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――共和!
[やがて広場の入り口に着くと、そう一度叫んだが。ふう、と小さく溜息を吐いて噴水の方へ歩いていき、その縁に腰掛ける。紐を解いてばらけた荷物を横に重ね、ノートとペンを手に取ると、ノートを開き何やらがりがりと書き始めて]
[修道女に別れを告げ、静寂を取り戻した教会を後にする。
夜の帳も下り始める頃、空は刻一刻と色を変え、闇に沈んでゆく]
おや。
珍しい取り合わせ。
[程近い場所にあったイレーネとエーリッヒの姿に零れたのは、そんな呟き。それは酒場で顔を合わすことはあれど、対話している姿は、という意味で]
< アーベルに代わり、白猫が挨拶の鳴き声をあげる >
まあ、俺達が、オト先生の治療に何も言えないのと同じようなことかなあ。
[そして、釘を刺されれば]
う…うん。細い場所よく行くし。確かに…気をつけます…
[オトフリートに注意をされれば、どうしてもおとなしく聞いてしまう。人間、どうしても頭が上がらない人もいるものだ。
少し小さくなっていれば、酒場に行こうという提案に話題をそらすように、元気な声で]
うん。今日はもう上がってきたんだ。
やった、先生おごってくれるんだ、ありがとうございますっ!
早く行きましょうよー。
[うれしそうに言えば、オトフリートの先導をするように歩き始めようとする]
[唐突に響いた声に何事か、とそちらを見やるものの。
そこに、ブリジットの姿を認めれば、いつもの事か、と結論付ける。
続いて聞こえた、猫の声。
振り返れば、白猫と青年と]
おや、こちらもこんばんは。
[挨拶は自然、白猫へと向いたかも知れない]
風の向くまま気の向くまま、ですか。
[冗談交じりの声には、思わずこちらも小さく笑む。]
歩きながらお仕事、大変そうですね。
あ、ならやっぱり、宿の方ですか。
[そう言って視線を外したときに。]
あ…ユリアン。
[真っ直ぐ宿へ向かおうとする人に声をかけた。
一瞬、女将の言葉が思い出され躊躇うが、胸の奥にしまって。]
[エーリッヒを送り出して、今日も1日家の仕事を片付ける。
毎日やることなのだから1日ぐらい手を抜いても良いだろうに、ユーディット自身にはそういう気は微塵もない。仕事をしている、というより、させて貰っている、という意識が強いのか。]
あっついなぁ……。
[ベッドシーツを庭で干しながら、目を細めて太陽を見上げる。
夏の陽射しはきらきらと魅力的、且つ洗濯物を素早く乾かしてくれるので大変助かるものではあるけれど。]
[何気なく、喉に手をあてる。そこに乾きを覚えて。]
……雨のほうが、やっぱり好きだな。
[ぽつりと独りごちた。その顔に浮かぶのは微かな翳り。
しかしそれは一瞬で掻き消え。]
あっ、そうだ、お買い物行かないと!
[ぽんと手を打ち鳴らして、干したシーツを改めてぴんと張って整えた後、洗濯籠を持って家の中へ。
数分後には、机に(一応)エーリッヒ宛に「買い物に行って参ります」とメモを残し、戸締りをして出かけるユーディットの姿があった。]
[ブリジットの叫びに、少しだけ肩を竦めそちらを見る。が、何か主張する前に別のことを始めたので不安を覚えただけで終わり。
代わりにかかってきた声の主に小さく頭を下げた。]
アーベルさん、こんばんは。
あ、カインも。
[よくアーベルの傍にいる白猫に近づき、屈みこんで頭をそっと撫でた。]
疲れが残っていては怪我しやすくなりますからね。
[元気良く歩き始める姿に苦笑ではなく笑った。
大人に混じり生き抜いていこうとする少年の強さには感心する。
だから気になるのかもしれない]
はいはい、一足先にどうぞ。
この鞄を置いたらすぐに行きますから。
[診療所までは先導されるままに後ろを歩く]
今から御祈りにでも?
……と言う程、信心深そうには見えないけど。
[向く先が異なる故か、単にそういう性格か。
夜の挨拶を返す事はなく、投げる問いと次いだ台詞は、他人の事は言えないであろう内容]
そこまで、突き抜けてはいないけどね。
[イレーネの言葉に返すのは苦笑。
村を最初に出た時は、そんな生き方に憧れもしたのだけれど]
正確には、歩きながらするものじゃないんだが、ピアノの前に根を張ってても思うようにはいかないもんだから。
[軽く、肩を竦めつつ。
宿の方に、という言葉は、そうなるかな、と否定しなかった]
[叫ばれた一言は聞こえていたとしても反応することは無く。
内心、またか、などと思っている。
無視を決め込んだ時、聞き慣れた声が耳に入った]
……イレーネ。
[ゆっくりとした動作で振り返る。
その雰囲気はだるそうな、眠そうな、どこかぼーっとした感じに見えたかもしれない。
振り返った先に他の者の姿を見止めると、会釈ではなく、かく、と首だけで頭を下げた]
いや、そういう訳じゃないけれど。
そろそろ、命日が近いな、と思い出しててね。
[挨拶抜きの問いを気にした様子もなく、さらりと返し]
……信心に関しては、大きなお世話ですよ、と。
[それに関しては、自覚らしきものもあるらしい]
わぁい。美味しい飯が食えれば、結構疲れも吹っ飛ぶしー。
オト先生にもこうやって心配してもらえるんだし、俺も気をつけまーす。
[オトフリートの笑顔が見えて、心からうれしくなった。
そして、オトフリートの前をうれしそうに歩く。時々後ろを見ては、他愛のない話を振ってみて。
何事もなければ、程なくして診療所の前までたどり着くだろう]
[アーベルに緩く首を振る。]
私は、教会には行かないですから。
[正確には、教会には行くなと女将に命じられているからで。それは教会に来ないで欲しいという村側の意向があったからだったが(神父や修道女の意志はそこに加わってはいないようだが、与り知る所ではなく)]
何だか、ミリィみたい。
ミリィもずっと座りっぱなしじゃ筆が進まないって。
[エーリッヒに、幼馴染の言っていたことを反芻しながら。]
自分の内側で物を作ろうとする人は皆、大変なんですね。
[彼女にとって、芸術家と称される人はそう見えているらしい。]
……う〜い。
肩こったあ〜……。
[青い顔で、肩をごきごきと鳴らし、がに股の大きな歩調で、ミリィが気分転換に道を歩いている。
乙女のカケラも無い仕草だ]
……やっぱ、あれだね。
何事も根つめすぎるのは良くないね。うむうむ。
あぁ、……成る程。
[誰の者かは知らない筈もなく、僅かな間、逸らした眼差しは過去を思い起こすように遠くを見た。
視線を戻したときには、いつもの薄い笑みに戻り]
まあ、いいんじゃない。
見えもしないものを信じるという方が難しいし。
……信心深いエーリ兄、っていうのも。
[終わりまで言わずとも解るだろう、と言いたげな切り方をして、緑眼をまじまじと見つめた]
[青果店やら精肉屋やら、もはや顔馴染みになった商店を巡り、挨拶を交わしてにこやかにお喋りに興じ(「エーリッヒの旦那は最近どうだい?」「相変わらずですよ、でも少し上手くいってるみたいです」「あんたも大変だねえ」「いえ、私は全然お手伝いできてませんし」)(いつも通りの日常風景)(和やかなひととき)、気付けば夕暮れが迫っていた。]
今日はお夕飯どうするのかな……。
[一通り買ったものを確認しながら道を歩き。
未だ散策中である主人に思いを馳せる。
だが結局、要らないだろうと判断しても、彼の分まで作るのは無意識の決定事項。]
[小さくのどを鳴らすカインに微笑んで、抱き上げようかと手を伸ばしかけたが。]
ユリ
[カインを撫でていた手を止め、疲れが見えているユリアンに慌てて心配そうに近づいた。]
…大丈夫?お仕事、大変だった?
[そう下から見上げた。]
実際、ただ、ピアノや譜面に向かっていても、求めるものは見えてこないからね。
ん……ミリィもか。
作るものは違えど、あちらもやっぱり似たようなものだろうな。
すぐに「目に見える」という点で、俺とはまた違うんだろうけれど。
[目で見るか、耳で聴くかの違いを思いつつこう言って]
んー……内側だけで作ると、結局は自己満足だから。
そこから、踏み出す必要はあるけれど。
確かに、大変、かな?
……。
[ふと、空を見上げる。
夕暮れの赤い光が、ミリィの紅玉色の瞳をさらに赤くする]
……赤い、な。
もう少しすれば、黒。
緑になるには、夕暮れが終わる一瞬。
それから、なんか色々な要因があるって話だったっけか。
青、赤、黒、緑。
他には何色になるだろ?
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