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[駆けつけた広間。
混沌とした状況を解するのには時間が足りず]
待て!
[見えた刃に、理解追いつかぬまま部屋の中に踏み込む。
後ろから追いかけてきた同居人にも。そこに向かった視線にも。気付く余裕などあるわけはなく]
[最期に残ったのは]
[凄まじい形相]
[死してなお殺意を撒き散らすかのような]
[憎悪に満ちた]
[そう、ここに来る前の、朗らかで人なつっこい彼の面影を一切忘れてしまいそうなほど]
……っ!
[イヴァンに食い込む、刃。
揺らぎ。
いつか、どこかで感じたような感触]
……これ……は。
……レーネ……?
[真なる力を持っていた少女。
対成す力あるもの。
彼女が傷つけられた時に感じたものと、同じような──]
っ!
止め……っ。
[声は、痛みに遮られ。
その場に、がくり、膝を突いた]
ベアタを手に掛けようとする奴はユルサナイ。
[毒に神経をやられのたうち回るイヴァン]
[冷やかな真紅が彼を見つめ]
[再び刃を振り上げた]
逆らう者には──死を。
[確実に止めを刺すために]
[毒を滴らせる刃は再びイヴァンを襲った]
[真っ直ぐに振り下ろされるその先は──心臓]
[ゼルギウスの短剣がイヴァンを捕らえるのがはっきりと見えた]
ゼルギウスっ!
[イヴァンにエーリッヒが駆け寄るのを見て取り自分はゼルギウスの方に、
とつめて刺激しないように注意をしながら]
ゼルギウス、俺だ、わかるか?
[ゼルギウスの正気を確認するようにそう尋ねながら、
倒れたイヴァンの様子を伺った]
それは…そうだが。
[被害の事を言われれば、戸惑いの色を返す。
ただ戸惑う理由は『言えない事』が主要因だが。
老婆にどう映ったかは分からない。]
まだここに来て数日しか経ってないから、そう決め付けるのも早いと思うけれど。
[軽い混乱。返答にそう、言葉を濁す。]
…何かって、何を?
[問いを順に返す頃には、喧騒が更に大きくなっていく。
マテウスが向うに行ったようだったので、気をつけて、ともいえずただ見送り。]
…とにかく。いくら考えても、イヴァンを信じてる。
結局そこになるんだ、婆。
…ヨハナ婆は、イヴァンを信じてないんだな。
[そうぽつり返した。
その当人が、消え行く命だと。そんな事は知るよしもない。]
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