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ショール一枚じゃぁ、少し寒いわ?
[少年の笑顔はとても可愛らしい。
わたしは少し考えて、ハーヴェイに頭を下げてから、
彼の後につづいて広間に入る]
―→広間―
[やや強引に話を変える様子にそれ以上訊く事も出来ず。
目の前でそそがれたワインのグラスを取って]
まぁ、言えない事は誰にでもあるから、ね。
[以前ローズに言った言葉をくり返して、グラスに口をつける。
先日のものとはまた違う、芳醇な香り]
[が、ハーヴェイに投げられた言葉に、慌てて振り向いて、]
ちゃんと、洗いましたってば!
濡らしてるだけなんてそんなこと…してませんっ!
[一瞬口ごもったのは、たまにめんどくさくてちゃんと洗ってない事もあるからで。でも今日はちゃんと洗ってるし、女性達の前だし必死に反論。
さっくり笑いながら去られたのも、もちろんお約束。]
[暫く鋭い目で牧師の目を見つめていたが、ふ…と笑みつつその長い銀の髪をひとふさ、指に絡めた。]
別に、関係のないことですよ、えぇ。
…姉亡き今では、あの人とは赤の他人ですから。
いろいろよくしてはもらいましたけど、ね。
[ 去り際に先程の侍女に何処へ行くのかと問われれば、]
一寸、煙草を吸いに。直ぐ戻ります。
……まさか、こんな夜中から森に入りませんよ。
[微苦笑を浮かべながらそう答え、重い観音扉を開けば夕方よりも冷えた夜の風が吹き込み、黒曜石の瞳を細めた。自然、僅かに身体が震える。]
あー……、上着持って来るんだった。しまった。
[ トビーの事は云えなかったかもしれないと思いつつも、其の儘外へと出る。流石に闇が深い為に崖の方に近寄りはせず、館の壁に背を凭れて天を仰いだ。]
[出ようとすれば、ちょうど居なかった面々が戻ってくる所で。
行き違いになったなあ、と思いつつ、軽い挨拶をして、広間を出る]
……さて、どうしようかな。
[小さく独りごちてから、足を向けるのは音楽室]
─広間→音楽室─
ネリー、ね。
私はヘンリエッタ。
これからよろしくね。
[これから。
自分で言った言葉に、自分でも驚いた。
ここにいなさいと、彼は言ったけれど、自分はここで何をすると言うのだろう。]
俺は……
父が、そうだったと聞いている。
[ 父。其れを口に――否、聲とするのは些か躊躇いがあれど、容易に伝わる方法だと判断してそう答える。声が震えるのと同様に、思念には揺れが現れたろうか。]
“人狼”。
[ 人にして獣の力を持つ者。或いは、獣にして人の心を持つ者。]
そう、呼ばれるものであったと。
[けれど、広間でぬくもった方がいいとの言葉はいかにも正論で。]
…そうですね。
ボクに貸してくれたから、ローズマリーさんが冷えちゃいそう…よかったら一緒に行きませんか…?
[どうやら広間から出てきたのではなく、入ろうとしているローズマリーの言葉を受け取り、おずおずと広間へと促した。]
−→広間−
[ 闇夜に煌々と輝く月は光の雫を零し青年の横顔を照らす。]
呪われし血だと、母は云っていたが。
[ 其れを映す黒曜石もまた金の色を帯びて、人には在らざる輝きを孕む。]
─音楽室─
[当たり前と言えるかも知れないが、そこには誰もいなくて。
ただ、静かにピアノや、それ以外の楽器が佇むのみ]
……なんか、急に色々起きたなあ……。
さすがに居辛いけど、でも……。
[呟いて、鍵盤に指を落とし。
音色を一つ、紡ぐ]
……多分、まだ……ムリ、だよね。
[ため息混じりの呟きは他の誰の耳にも届く事無く、ただ、*紡がれる旋律にけて*]
ヘンリエッタ様…ですね。
宜しくお願い致します。
[少女の目線の高さに屈んで、告げられた名を繰り返した。
少女が僅か戸惑っているように見え、ほんの少しだけの違和感、けれどそれはすぐに消えた]
わたしは、大丈夫よ?
[トビーの言葉に笑って。
メイを見送ると、一緒に広間に入った。
出て行く牧師さんは、とてもお疲れのようだから、頭を下げて]
お父上が…。
[そういえば、彼は母子家庭だったとふと思い出す。]
そう、我らは人狼。
人に化け、人に巣食い、人を喰らう獣。
…少なくとも、僕と姉は。
[既に酔いが回っているらしいコーネリアスと、速いペースでグラスを空けるルーサーの様子に心中察したか何も言えず]
あまり旅人が余計なことに口を挟んでも、ね。
[そういって自分もグラスを空けて、また新たにグラスに注いで。
普段の自分から見れば、それは無茶なペースかもしれないが]
−広間−
[広間に足を踏み入れれば、ネリーと赤毛の少女が自己紹介をしているようだった。]
ヘンリエッタ…か……。
[ネリーが繰り返すのにつられるようにその名を呟いて。
ふと、金の髪の少女の姿が見えないことに気付く。そして彼女の名を知らないことも。]
……まぁ、別にいいけど。ボク明日には帰るし。
[なんだか残念な気がするのは、気のせいだろう。たぶん。]
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