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あ、はい。
[アーベルを見送り。
傍で聞いた筆の特徴について、口の中でなぞるように繰り返してから]
じゃあ、また。
何かあったら言うから。
[兄にもそう言って、広場を離れ。
自宅へ向かう]
ありがとう。
[にこにこ笑いながら、筆を受け取って
青や赤、黄の色をキャンパスに乗せる。]
長さまのこころのちからで。
そとにでられますように…。
[小さく呟き、また、ぺたぺた。
暫く色を塗り、またリディへと絵筆を渡し。
そんなことを何度も繰り返す。
そして同じ頃、ギュンターは、不調を訴えたりしているのだろうか?]
まあ、使われないのを祈ってるけど、な。
[アーベルの言葉に苦笑しつつこう言って]
俺よりは、ってのは、全然自慢にならんから。
……誰かに言われんでも、ちゃんと寝食とるようにしてくれよ、ほんとに?
[広場を離れる弟には、こんな言葉を投げかける。
妙に諭すような口調は、時折零れるもの。
それが何を意味するのかは、定かにはしていないが]
さぁて……んじゃ、俺も一仕事してくるか。
じじ様と、これからの事を話す必要もあるから、後で家に行かんとな……。
[ぶつぶつと呟きつつ。
足を向けるのは何故か、*洞窟の奥の方*]
―泉―
二つないと駄目らしいけど、何が駄目なんかなぁ
[ぼんやり思いつつも周囲が解散したことで、どう重要なのか。その重要度が薄く感じて]
さーて、さっさとしないとな。
[だから生活…暮らしに戻る。
ここで誰かが糸を紡ぎ布を織るように。キノコを栽培するように。石器や土器をするように。海人は海に潜りその産物を取ってくる。それが役割。であると]
[出来た絵には、とても満足をした。
だけれど、心の力が溜められたのかどうかは、今一判らなくて。]
ね、長さまどうなってるのかな。
この絵、何処に持って行く?
[絵筆についた染料を水で落とし、丁寧に布で拭ってから
乾き始めた絵を見て、聞いた。]
かくしておくなら、何処にかくそうか?
[その絵は、きっと次の日に誰かに見つけられてしまうのだけれど、
それはまだ少女達はあずかり知らぬ事。
只今は、今のテンションで頭にやや血が上っていた。]
何処か、良い隠し場所、知ってる?
無いなら、んー…
[少し考えはじめる。]
[そして水を汲んで頭に抱えて家路について]
―自宅―
ただいまー。戻ってきたぞ。遅れてごめん
「おかえり、アーベル。ちょっとそこに座りなさい]
は?…ああ、いいけど。魚とかいいの?
[それはもうやってきたから。といわれ座る。そして対面する位置に母と父。何かあったのか?とか思いつつ、一端桶を隅のほうにおいて座れば]
「アーベル。先ほどご近所さんから噂を聞いたのだけど、知ってるかしら?」
ああ、絵筆が盗まれたって。
「ええ、大変な事態よ…」
……そうらしいけど、どう大変なのか俺わかんねーんだけど、母さん知ってる?
「……知らないわね。そういえばどうしてなのかしら」
[母にあっけらかんと言われて思わず突っ伏しそうになった。]
おもいうかばないけど・・・
うーん
綿毛のなかとかなら、見えないかなー?
すぐ気付かれちゃうかな?
でも、どこかにおいておこう。
きっと隠せる場所はあるよ。
こっちの台詞だよ、本当に。
[自宅の扉の内、吐息混じりに零した。
同じ言葉を、帰り際に兄に返したかも知れないが。
真意には気付くや否や。
ふるりと一度、首を振る]
[とにかく大変な事態ということで話は進んだ。大変っていってたし、大変なんだな。で納得しとく気楽な家族だが]
「母さんは、アーベルのこと信用してるわ。あなたはそんなことしないって」
う…うん。…どしたの?改まって
「だから…素直に出しなさい。お父さんと一緒に謝ってあげるから」
[今度は本気で突っ伏した。前後の繋がりがわからんぞおい]
…ちょっ。信用してたんじゃなかったんかいっ。ってかそんなことしてねー!
「そ、そんな、いつのまにアーベルはこんな嘘をつく子に育ってしまったの…」
[思わず涙ぐむ母親。]
「…母さんを泣かしてはいけない…」
俺が泣きそうなんだが、それ以前に息子を疑うなーーーー
「こんな子に育ってしまって…少しはミハエル君やエルザちゃんを見習いなさい」
ユリアンとリディは!?
[とかなんとか色々言い合いが開始]
つまり…遅れたからそのお仕置きということですか…
「ええ。でも面白かったしいいでしょ」
[思わずぐってり疲れた。ジト目でみても笑みを絶やさない母。女性は強いと。ミハエルが呟いた言葉に同意しておいて良かったと思うが]
「でも何か大変みたいよ。ねぇ?あなた」
「…ああ…ギュンターが言っていたからな…」
…そなんか。どして?
「…仔細は聞いてない…」
…ふーん。
[なんとなく気楽に構えていたが、父が言うからにはそうなのだろう。と考えを改め、一度甕に汲んできた水を継ぎ足した後。*聞いた筆の特徴など口にした*]
[ともあれ、先ずは作業が先だと思う辺り、五十歩百歩なのは否めない。
二階自室まで辿り着き、部屋に入る。
と、]
っ、
[右の首筋を押さえた。
そこからじわ、と熱が伝わるような]
…何か、したっけ。
[そんな風に呟けど、思い当たる節と言えば、変な体勢で寝ていて寝違えた可能性くらいで。
それにしたって今更だ。
首を傾げながら、確かめようと上の釦を外し、前をはだけ。
部屋に備え付けてある鏡を覗き込んで]
な、
…これ、
[見えた形に愕然としたまま、数歩下がる。
それが意味することは、十分に理解している]
嘘だ。
なんで、僕が。
[呟きは殆ど音を為さず。
すぐ傍にある机の上、手に触れる紙がかさりと音を立て。
首はそちらに動く。
されど今、緑はただ虚ろにそれを映すだけ**]
― 図書館 ―
[書庫の一角、鍵のかかる書棚に並べられているのは歴代の絵師と、彼らの描いた絵の記録……つまりは「死者」の記録だった。絵の記録の方を手に取って、最近の部分のページをめくる]
・・・・・最近は事故や病気での若死には無かったが・・・・・
[近親者や親しい相手を亡くして絶望した者が、その反動のように空への憧れを強くするのはこれまでも起こったこと]
・・・・・・・・
[自らが記録したページの中に、その一人であった兄の名を見いだして、しばし手を止める。当時の司書であった兄は恋人を病で亡くし、その最期の願いを叶えようとして、海へと向かい、二度と帰らなかった]
[一人残された自分が、兄の絶望の真の意味を悟ったのは、司書の勤めを引き継いだその後のこと]
・・・・やはり、記録からでは人の心は見えないな。
[嘆息して記録書を棚に戻す。絵師には、絵の中の心が見えるのだろうか?と、ふと思った]
―綿毛の大畑のある区画―
[糸紡ぎ場に入ると。
すでに来ていた人々、絵筆盗人の話題に達し騒然としていた。
首を竦め、作業用の布袋を引っ張り出す。
それから袋を抱え
同職の子供と、畑へむかう道すがら]
聞いた、ティム? 絵師様の筆が盗まれたって。
たいせつな筆だけど、取引して得になる品でもなさそうだし、欲しがるひとなんて居るのかなぁ…
「盗人は、絵を描きたいんじゃない?」
「並んで歩みつつ、ティムはあっけらかんと]
…絵師様以外には使えないんじゃない、あの筆…。
ふつうは、そうかんがえるのだ。
[絵師以外が『力』を操るなど。これまで発想になかったから]
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