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はぅ。
…よかった、です。
[ロミルダはひとしきりそれを眺めてから、安心したように息を吐く。
それからスケッチブックを閉じて、白猫の折り紙を持って、ダーヴィッドの姿を探しに立ち上がった。
一晩で見つからなかったなら、一度部屋に*戻ることになるか*]
――…そうだね。
だから、その前に。
[何処からか、或いは、最初から。
可笑しくなっていく理由。
そのことには、未だ、気づかずにいる**]
[ばさばさという羽ばたきの音。
それに紛れて届いたカルメンの声に驚いて振り返る]
お前、今度はブリジットが見えるのか?
[多分カルメンはいつものように無邪気に肯定を返すだろうか]
……「魂見えると一人、いい」
本当に…?
[あの絵本と符合する事に僅かばかりの不安を覚える。
食事について訊かれたなら]
いや、今はいいや。
疲れたから部屋で休んでくる。
[そういい残して二階の部屋へと*向かった*]
―夜中―
[広間を出て、部屋に戻る振りをして]
[誰を壊すかを考えながら集会場の中を歩く]
「ハインリヒさん?」
[不意に掛けられた声に驚いて振り返る]
[暗がりの中の金の髪]
…エーリッヒさんか。
[いつの間に戻っていたのか、そこには彼がいた]
[どくり、と、心臓が大きく脈打つのがわかった]
[浮かぶのは朱い花]
[それを思い出した途端に体の奥が疼いた]
[悟られぬよう、怪しまれぬように笑顔を作る]
ちょうど良かった。
この間の話の続き、聞きたいんだけど、いいか?
[普段の自分ではないような丁寧な物言い]
[いけない、とは解っていた]
[約束も覚えていた]
[だけど、古からのそれはいとも容易くそれを反故にする]
[エーリッヒは意外なほどあっさりと申し出を受けた]
[彼の人柄か、それとも何かに気付いたか]
[向かったのは、二階のエーリッヒの部屋]
[一階には人が多すぎたから]
―二階・エーリッヒの部屋―
[部屋に入って、エーリッヒがランプに灯を灯すのを待たずに話し始める]
あんたさ、人狼を救うんだろ?
[唐突なそれに驚いたように瞬いてエーリッヒがこちらを見た]
[まだ灯りのないその部屋で、その瞳は紅く見えただろうか?]
「…貴方は…」
[エーリッヒが発したのはそれだけで]
[オレは笑って話を続ける]
オレを救ってくれないか?
……その、肩に咲いた華で。
[ニヤリと。その口元に伸びた牙が見えただろうか]
[エーリッヒが息を呑んで、何かを言おうと口を開ける]
[次の瞬間、黒い影が彼を掠める]
[既に獣のそれと化した長い爪が、その喉を掻き切って声を奪う]
「……っ…」
[紅が迸って腕を汚す。それすら歓喜を呼んで]
[衝撃によろけた彼にそのまま圧し掛かるのは獣の脚]
『人を呼ばれると困るんでね』
[その声は彼にはただの唸り声にしか聞こえないだろう]
[抵抗しようとする彼の手を爪で振り払う]
[また、紅が散った]
[そして彼のシャツ、その肩口を切り裂いて]
[肩に咲いた、その朱い花に噛み付いて]
[引きちぎる]
[エーリッヒの口から声にならない声が零れた]
[その瞬間、今までにない歓喜に全身が震えた]
[ただ、夢中で彼の肩に咲いた華を貪って]
[彼の腕の茨を貪って]
[それが止まったのは、彼が既に動きを止めたと気付いたとき]
[その瞬間に我に返る]
[約束を破ってしまったことを思い出す]
…しまった。
[だけど、もう、遅い]
[エーリッヒから離れてベッドから毛布を引き剥がして]
[それを隠すように]
[そんな事をしても無駄だとわかっているのに]
[そうして、物音を立てぬように部屋を出る]
[漣がこれを知ったらどうするだろうと思いながら]
/*
というわけで、襲撃描写終了です。
不快に感じたらすみません。
傷(というか破損箇所)は「首に深い切り裂いた傷」と「肩から腕にかけて食いちぎられた状態」
利き腕と思われるので右肩かな、と。
漣の怒りはしっかり受けますので。**
―1階・廊下―
……へーき。
ちょっと休めば、落ち着くから。
[広間に向かう途中のハインリヒの言葉>>64に、短く返す。虚勢なのは、隠しようもないけれど]
……どこで休んでても、俺の勝手だろ……?
大体、なんでそこで、ダーヴとロートスなんだよ……?
[ゲルダ>>66には、やや憮然とした態度を取るものの。
押しつけられた冷たい布に、険は失せ]
……ああ。
ありがと、な。
[小さな声で、短く返す。
届いたかどうかは、定かではないが]
[冷たい布を額に当て、深く、息を吐く。
名を呼ぶロミルダ>>68に返すのは、なんでもね、という短い言葉。
それ以上は問わずに駆けていく少女を見送った後、壁から身体を離して台所へ戻る。
台所では、鸚鵡が所在なくしていて]
……なに、やらかしたんだお前?
[妙にしゅん、としている様子に問う。
暴れた、と言う話を聞かされたなら、ごめんな、と苦笑して]
俺、ちょっと疲れたみたいだから、休むわ。
[食欲は余りなかったから、備蓄から果物を幾つか持ち出して、鸚鵡を肩に部屋へと戻る。
戻っても、すぐには休む気にもなれなくて。
手を伸ばすのは、葦笛。
気を紛らわすように、或いは静めるように。
しばし、音色を*紡ぎ出す*]
[少し前、産室を出る時、もしかしたらゲルダと擦れ違ったかも知れないけれど、ロミルダは立ち止まらなかった]
ダーヴさん、いるですか?
[確認して、広間を出てから、まず覗いたのは台所。
そこに目当ての姿があったなら、紙の白猫を渡そうとするか、いなければ持ったまま。
食事について聞いたなら、一つうなずいた]
あっ。
そういえばゼルさん、お話ってなんですか?
[それから腫れたままの目で見上げながら、ゼルギウスに問うたのはどれくらい後のことか。
本人からか、或いは他から返事があれば]
…そ、ですか。
[ロミルダは怯えたようすもなく、ただ少し考えるような*素振りをした*]
――集会所2階・個室――
[時の流れは平等だ。
夜が更け一日が終わって、 それから、朝が来る]
……かあ、さん。
[眠りから覚める間際、小さく漏らした言葉。
身を起こして、まだ重たい瞼を擦る。
見た夢は、よく覚えてはいない。
ただ、何の夢かはわかった。
何故見たのか、なんて理由も容易く知れる]
――…おはよう、冴。
昨日は、きちんと、壊せた?
[確りと眠りについていた娘は、未だ何も知らず問う。
結局、誰を殺すかは聞いていない。
問いかけには暫く答えが返らなかったけれど、休んでいるのだろうと、そのときは、それ以上話しかけなかった]
[部屋を出、視線を落として廊下を進む。
元から遅かった足取りが、急に止まった。
一室の扉の前。
床に、汚れがある。赤い。
顔を上げて、扉を見る。
自身が案内をしたのだから覚えている。
エーリッヒの部屋だ。
昨日。外から戻ってきた彼にも、事実を語った。子を遺し逝った母に祈りを捧げる彼を見上げたものの、何も言えずに倣うだけ。
食事時もその後も、殆ど話せずじまいだった]
……エリ先生、
[呼びかけ、拳を握り、扉を叩いた。
最初は弱く、徐々に強く。
返事はない。
ドアノブに手をかけた]
[扉は難なく開く。
寝台に人影はなく、毛布もない]
……って、先生。
なんで、そこで、寝てらっしゃるんですか。
[横にずれた視線が、その両方を見つける。
近づいて傍らに膝をつく。伸ばした手は、一瞬、止まった]
朝ですよ。
[窓から射し込むのは、陽のひかり。
毛布を頭まですっぽりと被っていた彼には、見えなかっただろう。
日常的に、起こそうとするように。
白かったはずの布に手をかけ、捲った]
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