれることをやりましょう。
みな、疲弊しています。誰かの心を落ち着かせることでもいいんです。些細なことでいいので…ね?
[相手を落ち着かせるような安心させるような笑みを浮かべているのか自信がない。]
…ん。許せない気持ちだけは、分かる気がする。
[ポケットに手を入れる。
キャップの付いたままの剃刀。
キャップを外す事はせず]
俺の……、いや。
あたしも、許せなかったのはあるし。
関係無い、それもガキを、さ。あんな風に…。
[言葉を区切り、剃刀をポケットから取り出す]
生き残ってる限りは、殺してやりたいし。
死ぬなら、誰かにその意思を継いで欲しいし。
[視線をひたり、史人に定め近寄る]
嗚呼……だけど。
[雨が降りしきる。
その雨に顔を向けて、空に向かって呟く]
神様。
もし、
本当にいるのならば、
どうか、
どうか、
涼だけは、
涼だけは幸せに。
そのためならば、
俺は、
永遠に消えうせることになっても構わないから。
そうすれば、俺も幸せだったと思うことが出来るから。
…探偵さんと、約束したの。
後で落ち着いたら孝兄を視るって。
だから。
[クタリ、と意図せず膝を突いた]
少しだけ、だよ。
時間に余裕は無いから…でも、これが落ち着くまでは。
無理に視ないことにするわ。
[濡れた地面に座り込んで、涼を見上げた。
白い服に土の色が滲んでゆく]
……そりゃどうも、と。
[わかる気がする、との言葉に、くく、と笑んで。
懐から抜き出したのは、漆黒の柄を持つ短刀。
柄には、桜を象った細かな紋が刻まれて]
お互い、思考は似たようなモン、か。
なら。
……生き残った方が、それをやる……って事になるかね?
[上手く動かぬ右手。
それに、力を入れつつ、向けられる視線を見返して]
[出来ることをやる。些細なことでも。おそらくはこの中で一番取り乱しているのは、自分。自分のことで精一杯になってしまっている自分が、この先誰かを助けることなど出来るのだろうか]
…やって、みるけど、自信が、無いよ…。
また、さっきみたいに、なるかも、しれない…。
周りに、気が、回らない、かも、しれない…。
[泣き顔のまま、不安げな様子で蓮実を見やる。相手の落ち着いた口調と笑みは、榛名を現実へと引き戻し、思考出来るまでに回復させている]
あり、がと。
ありがとうっ、玲ちゃん
[ほっとして、近くに寄る。]
うん、誰も、みないで。
口にしないで。
――玲ちゃん、ありがとう。
[握っていた手を開いて、差し出した。起き上がらなきゃ。]
[―――祈りの言葉は天に届いたのだろうか。
自分には理解できない。
雨が降りしきる。
暗い闇が、自分を待ち受ける]
―――涼。
[どこからか、何羽も何羽も、まるで暗闇のような色をした鴉が飛び立った]
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