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さて、袋にでもつめさせるか
[天を見た。あかるい。
虚の場所とは違うのだろうと狐は思い、目を眇めた。]
どちらに付けば面白いかなど、当然――
こたえは一つだな。
[不規則に動くひかり。
深きみどりの森を、
高き蒼のそらを彷徨う。
地を歩む獣は見上げ、
天を舞う鳥は見下ろす。
金糸雀色の眼差しは暫し見つめていたが、
完全に見えなくなると、視線を水平に戻した]
[さくさくと草を踏み、森の中を歩く。時折木立が途切れるような場所では、空を見上げ、眩しげに眼を細めた。
金色。何処かで見たような気がするその色に、意識を一瞬だけ逸らし、けれど頭を振って森の奥へと進む。
洞窟の入口に手を掛け、その中へ身を滑り込ませようと]
[昨日、施療院ではカレンと入れ違いになった為、幸い父親の薬は十分すぎる程あったけれど、その分のお金が僅かに足りない。
飛びながら自身の手をじっとみて指を折り折り、何かを数える。]
…こないだ生まれた羊を、売る、かなぁ。
[呟きながら、宙を太陽に向かって飛ぶ。
ふわり、旋回すると地に小さな影が落ちる。]
[びっくりした顔を見て、すっと手を引っ込めた]
そうは見えなかったのか。今は巫女としての役目を負っているから、少し違うのかもしれないね。
こんなときの巫女は、そうそうのんびりしていられないものだろうから。
そうだね。怒るにも色々ある。痛かったり悲しかったり苦しかったりしても怒るだろうね。自分を護るため。
誰かのために正しい理由で怒るのは、無関心よりはずっといい。きちんと怒ってくれるのは、私にとっては助かる事だよ。
まあ、この場合は、叱ると言うほうがいいのかな。
[話を聞けば、納得して、興味を惹かれた様子]
オーフェンが食べていたのは、野生の林檎なのか。これは果樹園から取ったもの。野生のものは、食べたことがないな。美味しいのだろうか。
…ん?
[ふと、眼下の森の中。
獣では無いものが動いた気がして、気になって翼を縦に並べて降りてみた。
どうにも動きずらそうだったので、翼胞に消えるように翼を畳みこみ、何かの消えた方を見る。]
[洞窟の中に入り、入り口の傍に座り込む。奥まで行き過ぎれば、完全に陽の光が届かずに塗りこめた闇色となる。
久々に羽根を伸ばす。一対二翼の、酷く薄い紺碧。
緩慢に身体を揺らすだけでも、痩せた羽根の数枚は離れ、微かに吹き込む風と共に洞窟の外へ飛んでいく]
……は。
[それだけの動きでも、身体が重く感じられる]
……クローディア、巫女になったら、変わっちゃった?
堕天尸と、一緒?
[引っ込められる手を複雑な顔で見つめながら、首をかしげ]
怒る?叱る?
……自分でなく、誰かのため、なんだ……
[むー、と顔を顰めて考え]
婆様……結界樹に閉じ込められたのも、婆様のため……だったのかな?
[ぽつりとつぶやく。果樹園で取れたという林檎をくるくると回しながら]
うん……野生の林檎、美味しい。
樹の上で、鳥さんたちと一緒に、食べるの。たまに、酸っぱい。
[酸っぱい物を食べた後のように顔を顰める]
…誰か、居るのか?
[薄暗い森の洞窟は、目が慣れるまでうすらとしか見えず。
しかし気配は獣のそれでは無いような気がしたので、声をかけてみた。
子供なら、怖がらさないようにと優しげな声で。]
[高きにある実に届かぬから、
低きにある花を摘む。
手に取る際に紡ぐ声は、かれらの言葉で]
sian'emog,
……好い香り。
[白い手に収まる紅花。
微かに、口許が綻んだ。
花弁の裏に口づけるように触れて、
そっと味わうのは、甘い蜜]
[その頃、
ひかりの鳥は似た煌めきの翼を追ったけれど、
途中で消えてしまったものだから、
結局、彷徨って、迷い子のように、ゆらり、ふわり。
二、三度 明滅したのち、再び、目的地に向かう]
[動かせぬ翼は手入れも難しく、懸命に腕を伸ばし一枚一枚羽根を探る。不要なものを引き抜いては地に落とす。
不意に、人の声。手元が狂い、]
……ッ!
[古傷を伸ばし、呼吸が止まった。小さな悲鳴。
声を返せぬまま、痛みに蹲る]
[ふわり、洞窟の中から浮いて飛んでくる紺碧。
目でそれを追い、手を伸ばして取る。
洞窟の奥へと身をかがめて覗き込み、もう一度声をかける。]
誰かいるのか?
怪我してるのか?
[紺碧の翼に、思い当たる人が居なかったので。]
[知らせを受けた場所は明確ではなかったが、
凡その位置を把握して、ゆったりと歩みだす。
持ち帰ろうかと思った花は、手に残ったままに。
さくり、さくりと、小さな足音。
森の奥へと消えていく]
[少年が幼い顔をしかめて考え込み、口を開くのを、じっと見つめていたが、出された言葉にはこちらも難しげな顔になり]
巫女の役目を負うことが、堕天尸と一緒か。オーフェンは、面白い事を考える。
変わるという点では、そんなに違いはないのかもしれないね。世界の中のたくさんの事象に影響されて、人は変わっていく。巫女の役目や、虚の影響も、きっとその一つ。それが大きな変化だから、皆問題にする。
お婆さん、虚の影響を受けたことがある人、だったのか。私は、そんな人が居たことすら、知らなかった。
……堕天尸は、何を考え、何を望むものなのだろう。
[最後の方は、独り言のように言った 林檎の話をし、顔をしかめる様には、ふっと口元が笑みの形になり]
そうか、私がよく飛ぶ辺りには、見つからないんだ。今度、暇なときに探してみよう。
[細く薄い羽根が、痛みを堪えきれずに背で震える。
入口からの光が遮られ、逆光となるその人物を見上げる]
…へー、き。
[痛みを殺して、声を返す。顔色は蒼白。
乾いた唇は、思い当たる人物の名を零す]
あ……、ラス?
んだ、カルロスか。
全然平気そうじゃねぇな。
[自らの尊敬する人が軽蔑している、幼馴染にちょっかい出した人物― だが自身は好き嫌いを語る程親しくは無い、「異端」の人を見る。
自分が影になって居るのを察知すると体を横に避けながら、手を差し伸べた。]
何かいるか?水でも汲んでくるか?
何かにやられたのか?
[細く薄い羽根に目を奪われながらも、無理やりその蒼白の顔に視線を戻した。]
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