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何もしていないな、私は。深呼吸の音頭を取っただけ。
ああ、そうだ、会ったら、渡そうと思っていた。
[腰のポーチをまさぐれば、取り出したのはいくらかの薬の包み。]
飲めば、腹痛に効くかも知れない。先生が分けて来いといったから、遠慮なく持っていって。
巫女に?オーフェンも、堕天尸が気になるのか。
[つられて聖殿を見やりながら、昨日の広場の騒ぎを思い出し、話を聞いてあのようになったのならば、さぞ不安なのだろう、と考えて]
僕に……?
……あ、ありがとう
[驚いて深紅の双眸を見開いた。先生?と首をかしげ、誰かから物を貰った経験がないため躊躇いながら、渡された薬の包みを大事そうに服にしまう]
うん、堕天尸……
気になるっていうか……なってるのかな……?
……あ、なってるみたい。うん
[逡巡しながら、最後には頷いた]
……カレンさんも、巫女に会いに来たの?
[結局、クローディアに会えなかった……いやあわせてもらえなかった。最終的に聖殿を追い出された...は、頬を膨らませつつ、聖殿前の広場の隅で座りながら空を見上げていた]
っとに、酷いよね! クロちゃんが大変だから私が気分転換を! って思ったのに追い出すんだもんね!
[折角良くできたスケッチが悲しんでみるのは、心がそういう感情を持ち合わせているからだろう。
知り合いの画家が、絵は見る時の感情によって表情を変える言っていたが、それは本当なんだと初めて知った。
そうして足をぶらぶらとさせているから、...はオーフェンとカレンには気づいていなかった]
[先生、という言葉に首を傾げるのを見て、]
ああ、先生は私の祖母で、施療院……病気の人を治療するところの主をしている。心配性のその人に頼まれたんだ。村のため、巫女に少しでも役に立つように、必要そうな人に薬を差し入れてくれ、と。……傷に効く薬が多かったか。護衛に渡そうかと思っていたけれど。
[戸惑いながら返してくる答えの様子は、ただじっと見つめていたが、ん、とうなずくと、さらにポーチからリンゴをだし、オーフェンの手のひらにぽんと置いた]
……施療……院?
村の……巫女のため……なんだね……
[一瞬眉を顰め、すぐに表情をなくす]
きっと、偉い人、なんだ……ね
[林檎がカレンのポーチから自分の掌に置かれるまでを目で追って、カレンの顔に視線を戻し]
……あり、がとう。
[困ったような顔をして、ぽつりとお礼を言うと、林檎をじっと見つめている]
ん、そうだね、先生は巫女というよりは、クローディアを心配している。
えらい、ね。私よりは相当上位の存在だろうな。私は日々、しかられてばっかりだ。……オーフェンのおばあさんは、優しい人だったのかな。
[黒髪の姉貴分とあわせ、彼女が苦手とする二大人物。わずか、眉が下がった]
泣く子には飴玉か林檎。施療院ではそうしてる。君は泣いては居ないけれど。そんなものをポーチに入れていたら、重くてしょうがないから、持って行ってほしい。
巫女と、クローディア?……違うの?
……そういえば巫女、婆様のお話とは、ちょっと違った……かな
[首をかしげて聖殿に顔を向けた後、小さな声で呟く。婆様から聞いた話は先代の巫女についてなので当然なのだが]
上位の……存在?よくわかんないけど、カレンさん、しかられるの……怖い人、なの?
[心配そうな瞳でカレンを見やり]
婆様……優しい、なのかな。
うん、怒ったり、ぶったりしなかったから、優しい……なのかも。
[一度遠くを見つめてから、手の上の林檎に目を落として]
……うん、ありがとう……持ってくね。
[双眸を伏せ、林檎の匂いを嗅ぎ。もし広場の隅のリディアがこちらに気がつき手を振れば、手を振リ返すか]
[抱え上げ、指示される道を歩めば、いつしか見覚えのある道筋を辿ることとなった。
何かを思い出しているのか、よく回る口も言葉少なくなる。
沈黙と、風の音。木の葉の鳴る音。
エリカの、そしてアヤメの家に着けば、ほんの少し懐かしげに眼を細めてその屋根を見上げる。
丁寧にエリカを降ろし、]
それじゃあね。…あんまり、あやめサンに心配掛けるような事だけはしちゃダメだよ?
[告げて、背を向ける。
その刹那、す、と腕を伸ばされた気がして振り返る。
左右に振られる手>>474。見間違いかと、一人納得する。
謝罪の意味を問おうにも扉はすぐに閉ざされて、それも叶わぬまま。すぐに自らも家へと戻る]
巫女とは、島を護り人を導く役目のこと。クローディアは、今その役目に就いている女性の名前。
近いけれど、指すものは少し違う。
クローディアは、のんびりものの優しい子、という印象があるかな。先生は実の孫より心配しているよ。
[言う口調は、冗談か本気かも分からない淡々としたもの]
そうか、怒らなかったのか、それは少し、うらやましいな。
先生は、怖いし、厳しい。けれど、私が未熟だから、それをいさめるために怒る。私を一人前にするために。
たまに短気が過ぎるのではないかと思うことがあるけれど、大抵の指摘は正しいものなのだろうね。
[心配そうな瞳には、すっと手を伸ばすと、頭を撫でようとしたかもしれない。オーフェンが手を振るのを見て、リディアが広場の隅に居ることに気がつく]
[帰り路に、ふと、背中の翼胞に触れる。
使う必要が無い故に、随分と長い間手入れを怠っている。
それ以上に、自身の手だけでは不可能な部位の事や、風や陽に当てようとすれば、自然人目に付く場所となりやすい事を思えば、重く息を吐いた]
でもなあ…俺の場合、冗談じゃなく命令が来そうだしなあ。
ローディちゃんに見せるのなら、せめて少しは繕うべきか。
[そうして翌日、久々の手入れを決意する]
気が…重いな。
全く、虚だの何だのさえ無ければ…。
[常であれば、傲然とした態で鳴る足音。今日だけはそれを忍ばせて屋敷を出る。
向かう先は森の中にある、地下へと広がる小さな洞窟。
風の通らぬそこは、羽根を持つもの達ならば、厭う様な場所]
[カレンの言葉をひとつずつ噛みしめるように聞くと、先刻会った巫女を思い返しながら]
のんびりもので、優しい……子?
……そうは見えなかったけど、そう……なんだ。もしそうなら、心配……かな。
[羨ましいと聞けば、また驚いた顔。頬が少し熱を帯びる]
ふうん、一人前にするために怒る……んだ。
怖いの、厳しいの、痛いの、悲しいの、苦しいの……正しい?……怒るの、いろいろ、あるんだね。
[不思議そうに首をかたむけ、頭を撫でられればまたびっくりしつつ、目をぱちくり]
ううん、林檎……見たことも、食べたことも、あるよ。でも……何だか、自分で採ったのと、違うの。
[そう言うと、また林檎の匂いを嗅ぐ]
[どれだけ夜に寝たのが遅くたって、朝にやることは変わらない。
いつも通りの時間に起きていつも通りの仕事をする。
今日は、町外れの家で頼まれ物があり、朝から行っていた。
仕事も終わってゆらり、散歩に空を飛ぶ。
太陽と同じ色羽根が、力強く揺らされた。]
―茘枝畑―
[頭の後ろに狐はついて、男は枝を手折る。
見舞いに持ってゆくとした枝は、見事に熟してたわわに実をつけていた。]
そろそろ処分する頃か
[痛んでいる枝もあちらこちら。
この屋敷の者でこの畑に入るのは、狐の男くらいしかはいない。使用人に任せることが多いのだから。]
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