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─北エリア・林─
[降り注いだ破片がロミを傷付け、樹木の集中からどうにか抜け出したライヒアルトが宙を舞う]
(もう少しキーを撃ち込んでおきたかったけれど、限界かしら)
[周囲の高まった緊張にそう判断した。残りは自分で補うしかないと、バズーカを地面へ捨て置き両腕を胸の前でクロスさせ、両手を両肩に当てる。肩のタトゥーが消え、掌に具現するのはタトゥーから現れたかのようなアゲハチョウとスズメバチ。その大きさは実際のものより遥かに大きいものであったが]
耐えて下さるかしら。
そうでなくば困るのですわよね。
[呟きは極小さい。とある目論見はあれど、手を抜くつもりは無かった。両手にアゲハチョウとスズメバチを乗せた状態で二人の動向を窺う。動きがあれば、直ぐに返すことが出来るように]
─北エリア・林─
……どーやら。皆様、やる気のようで。
[傷を受けながらも構えるロミと、何やら構えるオクタヴィアと。双方の様子に、小さく呟く。
口調は軽いが、さほど余裕があるわけではない]
……ま、ここまで来たわけだし。
[呟きながら、漆黒の針を両手に]
やれるだけはやらんと、さすがにカッコつかねぇしな。
[す、と。常磐緑が細められ、ゆっくりと腕を胸の前で交差させる]
……今度がほんとの、大盤振る舞い。
出し惜しみなしの一撃、ご覧あれ、と!
[言葉と共に交差していた腕が、左右に開く。
勢いをつけて放たれるのは、針の雨──否、乱舞]
[オクタヴィアの手に、蝶と蜂が具現する。だが、今はそちらを気にしている余裕はない]
(『力』が残ってる内に――『鴉』さの翼を折らねえと!)
[ライヒアルトに向かい、駆ける。
その眼前、無数の針が煌めき舞っていた]
――『跳ぶ』!
[足元の地面に向けて念じた。より高く、より速く、自分の体を持ち上げるように。
針を越え、更にライヒアルトより上空を取らなければ、攻撃は当たらない]
あああぁぁぁ……っ!
[土の力で空を飛ぶ。
その矛盾は莫大な負荷となって、全身を軋ませた。
この一撃を当てられても、その次の、即ちオクタヴィアの攻撃に対応出来るかはわからなかったが。
それでも今は、目の前の相手だけを見据えて――]
堕ちろ――っ!!
─北エリア・林─
Ein Füllungsanfang………。
[呪のように呟くと、キイィィィンと言う音と共に二匹の虫が駆動する。生体ではなく機械に近いそれらは複眼を幾度か明滅させた。エナジー充填、それは自分の力のみならず、先程銃弾を撃ち込んだ影からも注がれる。あの時の布石は直接攻撃のためでは無かったのだ]
────Vollendung.
[声と共に二匹の虫が両手から舞い上がる。お互い交差するように飛び交い、スズメバチはライヒアルトへ、アゲハチョウはロミへと近付いて行く]
さぁ、舞い踊り遊ばせ!
[声を張り上げたのは二人が仕掛け始めたのと同時。スズメバチは複眼と針から、アゲハチョウは複眼と触覚から細いレーザー光線を放った。複眼の一つ一つから放たれるそれは、放射状に広がりながら二人へと降り注いで行く。ライヒアルトはともかく、持ち上がる大地により場所が変わったロミへの射撃はいくらか外れたかもしれない]
[一方でオクタヴィアは迫る攻撃に防御行動は見せども、その場から動くと言うことはしなかった。動けないと言うのもあったが、動く気が無かったのもある]
[自分はここで負けるべきだと考えていたために]
[己が目的は『遊戯』を『盛り上げる』こと。勝つことが目的ではない。この二人ならばどちらが勝っても、そう考えた末の決断だった]
[少しでも壁にするべく、地面へ捨て置いてあったバズーカの端を右足で踏み、跳ね上げらせる。それを手に持つと、迫り来る針の乱舞のうち、顔に当たりそうなものだけを防ぐように翳した。それ以外の場所は無残にも針が貫いて行く]
─北エリア・林─
[針の乱舞は、制するに集中が必要となる。
それを行う間は、動きが制限されるのが、唯一の欠点]
……ちっ!
[舌打ちは、近づくスズメバチへの乱舞へのもの。
そちらに意識を誘われた直後、絶叫が響く]
……つか、それ。
すっげえ、無茶。
[大地から持ち上がる手。
思わずこんな呟きが零れる。
それでも、急所と──他の何より、鴉の翼に当てられる事だけは避けねば、と。
振り下ろされる一撃に対し翳すのは、龍鱗を持つ右の腕]
[伝わる衝撃。同時に走るのは、激痛]
……くっ!
[頑健なる龍鱗は揺るがずとも、度重なる衝撃によりダメージを被り続けた肩は、その一撃に耐え切れなかった。
息が詰まるような感覚。
右の翼は、揚力を生み出しきれず]
[黒耀鴉は、地に落ちる。
一歩遅れて、相手を捉え損ねた針が煌めきながら零れ落ちた]
―北エリア・林―
[急激に持ち上がって行く視界。
その視界の端を、鮮やかな蝶の姿が横切った]
つっ!
[足が焼かれ、そして貫かれる感触。
新たな痛みが加わったが、しかし攻撃の動作は止まらない。
両足に残る最後の感覚で、巨人の掌を蹴り更に跳ぶ]
ずっと、考えてただ――
どんだけ無茶すれば、お前さんに届くか、ってな!
[相手の右腕を視界に捉え、鉄槌を振り下ろす。
重力に任せて、全身で回転しながら。
手応えは――あった。
落ちて行く鴉。
そして、娘もまた。鉄槌に引かれるように、落下を開始していた]
─北エリア・林─
[針が刺さった部分から、紅が滲み出て紫のドレスを染める。出血部が小さいのもあって、一見斑模様に見えることだろう。それもまた、しばらくすれば全てが染まるのだろうが]
……あの子も大概無茶ですわね。
わたくしに余力があったら如何するつもりだったのかしら。
[両膝を地に付けた状態で空から落ちるライヒアルトとロミを見た。勿論余力なんてものは無い。宙へ放ったアゲハチョウとスズメバチが全てだった]
[射出を終えた二匹はその場で溶け、近くの影へと同化する。手にしていたバズーカもまた、その形を保てず消え去っていた。支えを無くしたオクタヴィアだったが、気力で倒れぬよう意識を保つ]
─北エリア・林─
[地に落ちて、は、と一つ息を吐く。
右の肩は完全に抜けたか、砕けたか。
いずれにせよ、役には立ちそうになく。
右手が使えない、という事は、龍鱗から生成する針を用いる事もできないわけで]
……これ以上は、無理、か。
[零れ落ちるのは、ぼやくような呟き]
……やれ、やれ。
ホントに、女は怖い、ねぇ。
[続いた言葉は、冗談めかしたもの。
常磐緑の瞳には、険しさはなく。
声音の軽さともあわせて、戦意が既に失せている事は傍目にも明らかだった]
これ以上やりあうのは、さすがに無理。
命かけるつもりはないし、白旗揚げますか。
っても、黒羽しか持ってないけど、ね。
―北エリア・林―
[ライヒアルトの落下から一瞬遅れて、こちらも地面に到達した。
華麗に着地、とはとてもいかず、前転して勢いを殺すのがせいいっぱいだったが]
つ……
[それでも、鉄槌を支えになんとか立ち上がる]
ライヒアルトさは……これで、降参?
オクタヴィアさは……
[視界を動かす。
意識はまだあるものの、膝をつき動けぬ様子の彼女が見えた]
じゃ……じゃあ……
オラの、勝ち……?
[信じられない、という表情で、二人の方をもう一度見る。
そして確かに、今立っているのが自分だけだとわかって――
緊張が解けたようにペタンと地面に座り込むと、そのままわぁわぁと泣き出した**]
おっ父、おっ母……オラ、勝っただよ……!
─北エリア・林─
……ええ、わたくしも。
これ以上は無理ですわ。
[ヒトの形をしている時は、ヒトの限界を持っている。力とて無尽蔵ではない]
メーベルトさんの勝ちですわね。
[確認するようなロミに、確定の言葉を向ける。針が消えた腹部を右腕で抑え、左手でイヤリングを弾いた]
───Pflichtvollendung.
勝者はロミ=メーベルト、野槌の娘ですわ。
[『遊戯』のスタッフに対する通信。おそらくは様子を見ているだろうが、義務として仕事は果たしておいた]
……貴女の望みはなんなのでしょうね?
[鶸色は泣きじゃくる少女へと向けられる。この先どうなるかは、この少女*次第*]
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