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(……ちょっと匂いがキツイな)
[...はそう感じ、一応失礼にならない程度に鼻下を擦りつつ、何と聞き出そうか思考を走らせた。
だが、下手に刺激するよりは一発で核を抜いたほうが的確だろうと思い直し、単刀直入に聞きだす事にした]
ま、はっきり聞くわ。
昨日、シャロンを殺す時に幻術を使ったか?
[香りに刺激的な何かを感じ、一回咳きついた]
成る程ネェ。
ここで否と言えばボーヤは信じるのかい。
[クツリと笑う。
刺激と甘さと、惑わせるような香りが部屋中に広がってゆく]
だが敢えて言おう。
答えは否だよ。
「アタシはシャロンを殺していない」んだからね。
[できれば武装を使われたくはない。
言い聞かせるような口調でそう答えた]
君は記憶を探ると言った。
金牛が裏切り者である、あるいは違う、という事を判断しうる記憶は、少なくともこの騒ぎの前まで遡らねば見つかるまい。
対して、私を殺す理由については、彼女の死の直前にあるはずだ。
なぜ前者が分かるのに、後者は違うのかね?
ま、ぶっちゃけ、ウサンクセー。
だからここで死んでもらった方が、ありがたいっちゃーありがたい。
その方が……。
[ゴホゴホと二度咳き込んでから]
ルイを助け出す算段は立てやすいからなぁ!
[するりと、音を立てずにメイゼルを抜き放った]
[マイルズの部屋の備え付けのキッチンで紅茶を用意する。
用意されたのはマリアージュフレールのスカーレットグレース。
特に装飾のないシンプルなティーセットを乗せたと礼とともにキッチンから現われる]
おまたせしました。
あら……?
言っちゃってもいいの?
私が見た全てを。
例えば、あの場にいたもう1人が誰か、とかね?
[流石、狸親父は早々ボロを出さないかなどと思いつ。]
で、貴方は私の問いには答える気はない訳ね。
なぜ彼女を裏切り者と判断したのか。
四の五の話しても埒があかなさそうね……なら。
[扇子をすと抜き取り、まっすぐにエドガーへと向け。]
――私たちらしいやり方をしましょうか?
奪い合いましょう?
フン、その方が確かに早いさね。
アタシも火の粉は払わせてもらうよ。
全力でネェ…!
[全身から香気が立ち昇り、部屋に満ちた香りが強まる。
脳にまで浸透しそうなそれは判断力を奪うもの。
それでも強い集中力があれば影響は微々たる物だろう]
[溜め息を一つ。]
昔、自分は神の声を聞く預言者だ、という男に会った事がある。いつもボロボロの服を着て、公園の片隅に座り込んでいた。
嵐の日には、「神は怒っている。この風は欲深に葉を多く纏う樹を揺らして枯らすだろう。怒りをかわすには、自ら葉を捨て地を這う虫に与えるのだ」と喜捨を迫り、地震のあった日は「神はお嘆きである。樹はその福々と肥え実らせた果実を落とさねばならない」と金持ちに説いて回った…。
その者は、どうなったと思うね?
[言って、銃を抜く。]
[咳が口をつく。
だが、それにかまっている暇はない。ことは迅速を尊び、譲れぬ思いと願いは常に背中に背負っているのだから]
最初から全力だぁ!
[東洋の武術にある『唐手』。その中で達人ともなれば一歩で数メートルを移動する歩法が存在する。
その一歩は、どんな床をも打ち抜く強靭な脚力が決め手となる。
ダン!
と、右足をついた瞬間、...の体がまるで最初からミュウの死角を知っているように動いていく。
そしてそこに刻まれたのは、シャロンの死体側にあったあの陥没と同じ傷跡。
...は踏み込んだと同時に壁へと飛び、すぐに天井へと駆け上がると、そのままミュウの背後へと飛び越すように動きながらメイゼルを頭上から大きく振るった]
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