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[語られる予測に、軽く、肩を竦め]
まぁ、いい結果は得られんだろうね。
絵から解放すれば、事なきは得られるだろうが……解放には、つがいが揃う必要がある。
早いとこ、持ち出された方の筆を取り戻さんと、まずいな……。
……全く。
お前が抜けているからだぞ。
いっそ、あんな絵筆など、
[持ち運んで来た男が部屋を出て行くのを見送ってから言いかけ、
「なければ」との一言は爪を噛んで飲み込んだ。
子供染みている]
いや。
今、言っても仕方のないことだな。
……はいはい。
抜けてるのは、今更否定しないよ。
[飲み込まれた言葉は察しがついていたから、それには触れず]
とにかく、早いとこ『絵筆』を見つけないとな。
さすがにこうなると、悪戯の一言で片付けるわけにはいかない。
……と、探すのにこれが必要なんだっけ、そう言えば?
[言いつつ、ふと思い出したのは広場でのやり取り。
内ポケットから、布に丁寧に包んだ筆を出しつつ、確かめるように問いかけた]
みつかっちゃった?
ほんとうに?
やだな…
[声は、少し、沈む。
目に映るのは、散る綿毛。]
まだ、足りないってことなんだよね?
だって、まだ、もどれない…。
……そうだな。
[口から手を離すと、額に当てて息を吐き出す。
一時閉じていた瞳を開いて、出された筆を映した]
ああ。
水晶花から作った薬と、
知りたいものに親しいものと、
知りたい相手の一部。
材料を揃え、呪を加えれば、真実の色を示すのだという。
と言えば格好は良いが、
匂いを辿って繋がりを探り白黒を判定するようなものだな。
[身も蓋も無い言い様で締めくくる]
問題は、一度に分量が作れないことと、信憑性か。
信憑性はなくても、今は手段は選べない訳で。
あー、なんか、切るもの持ってる?
[苦笑しつつ言って、布の包みを解く]
……しかし、じじ様がこういう事になると、荒っぽい連中抑えるのが難しくなるな。
どうやって、納得させたものやら。
まあ、確かだな。
都市もそれなりに広い、持ち物検査をするにせよ、
隠し場所など数多くあるだろうし……。
[解かれる包みから現れる漆黒を視界に入れつつ、
鞄から鋏を取り出して、持ち手の方をエーリッヒに差し出す]
これで良いか?
……持ち歩くのが一番の方法とは言え、
不用意に出したり私に見せたりしていいのか、お前は。
[つい小言めいたものが口をついて出る]
荒事は私の領分ではないからね。
絵師の鶴の一声でなんとかならないのか。
こういうときにばかり頼るのも癪ではあるが、原因だろう?
知られてない横道とか坑道も、結構あるからねぇ。
[軽く言いつつ、受け取った鋏で絵筆の毛を切り落とす]
ま、薬師殿は信用してますから、一応。
[小言めいた言葉には冗談めかして返すものの、続いた言葉には、眉を寄せた]
確かに原因だけどなぁ。
なるべく、落ち着かせてはみるが……どうなるか。
強行手段も、視野に入れておかなきゃならんかも知れん。
こうなったからには、持ち出し側も筆を大人しく返すとはちょっと思えんし……ね。
[毛を包むための紙を用意しようとして、
エーリッヒの言葉に動きを止めた]
……、…一応かっ。
[少しだけ、むっとしたような響きが滲んだ。
思案げな様子を認めれば、直ぐ、真剣な顔に戻るのだが]
強硬手段――?
だれに、しよっか。
[みつかったら、おこられる。
男達をみながら、少女は少しばかり、恐怖を覚えていた。
はやく、しないと。]
…2ほんあったら、ふたりで別々に。
いっぺんにふたり、描けるかしら…?
[小さな呟きは
相手の少女に、届くだろうか――?]
[綿毛畑が蹂躙されていく様を見ているのは
なんだかとても、胸のあたりがきゅうっと
苦しい気が、して。
ぱたぱたと、走り出した。]
…いたい……。
[胸元を押えたまま
腰の辺りで、肩から提げた鞄を跳ねさせつつ少女は走る。]
―診療所―
[走って来たのは、診療所。
何度も前をうろうろしてからそうっと中を見ると、ブリジットが居るのが見えるだろうか?
ミリィが居る様子が見えなかったので、少しだけ眉を下げて]
…いない、の。
[呟いた。
周りの大人たちが、長が、とかどうとか、
ブリジットを含めて話をしているのが聞こえる。
目をパチパチと瞬いて、首を傾けた。]
[むっとしたような響きに何を思ったかは、表には出ず。
疑問の声に、軽く、肩を竦めた]
非力でか弱い平和主義者の俺的には、避けたい所ではありますが。
名乗り上げが期待できない以上、疑わしきは……の流れは止められないかも知れん。
[静かに言いつつ、鋏をテーブルに置いて、切り取った毛を差し出す]
……とはいえ、物理的にどうこうした所で、自白はせんだろうから。
最悪……あちらさんと同じ手段をとる事になるかも知れん。
[つまりは、疑いを多く寄せられた者を、一時的に『封じる』という事]
……できれば、やりたくないんだけど、ねぇ。
「で、さあ、筆がなくなって、
亡くなった人の絵を描くのはできんの?」
絵師の筆は2本あって、それで対になってるんだって。
だから、残ったもう1本で、絵師様も続けられるのだ。
…でも片方だけでもなくなっちゃうと大変みたい。
[エーリッヒから聞いた話、反芻しティムにも教え]
[やがて綿毛の畑に着いた。
息を吐き、一面の白へ瞳をはしらせると
布袋を肩にかけて、裸足で歩みつつ、仕事にはげみだした]
[エルザをみかけたら、手を振って]
[そして突然、男たちが畑へ踏み込んできた。
何かを捜索するような、彼らの挙動には呆気にとられて]
長さま、どうなっちゃったの?
いなくなっちゃったの?
[きょとんとした顔のまま
近くに居た髭の男の腕を手を伸ばして捕まえ
じっと目を見て聞いてみる。
少女のそんな様子に、男はぐ、と何かを飲み込み
乱暴に腕を振り払いながら、そうだ、と言った。]
絵を、かかれたの?
[絵師が描いたわけじゃねぇらしいよ、とだけ言って
男は大股に少女から離れていった。]
[差し出された毛を受け取り先の髪と同じように丁寧に包むと、今度は鞄に入れる]
……確かにそれは、起こり得ることではあるが。
そんなことに使うのか。
絵師の力を、 お前の絵を。
[一時、卓上に置かれた鋏に視線を落とした。
ひどく冷たく映る。
混乱に陥った町人らが暴力に訴えるよりは、あらゆる意味で――
絵師の力を誇示して抑えられると考えれば、マシなのかもしれないが]
第一そんなことをすれば、お前自身の身が危ういかもしれんぞ。
なら、だいじょうぶよ。
だって絵をかいてもらったら、
みんなおなじばしょに行くんだって。
[にっこりと、少女は笑う。
彼女の両親が事故で死んだ時、
少女にはそう教えられたから。
絵を描いてもらえば、ちからになる。
それをひとつに集めるのだから、
みんな同じばしょにいくのだと、彼女はいう。]
……正しい『用い方』ではない。それは、承知している。
[見上げる視線を、静かに見返しつつ、言葉を綴る]
だが、一番混乱を抑えられるのも事実だ。
俺の身の危険はまあ……十分にあり得るが、それを言ってたらきりがないし、それに……。
……氷面鏡に、新たな『月』が映った。
だから、最悪には、備えられる。
[新たな『月』が何を意味するかは、『絵師』の印を知る者には察しがつくだろう]
……とにかく俺、そこら相談してくるから。
一応、じじ様の様子、診といてくれな?
[一転、いつもと変わらぬ軽い口調で告げるものの。
緑に宿る光は、険しさを帯びたまま**]
[診療所では、ブリジットが色々な患者(元気そうに見える老人達が集うのは何時ものことなのだろう)にてんやわんやしているようだった。
少女は診療所へと来た原因ももう薄れていたから、
離れようと足を踏み出す。]
おしごと、できないって。
おかみさんにいわなきゃ。
[はたと思い出して
足を、おかみさんの居る食堂へと、向けた。]
「な、なにすんだよ」
[離れた所からティムの声が聞こえてくる]
ど、どうしたの、何があったの…。
[畑で働く者たちからも、軽い抗議があがってくるか]
[受けて少々、男たちは狼狽し。
周りに向け、そのうち一人が事情を告げはじめた。
ギュンターが倒れた事。
盗まれた筆によって、彼の心が絵に封じられたらしい事]
「でもさ、長は御年だったろ。ほんとに病気だったとか。
…長の絵をエーリッヒ様が描いたってのはないわけ?」
な、なに言ってるのだ。
そんな事、エーリッヒ様がするわけないのだ…!
[疑念を表したティムへ、ぎょっとして。食ってかかる]
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