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……だから、言ってんだろ?
そのために、生きるために。
俺は、逆らってんだ、って。
[掠めるのは、苦笑]
かわんない……か。
ああ……。
[それならいいな、と。
言おうとした言葉が途切れ]
………………ブリス?
[代わりに零れたのは、この場にいない、少女の名前]
……そうか…ま、よかったじゃねえの?
俺よりは確実に旨いんだろうからな
[くすくすと笑うのに対してこちらも獰猛な笑みを浮かべた
そして、咆哮を挙げるドゥンケル
それを前にして懐の中のコインを真上に弾き、結果を見ることもなく斬りかかる]
……おい……。
何なんだよ、一体。
何がどうして、どうなって。
あいつらは。
ブリスは、一体、どうなったんだよ!?
[緋色の世界に、響く、問い。
答えは、あるか、否か]
…法王……そんな。
[クレメンスの口から出た名前に、一瞬絶句する]
[だけど、続く話にまた別の驚を]
……二人?ブリジットのほかに、もう一人?
二人のため、ではなく、あなたのために、ですか?
実験のために……。
そのために生きていて欲しい、と。
あなたは、自分の事だけで動いているのですか?
人狼に、なんの感情も持たずに、実験のために……
[マテウスの剣をひらと避ける。][狼の身体能力は人のそれを凌駕し。]
頑張る?何を?
頑張ったって、何も変わらない。
兄も、奴も、あの風…ヴィントも。
抗っても駄目だった。
血には逆らえん。事実は変わらない。
薬師の一族が義理立てして、脈々と保ち続けていた血族のその最後のツケを払わされた!
それが、我等。
だから、あそぼ?
[言って狼はマテウスへと飛び掛かり、その肩を爪で切り裂いて。]
知らなければ…
[思い出していた、古の月の少女]
[場の内にありながら人を喰らうことなく逃げ延びた、人狼]
もう、手遅れですか?
ここにいるという二人は…。
ま、あそこらへんに関わってしまったんですよねぇ。
というより、あそこらへんじゃないとその研究が出来なかったんですかね。
[シスターの思うことが手に取るようにわかった]
[苦笑して]
ええ、二人ですよ。
二人とも、食べたくはなかったでしょうにね…
[痛ましそうな顔をして]
おや、彼らのためでもありますよ。
誰だって死にたくはないでしょう?
他人をたくさん殺した人も、死ぬ間際は死にたくないと言うんです。
彼らが平穏無事に生きていたら、彼らもうれしく、俺も嬉しい。
それでいいじゃないですか。
……おまいは、本気で俺をなんだと……。
[ため息をついたのは、一瞬。
ふるり、と首が左右に振られ]
……コエが。
届いてない……?
緋色のなかに、あいつらが、いない……。
[あいつら、が、誰を意味するか。
他者には知る由もないとは気づかぬままに、呟く]
……場を崩す…?
どうすればそれが叶いますか?
わたくしは…これ以上誰の血も流れて欲しくはない……
たとえ人狼であっても。
そういう――
……あいつら、って。
[誰。
そう、問うまでもなく。
人狼が彼ひとりであるにしては、おかしかった]
[ノーラが襲われたのは、いつだった?]
[近づいた部屋からは話し声がする。
一人は探していた傭兵の声で、残るは聞き覚えがあるが、そうであってほしくないと思わせる言葉使いをしていた。
...は部屋のドアを少しだけ開けてそっと中を覗き見た]
[黒い意識はただその場に留まり。][何も映さず。]
[たまにその一部が揺らぐだけ。][中はだれにも窺い知る事は出来ずに。]
場を崩すのは、力あるものでなければいけないのでしょうか?
昔、人を喰らうことなく生き延びた人狼は、なんの力もない人間によって救われたといいますけれど。
……わたくしには、無理でしょうね。
あいつらは、あいつら……。
あの子を、守るための……いくつもの、ココロ。
それが、見えなくて……。
コエも、聞こえなくて。
なんか、妙な……くろいのしか、見えねぇんだよ、今。
[ふるり、と首を振り。
それから、一つ、息を吐く]
ま……いくらなんでも、気づく……よな。
俺以外にも、いることくらいは。
だって、同じなのに。
私だって、そうなったかもしれないのに!
[痛みの中、それでも叫んだ。
もうここまできたら止まらない、それは分かっていても。
たとえその声は届かなくても]
もう、同じものなんて、見たくないのに…っ!
そうですね。
…まずは人狼が覚醒する場について説明は必要ですか?
[シスターに目を向ける]
一箇所に集まること
そして、満月を迎えること
そうすればすべての時が動き始めます。
動き始めたら、舞台の上に立つものはすべて降りることができません。死以外では。
――であるならば降りればいいだけです。
ここを離れれば。
ただ、この周りは包囲されていますからね。
…
その包囲をくぐらねば、血が騒いで仕方ないでしょう。
力あるものは、場を崩せませんよ。
すべて、システムのうちですからね。
そして俺も崩せません。
俺の動向は、どうにも奴らの手のひらの上のようですから。
[仮説が正しければと告げて]
…それに、人狼が変質していれば、
誰の手もなく場を崩壊させることも可能かもしれませんね。
そこまでは俺にはわかりませんが。
[アーベルの言うことは、理解しがたい。
ただ、普段と異なる状況にあることは、確かだった]
何、それ。
……おかしく、ない?
大丈夫なの?
[問いを重ねる。
彼にもきっと、わからないことだったに違いないが]
状況と、アーくんの様子見れば、……ね。
我慢、していたみたいだし。
それより、それが本当なら、戻ろう。
[男の居る場所からは、アーベルの声は切れ切れにしか聞こえない。「あいつら」「あの子」「俺以外にも」…それだけでも推理は可能だった。あの日、ノーラの傍で蹲っていた少女の姿が脳裏に蘇る]
全く…とんでもねえ冗談だ…
[喉が酷く乾いて、掠れた声しか出なかった。ウィスキーの味が恋しいと心底から思った]
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