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[喉が熱い。赤いものが流れる。
失敗してしまったと思ったが声にならない。
傷は深い。血の流れは早い。多分動脈を切ったか。
どうなるんだろう。
死ぬのだろうか。
ごめんイウァン、仇をとれなかった。
そんな言葉が頭を過ぎる。]
[紅が広がる。守護者は死ぬのかもしれない。子供は叫ぶ少女と、手を差し伸べる薬師を見る]
………終わらせなければ。
[子供はポケットの欠片を握りしめ、二人の方へと一歩、近づく。薬師に阻まれることを警戒して、歩みは慎重になる。青の花がどくどくと脈打っている]
[喧騒が聞こえる。
ひどく強く聞こえるのは、エーリとゲルダと。
マテウスと。
微かにウェンデル。
何だか懐かしいなと思ったら、眠くなった。]
[ゲルダの声が聞こえる。
傷口が、ふたつ。
ああ、張っていた嘘が役に立つかもしれないと。
思ったら、なんだか愉しかった。
ゼルギウスが見えた。
あの姿はどこかで見たことがあった。
ああ、あれは狂った信徒のそれに近い。
ヒューと鳴る喉が、声を発する事はなかったが。
ベアトリーチェを見ながら。
ザマアミロと
*動い*]
[抱きしめられたとき、わたしはいつものように、抱きしめているひとにしか聞こえない声で、囁いた。]
あなたは、この手で殺してみたかったけど…。
そのときが来なくて良かったと思う。
[狙うのなら、瞳を。力ない子供が脆弱な武器を使う、その時には]
[そう、教わった]
[誰に教わったのかは、子供の記憶からは消されてしまっていたけれど]
[ゲルダの問いかけに]
あああ、とりあえず血を止めるんだ。
流れすぎると…
[その先は口にせず]
まずはとめるんだ。
[包帯を巻いていく、
戦場では何人もの死をみてきた。
これは助からないと判ずるときもなんとなくわかるときがあった。
今のナターリエの姿はそう思わせるには十分な様子で]
ナタリーっ!俺だっ!ゲルダもいるっ!エーリッヒもっ!
こっちだ、こっちにくるんだよっ!
[必死に呼びかける声は彼女にはどう映るか知る術もなく]
[少女が目を閉じたのが見えた。眠ってしまったのだろうか?それならいいのに、と、遠く思った。それもすぐに子供の記憶からは消えるだろう]
ゼルギウス、その人狼を、渡して。
[少女を抱く薬師に、子供は声をかける]
ゼ…。
[少女を抱き締めた彼の表情。
そのままでは良くない気がして、声を掛けようとする。
だが、青い髪の子供が動き。
背後でマテウスの切羽詰った声が上がって。
間に合わなかった。結局全てが中途半端なままに]
[包帯をマテウスへと渡し、ナターリエの手を握る。
酷く弱弱しい鼓動は指先越し]
…ナターリ、エ?
[叫ぶマテウスの声が耳に残る]
戻って、きてよ…。
[それでも、いつしか指先の鼓動も、失われ。
はたり、瞬く、翠玉が一筋の涙を零す]
[返答代わりのように、背中に突き刺さってくるナイフ]
…ひ…は…
[今まで感じたことのない痛みで、わたしの心と無関係に目が開き、声がこぼれる。]
[わたしは最後の力でその痛みを忘れると、]
[彼の腕の中で、眠ることにした。]
─ 愛してる ─
[少女の言葉はゼルギウスの耳に届いたか]
[けれど振り上げられた短剣は勢いを緩めることなく]
[真っ直ぐに少女へと振り下ろされた──]
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