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[動揺する様を見据える眼差しは、観察するようでもあって]
分からなくて辛いなら…他人に委ねると楽になれるよ。
そうして丁度良いことに、君の重荷を背負うという人間が此処にはいるんだ。
…うん、そう。ケイジ。
アイツは優しいから、君を気遣ってくるようにって。
[ゆるくゆるくわらう。投げる言葉は、いっそ穏やかで]
それで、どうする?
……ついているのが、わかる……人。
[ぎ、と。
噛み締められる、唇]
はっ……つまりは、一番タチの悪い手合いってわけかい……!
[吐き捨てるように、言って]
……ようするに、長老の揺らぎにつけ込んだ、と。
『堕天尸』より先に、アンタを結界樹に叩き込むべきかねぇ、これは……。
……どうして?
[男へと返す金糸雀色の眼差しは、
揺らいではいるものの、真っ直ぐに相手に。
変わらぬ表情は何を思うか、他者には捉え切れぬだろう]
そいつは遠慮しよう――
といいたいところだが、お前のようなのを相手に俺が逆らえるわけもないな。
[狐はわらう。わらうだけ。]
タチが悪いとはひどいもんだ。
ただ、俺は退屈がきらいなものでね。
――あァ、それで本題だが。
付き人殿は、 大事なものだから先に壊したんだと。
[ 隠した左目に一瞬、闇が差す。
けれど、それは気付かれない程度であり。]
―――――…。
鷹の目殿は堕天尸は何処にいると?
[ 質問で返す。]
はっ、わかってんじゃないのさっ……。
『堕天尸』になるでなく、でも、その領域に身を置く者。
……アンタみたいなのが、一番、天秤を揺らすって、母上が言ってたんだよ!
だから……っ!
[威勢のいい言葉は、しかし。
ささやかれた言葉に、止まって]
……なにさ、それ……?
……俺が。そうしたいわけじゃ、無いよ。
[呟きと共に、表情は消える]
でも、俺は…そうしないと、生きられないから。
…ごめんね。
だから、頼んでる。
おやおや、まるで俺が諸悪の根源だというようだ。
[くつくつと哂う]
たしかに、餌だといわれたからな。
――否定はしまい。
[しかしアヤメはその言葉を聞くのか。
狐は哂って、呆とする彼女に近づく。]
すべてを壊すために。
――アヤメ嬢にも水を向けてみたんだが。
もう一人にも伝えていないようだったが。さて、一体なぜやら。
そうしないと……?
[どうしてと、
声にはならぬ疑問のことばが発された。
向けた眼差しは、少し逸れて、男の肩の辺りへ。
今はなき翼をみるように]
[白い翼に追いつくと、ラウルはふわりと頭に乗る]
……あれは、ロザりんさんと……
[見慣れた紫紺の四翼。珍しい取り合わせに目を瞬き、二人の間の緊張した雰囲気に、やや距離を置いて宙に停止する]
何……話してるん、だろう?
……腹の探り合いは嫌いだ。ケイジと違ってな。
[苛立ちに紫紺の翼が大きな音を立てる。
左目の闇には気付かず、見える右目を睨む。]
巫女が告げた時、ざわめき立つ人々の中で目に付いた者がいた。
今、残っているのは一握りにも満たない。
半分は長老が封じ、半分は堕天尸に封じられてな。
―――その中に、お前も入っている。ロザリンド。
[言葉はほとんど素通りして、ただ]
……壊すために……。
[ふと過ぎる、昨夜の問答。
どこかが痛むような、嫌な感触。
しかし、それらは近づく気配に対する本能的な反発から、途切れ]
……そう言われて、はいそうですかと引き下がるほど……。
アタシは、素直な女じゃないよっ!
[鋭い、声。
紫星の煌めきが舞う。
目の前の狐を捕えようと]
おや、
[狐は避ける様子もまったくなかった、ともいえるほど、すんなりとその力に囚われる。]
もう少しほうけていてくれたらよかったものを。
[わらう、哂う。]
[紫星の縛を繰り、狐を抑える。
舞い散る光の粒子が周囲を飾り立て]
……悪いねぇ、狐の旦那。
天将の血筋……ってのは、特に『虚』を強く、持つらしいから。
同族嫌悪で、目が覚めちまったようだよ……!
このまま、大人しく、聖殿まで付き合ってもらおうかね……!
[エリカの疑問は当然で。けれど、答えを口にするのは難しすぎた。だから、]
これが、あるからじゃ…ないかな。
[臆する事無く、ふわり、透明に近い紺碧の羽根を広げた。
拒まれなければ、エリカの手を取り、そこに触れさせようと]
俺は、多分…これがある限り、自由にはなれないんだよ。
[ 睨まれれば微笑みで返す。]
おやおや…コワいですね。
[ くすくすと笑う。]
他に疑わしい者がいるなら、長老に進言されれば。
私が入っているのは心外ですが。
[ 左目から手を離す。
その瞳はバイオレット。]
私は貴方を疑っております。
長老が貴方を頼っていることは知っていますので。
同属嫌悪。
おやおや。
そいつは、面白いもので。
[ぞわりと狐の下でやみがうごめく。
虚に場所を教えるように、どろり、どろり。]
まァ、
聖殿ねェ。
[抵抗らしい抵抗はせずに、わらう。]
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