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[心当たりなんかあるはずなくて、向けられた視線に少し悩んだあと、首を横にゆっくり振った。
それから、考える。
サリィは、も、と言った。
つまり、ほかの人も何かがあったということ。
つきんと痛むのを今度こそ気になって、身をかがめて、足首のあたりを見てみる。
ズボンを少し捲ればすぐにあらわになる淡い紅色の八枚の花弁。
小さな花がそこにはあった。
こんなものなかったはずなのだ。
ミレイユとサリィの様子を、座って、右足首を抑えて、見る。
こういう事がみんないおきてるのなら、大変だなあと思って、ちょっと心配げな顔だった。]
俺のは青くて小さいのがぱらぱらしてる感じ。
つか、男なのはわかってんだろー?
[つん、と軽く唇を尖らせる様は先程と逆の様相。
本気で拗ねている訳では無いから、すぐに笑いに解けて]
[休憩中の札が掛かるのを見届ければ、
隣に並ぶ形でテレーズの家へと向かう]
[サリィの言葉を聴き、また更に首が傾いだ。
今何が起きているのか。
そんなこと、伝承もずっとちゃんと聞いていないから、わからない。
ただ、少し悩んで、小さく言った。]
わからない。
僕も、変だ。
花の形がある。
わかりました。覚えておきます。
……でも、僕の方も、間に合わないのかも知れないけれど。
[ぽつり、ついそんな言葉が口を突いたのは、花のしるしを持ちその伝承を知る者に、初めて会ったせいかもしれなかった]
もし、そうなったら。
[と、幾つかある心残りを口にしかけたが]
……いえ、こればかりは本人に伝えないといけませんね。
[自覚を新たにしたように、呟いた]
花を、刈るって。
偽物は、みんな刈る、って……
わからない、誰かが言ってた。……言ってる。
[一度首を振って、過去形を現在形に言いなおした]
心当たりは、わからない。けど。
……さっき、ね。
テレーズが消える、ゆめを見た。
[そしてもう一つ、付け加えた]
楽しい仕事に出会えて良かったな。
[笑うノクロを見ていれば拗ねるような心は消えてゆく。
歳の差は変わらないのだから年長者としての余裕をみせねば。]
ノクロの作る色は本当に綺麗だから。
……テレーズに見せられないのがほんと残念だ。
[言葉でしか知らぬ色を語り幸せそうに笑うテレーズ。
盲目の口伝の君を思い、少し困ったように笑う。]
あー、クレイグの見たのか。
僕もまだみせてもらってないのに。
……違うかたち、そ、か。
周期──『『死神』の降る刻』が来たって事になるんだってさ。
[伝承の一部を口にしてゆれるノクロの右腕を静かに見詰めた。]
─ テレーズ宅前 ─
…レーちゃん、が…?
[ミレイユの見た夢は、現状を鑑みるにただの夢だと言えなくて。
知らず、息を飲むのも微かな震えを伴い]
エっくんの、ところ。
行きましょう。
レーちゃんを、探すの。
[探したいではなく、探す、と。
無事であって欲しい気持ちが、そう言わせた]
[手の平、指の先の方でも隠れる程度に小さなその花の名は、雪割草。
ミレイユも、ちょっと見えただろう色。
彼女の告げる言葉に、首を傾げた。
何が偽者なのか、テレーズが消える夢とは何か。
刈るというのは、何なのか。
理解していないミケルは、サリィよりもずっと、緊張感がない。
ただ、ミレイユの言っていることは嘘ではないのだろう。
そう思ったから。口をつぐんで、二人を見ていた。]
― 都市の通り ―
[肩を竦めるクレイグ>>116に、そうか、と合点がいったように頷いた。
『筆記者』なら仕事として、伝承の記された本に触れることもあるのだろう]
それなら、待ってますよ。
……こればかりは、願うことしか出来ないですけれど。
[零された心情を、後押しするように。
微笑んで、ゆっくりと頷く。
目を細めるクレイグに、左の首筋を隠す髪を持ち上げて見せた。
紅紫は、炎にも似た花弁を形作る]
僕の仕事に、貴方の本も、きっと必要だと思うから。
……お互いのために、少しでも、長く。
[祈るような眼差しを、クレイグに向けた]
おう。天職だと思ってんぜ。
…仕事に嵌り込んで寝食忘れちまうのも、
合ってるからなんだろーとは思うんだけどなー。
[ふいに飛んだ思考は苔に囲まれ眠る姿を思い出して。
むぅ、と小さな唸りは合い過ぎるのも困りものかとの思考故]
んー?褒めても何にも出せやしませんぜ?
テレーズはなー、見えないけど、言葉に見えたら同じだと思うぜ。
それは想像に過ぎないかもしれないけど、
綺麗だと思うその光景が浮かぶんなら、充分見えてると思ってる。
[理想論だけどなー。間延びした言葉はのんびりと]
俺が見たのは偶然ー……あれ?
俺が見たのはさっきで、クレイグが気付いたのもその時、だぜ?
いつ知ったんだよ、エト。
[きょとん、と瞬いて、右腕に視線を落とす彼へと瞳を]
[祖父から聞いた話。
それを語る祖父の顔が、あまりに悲しそうだったのと。
その話自体、悲しくて─怖いと思ったから。
だから、記憶の中に沈めて。
それに伴う事柄も、避けてきたけれど。
緩やかに戻る記憶が、不安を一気に増していく。
ミレイユ達の返答を聞けば、ミレイユから離れて外に置いていた台車へと手を伸ばし。
歩き始めるのと、エト達がこちらに来るのとはどちらが早かっただろうか]
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