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―東殿・氷破の部屋―
[丁度、心竜の話を出し、対策を思案中だったのが幸いしたのか。
氷破の竜は、立て続けに術式を放っていく]
一枚じゃ防ぎきれないのは、分かってる!
[両の手の内から、凍気が溢れる様に毀れ出る。
ナターリエが、水鏡の壁を氷壁の内側に張るのを見て]
二枚目――、
[二竜を少し下がらせた後、再度、氷壁を広げる。
より硬く、広げるようにして。
一枚目の氷壁は、音を立てて崩れようとするだろうか]
三枚――!
[三枚目の氷の壁を生み出した所で、その場に膝を着く]
ザムエル……、もう、これ以上は持たない……ッ、
退いて……ッ!
…くびかざり…?
[痛みに意識を奪われそうになりながら、しかし無機の半身はまだ崩れ切ってはおらず、幼竜の声を性格に認識する]
ベアトリーチェ…きみ、剣を、知ってる、の?
[不安が頭をもたげる、もしや、何かの間違いで、この幼竜の手に剣が?]
あれは、とても、危ないんだ…ユル、は、そのせいで…だから…持ってるなら…
[言葉は途切れ途切れに、幼竜に意味は伝わるか]
[移ろう視線は丁度倒れるナターリエの姿を映しだす。意識が現状へと引き戻された]
ぐぬぅ…!
聖魔剣の様子も気になるが…こちらを疎かにするわけにも行かんか。
[気を取り直したところにブリジットの声]
ブリジット!
…仕方あるまい…!
[アーベルが立つは窓際。なれば、と部屋の出入り口より回廊へと飛び出す。背には砂の翼。回廊内を滑るように駆けだした]
─東殿・ブリジットの部屋→回廊─
―東殿/氷破の部屋―
[眠れと命じたのと流水の竜の水鏡のどちらが早かったか。
跳ね返されるより前に膨れ上がる精神と影輝の力に赤紫の瞳はザムエルへと向かう]
――…貴方には『抑えられない』――…!
[赤紫は老竜の惑い移ろう視線を見つめ、青年の手は氷の歯車を、
ぱきん!
氷柱が割れるような高い音が響き、氷破の封が解ける]
―東殿・回廊―
泣くのにゃもう飽きたさ。
叫んで暴れて喉が枯れて。
今の俺になるまで、どれくらいかかったろうな。
…その顔は、少しうちの姐さんに似てるな。
[慈悲ににたノーラの微笑みに、微か笑んだ。何処か懐かしい、とも思うし、この笑みをみていたら、翠樹や陽光が近づいていたのも分かる気がした。]
俺からしてみりゃ、お前さんは会う人毎の口真似してちっと俺にゃ辛辣な、面白い影輝竜、って認識だったんだがな。
[分からないというノーラに軽く告げて。
その手に触れ、撒かれていた鎖を―――そっと取った。
軋むような高い音が耳を突き、流石に眉根を寄せ顔をゆがめるが。
鎖を落とす事はしなかった。]
…さて、どうなるんだろうな。願いを叶えたら壊れるのかね?
[それは、自らも未だ知らぬ所。]
けん、って。
くびかざりと、ノーラみたいな、わっか。
…そのふたつだって、リーチェ、知ってる。
[機竜の様子に困惑を滲ませながら、しかし投げられた問いには真直ぐに言葉を返す。
教えてもらったとは謂わぬ。それは闇竜殿と交わした約束を破る事に成るが故に。
尤も私はその事を知らぬ。首飾りが存在すとは初耳で在った。]
…ユルがこわれちゃったの、――けんのせい、なの?
でも、だって。
あぶなくないって、 きいたから。
[わたしちゃった。と。
機竜殿の言葉は拾えども逆にその事実を認知してか最後の言の葉は音に成らぬ。]
―東殿/回廊―
[眠る流水と膝を突く氷破を部屋に残し、青年は砂の翼を追う]
――…眠れ!
[赤紫の瞳の命令に、生まれ出る夢を渡り、大地の老竜の元へと]
そう。
泣くというのは、どういう気分だろう。
< 鎖が取られる間際、音に目を瞑った。
それから少し背伸びをして、生命の竜に手を伸ばす。
撫でるに及ぶかまでは分からないが、どちらにせよ、場に似つかわしくはない行為ではあった。
曖昧な微笑をつくり、そっと離れる >
……神斬剣に会いたい。
< 言った刹那、視線を転じる。影がざわめいた >
あぶないんだ、剣は、とても…
[すでに言葉はうわごとのように]
だから…渡して、俺に…持っているなら。
[手に入れたいとも、敢えて触れたいとも思わない剣ではあれど、すでにそれによって朽ちようとしている身ならば、却って安全かと口にする]
――――――――!
[酷く頭痛がした。
直前に触れていた、ノーラの起こした影響か。
剣が暴れるように、叫ぶように。
高い高い音をあげて。
周囲を舞う琥珀の粒子が、ゆらりゆらりと数を増やす。
痛みを和らげようと、怒りを抑えようと。
押さえ込もうと、鎖を潰す勢いで手は握り締められたが。
それは、ノーラが頭を撫でることによって、ふぃと和らいだ。
はっとするように、ノーラの微笑を見下ろす。
視線は、すでに別な方向に転じられていた。]
[鎖はそのまま、服の裏側に入れる。
すぐさま、約束の場所へと運ぶ事も考えたが、暫し足は止めたまま。]
…自分が解らない、って奴は、他人を頼ってみるのも悪かねぇぜ?
お前さんにゃ、翠樹の嬢ちゃんも居たろう。
他人から与えられる心は、自分を作る物の材料になる。
今の迷ってるあんたも、あんたらしいと思うんだけどね。
[何より自分を写さない口調は、それを物語っているようで。]
…会いたいなら、会いにいけばいいさ。
会えるところにいるんなら、尚の事な。
……。
[まだ、少しだけ意識はあった。
だけど、それで知ることが出来るのはごく僅か]
[―――ぱき……ぱき]
[体にまだ少し根付いていた氷の根っこが、部屋一面に溢れた氷の力により活性化して、動けないナターリエの体に広がっていく]
……あー。
本気でやばいかも。
[声は声になってない。
かすれた声すら出ず、ただそれは思うばかりか]
……だから、氷は苦手なのよ。
…、ない、の。
わたしてって、やくそくしてたから。
[二振りが揃えば確かに危険なのだと、幼子は闇竜殿から聞き及んでいた。
しかし闇竜殿は試して見なければ判らないのだと云っていた為に、
事が深刻なのだと――仔は深く理解出来ていなかったが実状。
しかし、どうか。眼の前の機竜殿を危険に晒したはその剣だという。
はて闇竜殿は知らなかったのやも知れぬと幼子はそう思う。
――真実は判らねども。]
……、…ラに、
[名を告げるは、約束を違える事になるやも知れぬ。
もしかすればそれ所では無い、…責められもするかも知れぬが。]
…ノーラに、わたした。
―東殿/回廊―
[大地の老竜へと手を伸ばし、赤の残る手で腕輪を奪おうと引く]
『剣』をこの手に――…
[そうして、剣の加護を失くし結界の中へと送り込もうと――…]
─東殿・回廊─
[知らずのうちにかち合っていた赤紫の瞳。滑り込む呪を乗せた言葉。破られる氷の封。
対たる剣の歪みし共鳴で揺らぎかけていた力が、解放される]
ぬあ…!
[抑えられていた二種の力─主に精神の力─が大きく蠢き出す。剣の力を抑えようと、その力を均そうと。それはまるで剣自体が暴れるような感覚]
落ち着くんじゃ、神斬剣…!
力を抑え──……。
[左手首を右手で掴む。強制力を働かせようとして、その力は止まる]
─ 抑 え ら れ な い ─
[意識深くに刻まれた言葉]
─抑えられぬ─
─いや、抑えてみせる─
─無理なのか…─
─抑えなければならぬのだ─
[意識の錯綜。視線は腕輪へと向かい、傍に現れたアーベルには向かって居ない。
相反する意識が錯綜する中、腕輪の力は未だ抑えられずに蠢きまわる]
[─抑えられる?抑えられぬ?─]
[腕輪を握り込んだまま、一瞬意識が飛ぶ。
己がすべきは一体何なりや──]
……与えられる。
写すしか出来ないと、思っていた。
< 手は右の頬に、邪魔な髪を逸らす。
其処には人を模した肌も、刻まれた刻印すらもなく、ただ薄い闇が広がり、眼の在るべき部分には仄かな光が浮かぶ >
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