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ゼル兄…!?
ゲル、ダ。
[ゼルギウスの只ならぬ様子に青褪めるも、ライヒアルトを探しに行くというゲルダも心配で見つめ。
ゲルダについていくと申し出た少年に、一瞬表情は翳ったものの。]
ミハエル君、ゲルダをお願い。
私は、イレ姉たちの傍にいるから。
やめ、て
ごめんだなんて。言わないで。
[聞かされる謝罪の言葉は、まるで――――
流れる赤と同じように、青い目から透明な雫が零れ落ちて行く。
病死と、他人事のように微笑みながら告げる夫の言葉に、意識が遠くなりそうで。
それでも、繋いだ手だけは離さずに、
握り返してくれる感覚が、生へと繋ぐたった一本の糸のようだった。]
[伏せられる蒼からの問い掛けに金はゆると細まる]
未だ、足りねぇみたいだからな。
誰かを殺すことになるだろう。
殺して、止めるか?
お前に、俺と――が、止められるか?
[若し、幼馴染が少しでも怪しい動きをしたなら
青年は躊躇わず彼の咽喉に食い破るだろう。
人の姿のままで狩る事の多い漆黒は微かに首を傾ぐ]
―宿屋・食堂→―
[宿屋を出てから、すぐに走るようにライヒアルト達の姿を探して駆け出す。
ゼルギウスの為にとは口にすることはしない。血をはかせた責任が自分にもあるとは思っていた]
まったく、しゃーねぇやつだな。
[そんなことを言う姿を自衛団員に見咎められれば、貴重なお方が死に掛けで緊急事態だと、すぐに駆け出し。
ゲルダ達が宿屋を出るときにはすでに自分の姿は見えなくなってるだろうか。
ライヒアルト達を見つけるのは何時の時だったか、自分の中ではできる限り速く、たどり着くときには少し息を切らせていたかもしれない]
……そ、か。
[返された言葉。蒼は一度閉じて、また、開いて]
そうしないと、止まらないっていうんなら。
俺に選べるのは、それだな。
……他の連中にやらせるくらいなら、まだ。
その方が、マシだ。
[静かな宣と共に、瑠璃のダイスはポケットへ。
空いた右手は、懐の短剣へ向けて、ゆる、と動いた]
[蒼鷹を行かせる理由ともなった胸に沸く嫌な予感は、ゼルギウスに対してかそれとも。
自分は動くこともできず、ただイレーネとゼルギウスを見る瞳が心配に揺らぐのみで。]
―宿屋/食堂―
私は、アーベル君が人狼だとは謂ってないのだけどなぁ。
アーベル君は視ていないし……―――。
[相変わらずなべッティの言葉が聴こえて、少し微笑んだ。
その間も片手は妻と繋いだまま。
ゆるっともう片方の手が青の目尻に伸びる]
泣かないで。
[視界の端、いつの間にかクロエの姿もあり、ふと思い立って彼女に言葉を向ける。]
私が死んだら、私の裡もクロエさんは視てしまうのかな。
どこまで見られるか、恥ずかしいなぁ。
でも、私にあるのは、イレーネとお腹の子どもの幸せだよ。
[妻の涙を指先で拭いながら、そうあくまで希望を告げた。
思いの深さが、狂人的だと思われてしまえば、それはそれだが。]
――…アーベル。
此方側に、来い。
俺達と一緒に、行こう。
[最初で最後の誘いの言葉になるだろうか。
幼馴染に向ける思いは真剣な音色]
……此方側、って、お前。
[向けられた言葉。思わぬそれに目を見開く]
は……まさかとは思うけど、バレてんの?
[身の内には、人狼の因子が眠る事。
誰にも教えていない、事実。
揺らぎが生じた事は、否定できず]
……けど、さ。
……やっぱ、それ、できねぇよ……。
置き去りにしてきた俺が言うのもなんだけど。
……裏切りたくないってのは……あるんだよ、な。
[それでも、紡ぐのは、拒絶。
ここに帰ったときに、出迎えてくれるものが、いるから、という思いもまた、強くて]
[妻の生を止めようとする言葉に、唇が微かに動く]
『 愛 し て る 』
[だからどうか、生きて、と。
眦を拭っていた指先は、そっと降りて、腹部に触れた。
ふっと紅が揺らいで、ゆっくりと瞼が落ちる。
それっきり、瞼が開くことがないかどうかは……―――*]
―宿屋 食堂―
[クロエの姿には夫の声で気づくものの、そちらを振り向く事は出来ずに。
拭われても、零れ落ちる涙は尽きる事はなく。
泣かないでという言葉には、ゆるゆると首を振った。]
やぁ……だ………
[泣き顔は子供のようか。
祈るように、何処までも優しいコエは。
今は胸に突き刺さって。]
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