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[「ばーちゃん」の言葉に少しだけ表情が曇る。
彼女の元の主人が亡くなったのは急な病気が原因だったから、心配する気持ちは分かる気がした]
吊り橋は、無理ですね…
ただでさえ揺れますから。
[真剣に頷く。それからテーブルのほうを見て]
とりあえず、甘い物でも如何ですか?
[デザートを示し、小さく微笑んだ]
[言われた言葉にくすくすと笑って、隠し子といわれ]
それは確かに気にはなるね。
[と赤い髪の少女をちら、と見て。
その先の言葉に軽く首を傾げて]
俺が君を嫌う理由は無いと思うけど…?
[自身がローズに向ける代名詞がいつの間にか変わっている事には気付かず。
微かに曇る表情に]
何か、気になる事があるのかい?
[それはただの疑問。
ローズの不安がそこにあるとは思わずに]
…ん?
[赤毛の少女の視線に気がつき、見返す。
…子供に罪は無いというか…悪いのは義兄の方なのだとわかってはいても、なんとなく複雑な心境なわけで。]
自分の首を絞める事態にならなければ好いけどな。
[ 興味の無さそうな様子は変わらねど、其れを望む心境が無いと云えば嘘になる。表に出さぬよう務めてはいるが、心中は揺れ動き酷く不安定だった。]
―広間―
ふう、いいお湯でした。
どうも皆様、こんばんは。
[バスタオルで包んだ『何か』を床に。
脱いだ後の服は、後から浴場まで取りに戻る予定だ。]
ネリーさん。ラプサンスーチョンを入れてきてください。
ホットミルクは持ってこないで下さいね。飲みたくありませんから。
ええ、また。
[ 早々に立ち去るルーサーを見送れば、がらんとした脱衣場に青年一人が取り残される。広げておいた荷物は直ぐに乾く筈も無く、取り敢えず濡れた衣服は洗濯して貰えるだろうかと傍の籠に入れたが、問題は其の他――主に手帳。日記を付ける習慣等無かったから、其れは単なる読書の覚書程度にしか過ぎないが。]
『取り敢えず、部屋に置いてくるか。』
[ 其の結論に至り、浴場を後にすれば先ずは自室へと向かう。]
[視線が合ってはじめて、自分が相手をじっと見ていたことに気づいた。
見返されて、何故か目を泳がせる。]
おいしくないの?
[じっと見ていたことを誤魔化すように問いを口にした。
そう言えば、二日酔いだとかなにか言っていたような気がする。]
[僅か、陰った表情に戸惑うものの、その内心の思いにまでは当然の如く気づけず]
うん、あの橋は慣れてるつもりでも怖いからね。
[真剣な様子に、こちらも真面目に頷き返し。
ようやく気づいたデザートの存在に、今度は自然に、口元をほころばせた]
そだね、甘い物食べて、嫌なことは考えない方がいいね。
[そちらに釣られるように視線を向けて、わたしは赤い髪の少女を見る]
? …ええ、気になるわ。なかなか。
[しかし結局なぜ彼女を見たのかわからないままで。
続いた言葉に何と答えようか、逡巡。]
……ううん、何もないわ。気にしないで。
嫌わないでくれるなら嬉しい。
[微笑を作って、やってきた牧師様に頭を下げる。
自分の仕事は、自分では嫌だとは思っては居ないけれど。
知ったときに、傷つけられるのは、もう嫌だった。]
[入って来た牧師に会釈をして]
…あ、はい。
かしこまりました。
[「何か」にちらと視線を寄越したが、注文を受ければ直ちに厨房へと向かう。
…ホットミルクは余程嫌だったのだなと、頭の片隅で思った]
…ま、おいしいですけどね。
どうも二日酔いで胃が荒れているんだか…あまり食欲が無いもので。
[半分くらいで手が止まっている。]
―ニ階・客室―
[ 浴場から持って来たタオルを机に敷き、其の上に濡れた品物を並べる。嵌め殺しの窓の向こうに広がるのは烏珠の夜。今宵は、月が見えない。]
しっかし……。
[ 小さく声を零して口許に手を当てる。
想起するのは森の奥に見た彼の金色の双眸。幻覚だったのか現実だったのかは解らず、未だ誰にも話していなかった。雨の所為で其れどころでは無かったというのが大きいが、容易に口外する気にもなれない。]
[テーブルに戻って、チョコレートムースを取り分けつつ。
ルーサーの問いに、そちらを振り返って]
デザートのチョコレートムースですよー。
[答えつつ、自分の分をがっちりと確保]
[やって来たルーサーに軽く頭を下げ]
…ホットミルクは嫌い?
[と訊ねるでもなく訊いて。
気になる、との言葉には頷き]
そのうち分かるとは思うけどね。
[と返し。
その後に続く言葉に、以前言っていた秘密と言う言葉を思い出す]
そう?ならもう訊かないよ。
秘密の一つくらいは…って前にも言ったかな?
…嫌う理由がないから、嫌いにはなれないな。
[ローズが何に不安を抱いているのかは分からなかったけれど、少しでもそれを軽くしようと、笑う]
おやおや、大丈夫ですか?
自分の飲める量はきちんと把握した方がいいですよ、コーネリアスさん。
[のほほんと微笑む。]
……んー。二日酔いには梅干を入れた番茶が効くらしいのですが。
この屋敷に梅干や番茶があったかどうか。
―厨房―
[立ち上る湯気は何か煙のような香りがした。珍しい香りだと思う。
やがて淹れ終え、トレーにカップを乗せて広間へと戻る]
―厨房→広間―
まあ、ホットミルクには嫌な思い出がありましてね。
ミルクティーやココアも受け付けないのですよ。
シチューは平気なのですが。
[特に気にした風もなく、ナサニエルに答えを返す。]
あ、どうも。
……ふー。やはりこの匂いは落ち着きますね。
[煙に似た匂いを吸い込み、ほうとため息。]
―広間―
そのうち、わかるのかしら?
[本当は、違うことはもうわかっているけれど。
それから続いた言葉に申し訳なくなる。でも、わたしがそれを今、口にすることは出来なくて。
たとえ周りが知っていたとしても]
ありがとう。本当に、嬉しいわ。
あなたは、優しいひとね。ナサニエルさん。
[安心させるように、笑ってみせよう。]
[ 静かに響く雨音を耳にしながら部屋を後にすれば、慣れない下駄で廊下を歩み階段を降りていく。一歩間違えれば盛大に転びそうな気がして、此れを履き熟す東洋人は偉大だ等と少し間の抜けた事を考えつつ広間へと向かえば、賑やかな声。]
……今晩和。
[ 逡巡の後に扉を開き、軽く会釈をする。]
今日も大勢の方がいらっしゃるようで。
[二日酔い、の言葉に無意識に眉をしかめる。]
おいしいものが食べれなくなるまで、飲まなきゃいいのに。
[いくらかきつい口調で言うと、すこしだけ表情をやわらげて、声をかけて来た牧師の方に首をめぐらせた。]
ウメボシ?とかナントカ茶は良くわからないけど、確かに、クリームよりもお茶の方が二日酔いにはいいと思うわよ。
…今宵よりは、明日…でしょうかね。
[長くここで暮らしたゆえか、屋敷の構造は把握している。
天井裏すらも。
どう動けばもっとも効率よく、そして面白いことになるだろうか…それを緻密に考える。]
[梅干しを入れた番茶、という言葉が丁度耳に入る。
ありましたっけ、と問おうと使用人の姿を探すと、既に厨房へと向かっているところであった]
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