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─図書館─
[司書に不審の目を向けられたが、彼は村の過去の資料を貸してもらう事が出来た。
昔々の物語。
まだ、嘆き島が今よりも大きかった頃の記録。
けれども、ある時を境にして、それより以前の記録はない。
司書に尋ねても、これ以上の記録はないようだった。
彼は、一枚の絵を眺める。
今の嘆き島と違う姿の過去の嘆き島の姿だった。のんびりとした風景を描いていて、島の両側が今よりも広い。]
デボラお婆さんは、どうしてカミーラさんの言葉が分かったのだろう。
[彼は呟いた。]
[ミッキーを信じられなかったのは、ハーヴェイを占ったせいもある。
ハーヴェイは、懸命に探していたのに。あの凍ったような微笑、それだけを理由にミッキーはハーヴェイを占った。
…適当過ぎはしないか。]
─図書館─
[長巻物に記された、デボラの語った物語。
勿論、過去と現在を混同しているだけだったのかもしれないけれど。
1人の余所者が波打ち際に訪れて…
カミーラが倒れていた時は、湿った風が吹いていただろうか?
よく覚えていない。
けれど、月が青白く砂浜を照らしていたから、雲は出ていなかった筈だった。
魔物は海から訪れる。
けれども、魔物は里に住んでいた。それは人の間にいた人狼。
鬼は海から来なかった。ずぶ濡れで運ばれてきた娘は魔女ではなく、人魚だった。
人魚が打ち上げられた夜に、島には血の雨が降る。島を惨劇から救ったのは旅人だった。]
[今日、嘆き島に送りたい者の名は、既に心に決めていた。本当に上手くいけば、これで終わる。
だが、同時に考えなければいけなかった。
…もしミッキーが本物だったときのことを。
誰を占ってもらうべきか]
―集会場・個室―
>>37
[ 個室に戻ると、ミッキーは一度、強く壁を殴りつけた。彼の体重が乗った拳が、部屋を揺らす。そんなことは、知ったことか。]
人だとか狼だとか、そんなんじゃねえよ。畜生が。
俺はまだ人に戻れる……? 戻りたくもねえ。
俺がまだ、言葉を使えるようになったばかりの頃。
人は、あの優しい狼たちを殺していった。
結局自分が生き延びるために何かを犠牲にするのは人も狼も変わりゃしねえさ。
今更、投票の形であっても……人を殺しておいて、人間らしさだのなんだのと言うつもりもねえ。
何言ったって、シャーロットは、もう……。
結局守れてなんかいねえじゃねえか。
勇気ってなんだ。
意味があるものだったのか。
─教会へ向かう海近くの道─
[教会へ向かおうとしている。
父親と会ってケリを付ける為には、この事件が解決し、かつキャロルが生きている必要があった。そんな日が来るのかと、気が遠くなりそうで、人気が無いのを良い事に煙草を銜えながら歩く。
自分が男が好きだと自覚してからは、教会へは行っていない。けれど、遠い母親が生きていて一緒に通った昔を思い出して、入る前に煙草を消した。]
─教会─
[少し狭い入口をくぐると人の気配がした。
はじめに暗闇があってそれから、ステンドグラスの光が見えるのは、神の荘厳さをあらわす為の教会建築の仕組み、ひとつの舞台装置なのだと言う。]
ローズマリー?
[カツンとヒールが響き、キャロルの声が反響する。]
―教会―
ん?
[響く声に思わず顔を上げ、ぽかんとした。]
え?
[キャロルの髪がステンドグラスを透かして光る日差しを浴びている。]
オレ、寝てたのかな…?
…ギルバート?
あたし、ローズがここに居るかと思って来たのだけど。ここでお祈りを?
[カツカツと踵を鳴らしながら、近付いて行く。]
[立ち上がると、人狼のことに集中していた頭が現実に引き戻された。
なぜか、この場にキャロルがいる。夢ではないらしい]
…こんにちは。
[少々緊張していた。ポケットに入れっぱなしのサーカスのチケットを握り締める]
─図書館─
[彼は、デボラの言葉と長巻物に記された内容を想起する。
墓荒らしの悪魔は、衛兵上がりの墓守が追い払い、
人狼として祀られた人間は鬼となり、社に住まう。怨みの声を響かせる。
だからこそ行う、鎮魂。
けれども、彼はモーガンから祭事の事は聞いていなかった。デボラによるとモーガンは、継がせない事を選んだという。
たった一度、アーヴァインの一族の中に狼憑きが出た事。「狼狩り」という伝承を、アーヴァインの先祖が見つけ出してきた事。
もしかして、過去の人狼事件の事の記録がないのは…
けれども、それは想像に過ぎない。
「狼狩り」は祭事だという。
決まった人数の贄で人狼に制約を与えるという。
分からない。そんな事は可能なのだろうか?
そして、デボラは本当に妖精から伝えられているのだろうか。]
…あ。
[大事なことを忘れていた。オレは自分のことばっかりだ。クラークの死を悲しんで、祈って。…昨夜非業の死を遂げたイザベラのためには、何一つ]
[緩やかに微笑する。]
…ううん。お祈りは小さい頃は通ったけど、12、3歳から教会には来ていないわ。
久しぶりだけと変わってないのね…ここ。
(父親の容態が良く無い事もあって)ローズと話したくて来たのだけど、話してどうなる事でも…無いかも。
[「あ」と言った事には不思議そうに。
そう言えば、と首を傾ける。]
ローズが塞ぎ込んでた理由。
あなたやリックと…関係があるの…?
普通なら聞いちゃ行けない事かもしれないけど、こんな時だから──少しでも信じられる人を増やしたいから……聞いてもいい?
―桟橋のそば 岩場―
……Like a diamond in the sky.
[ふと小さく歌の一節を口ずさんで、空を見上げた。
少し悩むように]
……おれは、人殺し、かな。
まあかまわないか。
[それからまた横笛を、手に取った。]
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