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…だ…だいじょうぶ、です…。
[ズキズキと痛む箇所を押さえながら、涙目で答えて]
ああ、そうでした。
これをお返しししにきたのです。
[そう言って持っていたハンカチをブリジットへ差し出す]
…それとお話があるのですが、少々よろしいでしょうか?
……。
[あんまり大丈夫に見えないんですけれども。
その台詞は、飲み込んだ。
差し出されたハンカチを受け取り、ああ、と視線を落とした。膝には絆創膏。]
お話、ですか?
ん……と…… どうしようかな。
[異性を部屋に入れるのは抵抗があるのか、返答は鈍い。]
それはどうも。褒め言葉として受け取っておきますよ。
其方もお変わり無いようで。
[相手が眼を細めるのに、如何思ったか僅かに眉を寄せて。
身体を壁へと預けたまま、視線をゆるりと背けて言葉を返す。
命令の内容を聞けば、再び大きく溜息を零した。]
――前者の命令だけで良かったのに。何で。
…まさかとは思いますけど、通信の類は使えるんでしょうね。
わざわざ毎回、貴女と顔を合わせて定期報告だなんて御免ですよ。
[ポケットへと手を突っ込むと、携帯端末を取り出した。
シンプルなストラップと並んだ白金が、チリン、と小さな音を立てる。]
[患部を摩る手を止めて]
出来れば他の方がいらっしゃらない場所でお話したいのですが…。
漆黒なる流星が『遊戯』のために放った二つの流星の欠片の話を。
それと、貴女の決心はついたのか、を。
[含みのある笑みを浮かべる。
先程までの情けなさは影を潜めた]
漆黒なる、流星?
[ぴたりと動きが止まる。
まるで、理解していない――と言ったように。]
……ええと。
何か、勘違い、されていません?
[首を傾げる。
けれど、ともかく部屋先でする話ではないと思ったのか。
躊躇いの後に、中へと促した。]
[洋梨をかじりながら、窓から飛び出した。
そのままゆっくっり、南部へと散歩気分で歩き出す。]
行ってないのは、こっちだよね。
[砂漠へと、向かう。]
―北部―
[幾つか並ぶ硬質な岩の一つへと腰を落ち着けて。
後ろに軽く手を付いて空を仰ぎ見る。下弦の月に、薄く翠を細めて。]
…本当、面倒ですね。
[昨夜には見当たらなかった渋い表情を浮かべ。
ぽつりと零した言葉は、冷えた寒空に白く溶けて、消えた。
ポケットから零れる携帯端末のストラップが
地に転げて、小さくチリンと音を立てる。]
さぁて、ね。
[上の意向は解らない、と言いたげに肩を竦めた。
後の問いを含んだ台詞には、パネルの上に置いていた携帯端末を持ち上げて見せる。じゃらりと鳴る飾りは、煩かったが。]
さてね。
私とて、御免だが。
いちいち「設定」するのは面倒だ。
[五色の玉を、指先で弾いた。
他のマスコットや鈴にぶつかり、また音が立つ。]
それにしても。貴様がこの「遊戯」に呼ばれるとは。
─中央部・廃墟群─
[あの後結局、建物には戻らなかったのか、それとも戻ってまた出てきたのかは、定かではないものの。
廃ビルの一つの屋上付近、鉄骨に両足を引っ掛けた姿勢でぶら下がり。
一人。ぼんやりと逆さまの世界を見つめて]
……ま、取りあえず、ここでやりあうなら、それなりに、と。
しっかし……。
[はふ、と。
零れるのは、欠伸一つ]
さてさて、どっからどーやって先へ行きますか、ねぃ、と。
勘違いなどしておりませんよ。
[中へ促すように扉が開かれると、「失礼致します」と声をかけてから中へ。
扉が閉まるのを確認してから、再びブリジットへと向き直った]
ご存じないはずはないのですけれどね。
貴女はSchwarzes・Meteorに名を連ねていらっしゃるはずですから。
違いますか?
──ブリギッテ=エメト。
[笑みを浮かべたまま、他のものならば知るはずのない組織の登録名を呼ぶ]
…まぁ、連絡を取り合えと言うからには、取れるんでしょう。
通信で取れないのなら、組織の落ち度ですから。
[そこまで律儀に守る筋合いはありませんよ、とけらり笑って。
引っ掛けていた紐を緩めて、端末に繋がった赤の根付鈴を取り外す。
一度掌へ握りこむと、チリ、と小さな音を立てて、
手の中のそれを相手へと放り投げた。]
――嗚呼、呼ばれたのは、義父さんですよ。
俺はその代理なんで。
[紡がれる名がスイッチとなったように、ゆるりと瞬く。
その後に開かれた眼は、冬の如き冷たさを宿していた。]
……さて。
上もまた、面倒な趣向を凝らしてくれたらしい。
其処まで間抜けではないと思いたいがね。
[ゆるりと片手を持ち上げ、放り投げられた鈴を掌に収める。]
……ああ。
代理か。
ならば、 よかったな。
[顔を横へと動かして、指で摘んだ紐を軽く揺らす。]
……ま、ここでぶら下がってても、名案はでねーけどな。
[はふ、と。
出るのは、欠伸とため息がいいところで]
……取りあえず、動くか……。
[ぽつり、と呟きつつ、反動をつけて鉄骨の上へと飛び上がる。
ん、と言いつつ軽く、身体を伸ばしてから、周囲を見回し。
ふわ、と舞う、銀の羽。
翼のみを得て、跳ねるよに、廃ビルの上を翔けて行く]
[視線を音の方へ向けると、面白くないと言った風体のまま。
岩の上へ転がる小さな鈴を指先で弾いた。
紐に繋がった根付に引っ張られて、再びチリと短い音を立てる。
一度翠を瞬いて、小さく吐息を零した。]
まぁ、クリーチャーと出くわしても、手入れが面倒ですし。
流石にちょっぴり寒くなってきたところですし、帰りますかね。
――っと。
[そのまま弾みをつけて、高さを物ともせずに、飛び降りる。
難無く着地を果すものの、勢いでポケットから端末が転げ落ちて
地面へと高い音を立てて転がった。 思わず、眉を寄せる。]
…あーあ。
[――壊れてなきゃ良いけど。
ぽつりと独りごちながら、ゆると拾い上げる。
液晶画面を見やって、寄せた眉が更に深まった。]
[どれくらい歩いただろうか、たまに小走りになったかもしれない。
目の前に、広大な砂漠が広がる。]
…ふわぁ、広いー。
しかも砂だから…刺さらない、ね。
[ぽふ、と足で砂をかき混ぜる。
眉を寄せ、溜息をついた。]
[跳躍を繰り返し、進む。
翼の揚力を得て高所を駆けて行くのは、昔からの『遊び』の一つ。
こうやっていると、気持ちがすっきりする、というのが持論。
実際には、疲労が大きいのだけど]
……いよっ……と!
[中央部と北部の境界線が見えたなら、最後の足場を勢い良く、蹴り。
跳躍、そして、羽ばたきのない滑空の飛翔。
そこに他者がいる可能性などは、全く気に止めず。
ふわり、荒野へと舞い降りる]
─ →北部・荒野─
[雰囲気が一変する様子に笑みを深めて]
我らは駒でしかありませんから。
面倒であろうが無かろうが…自分達が楽しめれば良い。
それだったら。
『アタシ達も楽しむしかないんじゃな〜い?』
[唐突に軽い口調へと変わる。
が、オトフリートの口は動いていない。
その代わりに足元からオトフリートに亀裂が入り、壁の塗料が剥がれ落ちるようにパラパラと剥がれて行く。
剥がれた下から現れたのは、ワイシャツにワインレッドのベストとパンツを着込み、真紅のロングストレートの髪を持つ女性らしき姿。
尤も、その身体に女性特有の凹凸は無いが]
とりあえずアタシとアナタ達が対立する理由も益も無いってことだけは言っておくわね。
それとアタシのことは『ルージュ』と呼んでチョーダイ。
こっちがアタシのホントの姿なの☆
[唐突に姿を現しペラペラと喋る。
相手の意向などお構い無しだ]
ところでアナタ、この遊戯に躊躇ったりはしてないわよネ?
さっきまでのアナタだと、迷ってる感じがしたからぁ、ちょっと心配〜。
[腕を組み頬に手を当てて、少しだけ疑わしげな視線を向ける]
そこまで間抜けな上官ならば、
付け入る隙があって、此方としては助かります。
[くつりと低く喉を鳴らして。
投げた鈴が相手の手に収まったのを確認すると、ゆるりと視線を背けて。
自らの端末には、別の――碧の紐を持つ鈴を再び括り付ける。]
――ええ、全くです。代理を預けて貰える身だなんて。
嗚呼、使い方解りますよね?
[まぁ、使い方もあったもんじゃないですが。
ゆるりと瞬きながら、確かめるように新たに括り付けられた鈴を揺らす。
鳴らせば、対象へと音波が通じる。それだけの仕組みなのだから]
[半分以上、黒に染まった液晶を見つめて小さく吐息を零す。
――これは、使い物になりそうに無いな。
ぼんやり考えて、小さな鈴を鳴らしながらポケットへとねじ込んだ。
硬い岩場に勢い良く落とせば、仕方が無い。]
……、?
[と、月光を遮って一瞬出来た陰にゆるりと仰ぎ見る。
滑空した影が、ゆるりと降り立つのを視線で追って。]
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