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[イヴァンのことを聞かれると]
ああ、俺が知る限りでよければな。
[ライヒアルトに対処手段がないか聞いたこと、そのときライヒアルトからは見る力と守る力があるのことを聞いたこと]
あの時、イヴァンに唐突に言われたな。自分が見ることができるかもしれないって。
[それはライヒアルトの話を受ける前だったか、後だったか記憶はさだかでない。
その後に続いたイヴァンの母の説明、そして…]
なんでも力が強すぎるときは人狼に味方するようになるらしいな。
俺が知ってるのはこれくらいか。
[なるべく事実を伝えたつもりだが、果たして情報はうまく伝わったであろうか?]
そうだ、後で他の皆にもつたえようと思うのだが、
[鎧の欠片をゼルギウスに見せてから]
アーベルが殺される前、
廊下で落としていったんだ。
今さらだが、あそこで捕まえたままでいてやれれば、ああはならなかったのかもな。
[かすかな自責の念、
ライヒアルトの力とアーベルの事は伝えるべきか迷ったあげく、伝えることにし、]
事実なら、はめられたってことかね?
どこまでが真実なのか…、
[呟き、その後二人で情報交換を行い、
考えを話し*合ったりした*]
─回想─
今は眠ってる。
発作も起きずに済んだから今のところは大丈夫かな。
[ベアトリーチェについてを簡単に説明し]
[訊ねたことの回答に耳を傾ける]
[先に返ってきたのはイヴァンについてのこと]
[粗方話を聞いて最後の言葉を聞いた時]
[薄らと、口端に笑みが浮かんだ]
そう、強すぎると人狼に。
[小さく、それだけを反芻する]
それを、アーベル君が?
[示された鎧の欠片]
[思い起こされる記憶]
[検死をした時に鎧が何箇所か欠けていたことを思い出す]
物的証拠はあったわけだ。
だったらアーベル君が人狼だったんじゃないか?
そうなると、それを人と判じたライヒ君は嘘をついたことになるか。
でも彼はどうやってアーベル君が人狼ではないと判じた?
証拠がないなら、信じられないね。
[否定の言]
[はっきりと目に見える証拠がなければ信じないと]
[真紅を細めながら言葉を紡いだ]
[記憶のページはゆっくりと一枚一枚捲られていく]
[本人の意思とは無関係に] [知らず知らずのうちに精神を蝕みながら]
[人狼なんてどうでも良い]
[彼女を護れればそれで良い、と──]
…あの時、イヴァンの奴、片眼が異様に充血してた。
もし本当にあいつが見極める力を持っているとしたら。
力の制御が出来てない可能性があるんじゃないか?
得た力が強すぎて、見えぬものも見てしまったりしてるかも知れないぜ。
[小さな疑惑の種]
[先程聞いたイヴァンの力についてを交え、自分が見たことをマテウスへと告げた]
[話し合いの最中でゼルギウスは、イヴァンとライヒアルトの両名を信じぬ旨をマテウスへと告げる]
[確固とした証拠がないことがその理由だった]
[粗方話し終えるとマテウスと別れ、ベアトリーチェの部屋へと戻る]
─回想・ベアトリーチェの部屋─
[部屋に戻るとベアトリーチェはまだぐっすりと眠っていた]
[傍らに置いた椅子へ腕を組みながら腰掛ける]
[しばらくの間紅茶を飲みながら眠るベアトリーチェを眺めていたが]
[徐々にうとうとと舟を漕ぎ始める]
[腕を組んで椅子に腰かけた体勢のまま、意識は闇へと落ちて行った]
[眠りの奥底]
[記憶の靄が晴れていく]
[あの日見たのは愛しい弟の無残な姿]
[病を患い、それでも健気に生きようとしていた弟]
[弟の病を治すために彼は薬師になった]
[必ず治すと] [弟を護ると]
[強く決意していたのに]
(ああ、どうして──!)
[弟は何者かに殺された]
[共にいた両親も殺されていた]
[紅く染まった部屋で彼は慟哭する]
[その光景が信じられず、彼は記憶を閉ざした]
[これはお伽噺の出来事なのだと]
[人狼の仕業なのだと]
[現実と認識せず]
[彼は記憶に強固な鍵をかけたのだった──]
─二階・自室─
[夢現。
漂い見るのは。
遠い過去。
未だ少年から抜け出せぬ時分。
数年ぶりに会った師父、そして、兄弟同然の友。
再会の喜びは、数日後には、紅の惨劇に染め上げられた。
蒼花を咲かせた友。
見極める力を持つと告げた師父。
しかし、師父の言葉は偽りで──]
……レィ……ネ……。
[真実の力を宿した少女は腕の中。
ただ、痛みを残して、息絶えた]
ん……ああ……どうぞ。
[数回、首を振ってから、答えを返す。
入ってきたのは、話に行かねば、と思っていた家主]
大丈夫だ。
……世話をかけたな、家主殿。
[起き出そうとすれば、止められ。
気だるさは残っていたから、それに従った]
……軽くて悪かったな。
[最後の軽口には、さすがにむっとしてこう返し。
背を向けたまま語られる話を、黙って聞いていた]
[目前で閉ざされた扉。子供は抗うこともなく、暫し扉の前に佇んで、それが再び開く事は無いと知ると、そのまま膝を抱えて廊下に座り込んだ]
………泣いている。
[空を見つめる瞳はガラス玉のように、何の感情も映してはいない]
イヴァンが。
あの子を、人狼と。
[霊視の間にあった出来事を一通り聞いて。
小さく、呟く。
暗き翠には、思案する色彩]
……迷う、な、それは。
俺とて、イヴァンの力を真なるものと判じているかと問われたなら……是とは、言えない。
[それは、過去が心にかかるが故。
真っ先に名乗りを上げた師父は、人狼の正体を知り、それに与していた]
判ずるのは、俺にとっては容易い。
だが、視えるのが俺だけである以上……真実と主張するのは容易くはなかろうな。
[何を信じればいいのか、という言葉。
聞こえた嘆息。
暗き翠は微か、伏して]
……俺を、信じろとは、さすがに言えん。
死を持ってのみ判ずる力……ある意味、人狼よりもタチが悪い。
[静かに、告げる。
振り返る翠、その陰りに。
暗き翠は、微か、険しさを増すも]
ああ。
寝てばかりも居られんだろうし、起き出すさ。
[返す言葉は、常と変わらず。
それでも、最後の言葉には]
だから、家主殿にそれを言われたくはないんだが。
[ぽつり、と返して。部屋を出る背を見送った]
─二階・ベアトリーチェの部屋─
[目が覚めたのはいつだったか]
[椅子に座って眠ってしまったために身体が強張ってしまい]
[少し表情を歪めながら縮こまった筋肉を伸ばした]
[ばさりと毛布が身体から落ちる]
[ベアトリーチェは既に目を覚ましていたらしく、寝台の上に姿は無かった]
[その内戻って来るだろうと、毛布を畳んで暖炉の火を点け直し]
[空気を入れ替えるべく窓を開けた]
あ、お帰り。
[ややあってベアトリーチェが戻って来る]
[微笑んで迎えると、持ってきておいた料理を勧めた]
ん、簡単なものだけど。
…約束しただろ?
[礼にはそれだけを返し、柔らかな笑みを浮かべる]
[ベアトリーチェが食べ始めるのを確認してから、自分も用意した料理に手をつけた]
― 集会所二階・個室 ―
[眠りは深かったか、浅かったか。
夢を見たかも判然としない。
ただ、寝覚めがよくないのは確かだった]
…、
[十字架を握り締め、声なく祈りを捧げる。
変わらぬ日課の一つを、黙々とこなした]
[一人になった所で、ベッドを寄せた壁に寄りかかり。
しばし、瞑目する。
猫が膝の上に飛び乗り、案ずるような声を上げた。
その頭を、ゆっくりと撫でて]
見極めるもの、見定めるもの、守護せしもの、象徴たる双花。
……牙をもつもの、牙を護るもの。
全ては、要素。だったか、師父よ。
揃えば始まり、終わるまで逃れられぬ束縛。
[胸元に手を当てつつ、呟く。
自らが手にかけし者の、最期の言葉]
[わたしはまた頬が赤くなるのを感じる。]
[恥ずかしくて、その後は俯いたまま食事を続けた。]
…どうして、こんなに優しくしてくれるの?
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