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[深夜、静かな夜の中目が覚める、
かすかに感じる意識]
おつとめ、ごくろうさん。
頼もしい仲間がいて、俺は非常に楽ができるな。
[暗い部屋の中でくすりと笑みをこぼす、誰も見ることない笑み。
隣で静かにゲルダのたてる寝息が聞こえる]
[ぎゅ、と掌は握られた。
友は食われ。
師とは親に等しいとも聞くが、それを手にかけたと。
それは少なからずショックだった。
ライヒアルトの胸中を想い案じるものもあったが、何より”そうなってしまう事実””そうしなければならないという事実”が目の前にある事に慄いた。
無論、ライヒアルトが嘘を言っている可能性はある。だが今この場で、自分に嘘をつく意味が見出せない。ライヒアルトが同情を集め、信頼を得ようとする性質には到底思えなかった。]
………そう。
そういう事が、今から起こりえるんだな。
[それらが全て演技である可能性は、ささやかな棘のように残ったが、それを言い出すと、全てを疑わなければならない為に目を背け。
内の葛藤は、彼が口にしたもう一つの事実に気づくまでに僅かの時間を奪った。]
…ん?今、人狼に、与したと言ったな?何だそれは。
よっぽど…その師の身内や親しい奴が人狼で、他の全てを排してでも狼を生き残らせたかったのか?
それとも……何かが狂ったのか―――っ、おい、ライヒー
[まるで胸を押さえ、苦しんでいるように見えた様に、思わず名をまた間違えつつも近づき、肩に手をかけ。]
大丈夫か?
どこか苦しいなら、薬師殿を――。
[呼ぼうとしたが、押さえているのは胸でなく、その下の何かだと気づいた。そこに何があるのかは分からなかったが。]
…大丈夫、なのか?いや、胸を押さえたように見えたからな。
違うなら、いい。
[本人から、否定の言が聞かれると、そっと肩から手を離す。
それでも暫くの間、ライヒアルトの様子を伺った。
時はゆるやかに流れてゆく。
どらくらい間があいたか。
向こうが何かを言う前に口を開いた。]
…嫌な話をさせて悪かった。
だが、聞いておきたかったんだ。
まだ、私達は生きているから。
死なせたくないんだ、大切な人を。
失った命は二度と帰ってこないから。
それが結果…命に優劣をつける事になったとしても。
[菫の瞳は揺れ一度閉じられ。
すぃと、その場から離れ、扉へ手をかける。
一度振り返り、微かな笑みを浮かべながら。]
ありがとう…すまない。
[最後の謝罪に込めた意味は、多く、*複雑。*]
……ああ。
それが、今、ここにある現実だ……。
[掠れた声。
ナターリエの内心の葛藤には、気づかずに]
それは、俺にも、わからない……確かに、師父は奴らに普段から目をかけてはいた。
[そして、そこに自分も友も羨望があった事は否めなかった。
師であり、孤児だった自分たちの育ての親でもあった人。
どうして、という思いは、今でも、ある]
狂ってしまったのか。他に理由があったのか。
……はっきりとした事は、もう……。
[嘆息。
不意に肩を掴まれ、戸惑いながら一つ、瞬いた]
……名前。間違ってる。
[ぼそり、と突っ込みを入れてから]
別に、痛む所がある訳じゃない……昔を思い出して、少し、気を乱しただけだ。
[だから、大丈夫だ、と静かに告げる。
緩やかな沈黙。
それを先に破ったのは、ナターリエの方。
向けられた言葉に、小さく息を吐いた]
……いや……そう、思うのが普通だろ。
そっちは、家主殿への義理程度しかない俺とは違う。
切り捨て、選ばねばならぬと言われたなら、悩むのは当然だ。
[生命に優劣をつける、という言葉。
微かな揺れは、自身が押し隠しているもの。
親しむ者の多い身には、その揺れは大きいのだろうと、容易に察しはつく]
……謝るような、事じゃない。
[笑みには、苦笑めいたそれで返して。
扉の向こうへ消える背を、見送った]
[気配が遠のき、静寂が訪れる。
見上げる猫を抱え上げて、そう、と撫でた]
……師父。
あんたは、それが、己の……そして、俺たちの『役割』と言った。
そして、それからは逃れられぬと。
[呟きに、腕の中の温もりは、案ずるような声を上げる]
『役割』……『要素』。
揃ってしまえば、逃れられぬ場……か。
[それの意味する所は深くは知らぬ。
ただ、そこに何らかの形で教会が関わっている事。
敬虔なる使徒であった師父の行動は、それを僅かに伺わせて。
それが、教会という存在への疑念としてある事は否めない]
ま、なんにせよ、だ。
[呟いて、猫を下ろす。
再び向き直るのは、抱えていたのとは違う黒と、白]
Es ist unheimlich nicht geworden verdorben.
Verunreinigung. haben Sie das Zögern nicht….
[呟くよに、紡ぐ、言の葉]
始まってしまったと言うのであれば。
逃れられぬと言うのであれば……。
……既に幾人もの血に穢れた身……迷いは、捨てる。
[ごくごく小さな呟きは、再び紡がれる旋律に紛れ。
冷えた大気の内に、*溶けてゆく*]
― 集会所二階・個室 ―
[紙に文字を書き付ける。
集会所に集められた者達の名前。
改めて、親しい人間の多さに息を吐き出した]
………エーファ、 だったっけ。
[音に出し、独りごちて確認する。
連れて来られた、見知らぬ子供。
人狼に遭ったことのあるような口振り]
この村の子供ではないと聞いた。
何故、ひとりで。
[疑惑の種は容易く育つ。
しかもそれが、さして知らぬものとあれば。
今のウェンデルが行動に移すまでに、そう間はかからないだろう]
[名を綴り終え、手を止める。
軽くペンを振り蓋をすると、そのまま、胸ポケットへと入れて部屋を出た]
………。
[気にかかったのは、先の疑いの所為だけではない。
仄か、腕に熱を感じたから。
人狼の存在を報せているのだろうか、と思う。
逡巡して、戸を叩いた]
[返答はない。]
[意を決して扉を開く。
冷えた風が廊下へと逃げていった]
[思わず片目を瞑る。
すぐさま窓辺に視線を転じれば蹲る子供の姿。
気配に気付いた様子もない]
いくら室内だからって。
凍えるぞ。
[呟き、中へと入る。
もし獣ならばとも思ったが、それより早く足が動いた。
傍に寄り、肩に手を伸ばす。
揺り動かされた子供の髪の合間から、何かが覗いた]
あお、い――?
[炎に包まれた、花。目を見張る]
…まさか。
[こんな子供が。
声には出さず、呟く。
けれど、ただの痣にしては。
少女のものとは異なる身体に驚くより、意識はそちらにばかり奪われた]
[幾つもの考えが過るが答えは出ず、結局、扉と窓を締め、服を正させ、子供を寝台へと寝かせた。
今を機に殺すことも、気遣い誰かに――薬師に助けを求めることもしない、中途半端な選択]
………。
[すぐには立ち去らず、暫くその場に留まっていた。
時は静かに過ぎていく。
自らの鼓動が、*煩く聞こえた*]
[早朝、浅い眠りから目を覚ますとまだ眠ったままのゲルダの姿。
起こさないようにそっと頭をなで笑みをこぼす]
15年…か……。
[呟く。
ゲルダが起きれば笑顔でおはようと*むかえるだろう*]
─回想・広間─
ん、よぅマテウス。
[何をするでもなく広間のソファーに座っていると]
[マテウスがやってきてしばし話をする]
[団長のこと] [人狼のこと] [今後のこと]
[その会話の中でゼルギウスが人狼の存在を認めていることが窺い知れただろうか]
ああ、そうだ。
ライヒアルトから聞いたんだが──。
[人狼の対処法]
[人の姿をしている間は人と同様の方法で対処出来ると]
[場合によっては変化後でも勝てる可能性があると]
[自分が知る中では最も荒事に向いている男にその情報を明け渡した]
で、物置か薪小屋に使えるものがあるかもしれない。
俺じゃろくに振り回せないだろうけど、お前ならあるいは。
[武器と為り得るものの在り処も告げる]
[自分が出来ぬかも知れないことを彼に託そうと言う気持ちもあったことだろう]
[逃げにも近いが、確実な方法でもあった]
[その後、ゲルダが料理を持って広間へと現れる]
[その姿を見て思わず立ち上がった]
あ…。
……昨日は、ごめん。
あの後、料理食わせてもらった。
美味かったよ。
[まずは無視をしてしまったことに対する謝罪]
[そして料理に対する感謝]
[最初は済まなそうにしていたが、料理の評価をする時は気拙げながらも笑みを浮かべた]
[何度かの会話の後、食事を勧められるようならば相伴に与り]
[食事を終えた二人と別れる]
[もう少しだけ広間で暖を取り]
[温まったところで自室へと戻り寝台に入った]
[寝台に入ると直ぐに睡魔は襲ってくる]
[団長の死] [そしてその検死]
[ウェンデルとのやり取り] [ベアトリーチェとの約束]
[今日だけでまた色々なことがあった]
[深い眠り]
[隣室の僅かな物音には気付くことなく]
[ゼルギウスの意識は闇へと*落ちる*]
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