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うん、外に父さんと母さんに挨拶に。
[白い花に囲まれた黒い墓石、そこのちょっと離れたところに自分で作ったささやかな実父母の墓。
雨が降りそうだったから、胸騒ぎもありいっておきたかった。
小さなコエはとうとうに聞こえ]
誰…?
[ハーヴェイが尋ねかける相手の返答に注意が向く]
―書庫―
随分綺麗になりましたね。
[本を両掌で挟みながら棚の一角を見上げ、墓守は感嘆の声を上げる。
広い書庫のほんの一部ではあったが、綺麗に修繕され整理されていた。
その並びを乱さぬように順序の確認をして、手持ちの本をそこに戻した]
そうなのか…そちらの事情まではよく知らなくて。
世情が変わると、なかなか生きずらいな。
[謝罪には遠い気もしたので、そう言って返し。
目で問われた事に気づくと、シャーロットの方を見た。]
シャロ、外に出るのか?散歩じゃないよな。
用があるなら止めないけど…無理するんじゃないぞ。
[そう言い見送った後、マンジローには「まぁ、俺よりこの辺りには慣れてるから」と小さく告げて肩を竦めた。]
―廊下―
[広間を出て、周囲に視線をやる。
今はほとんどのものが広間にきており誰の姿も見つからない。
使用人達は厨房の方で夕飯の準備をしているだろうか?]
……
[広間に比べてひっそりと静かな廊下に出ると風雨の音が強く感じられる。]
あら。
[広間に戻ってきたセシリアがこちらに来るのに気づいて、笑みを向ける]
ああ、彼は人と接っするのが少し苦手なの。
だから、そっとしておいてあげるといいわ。
ここにいるという事は、具合は大丈夫だろうから。
[マンジローがラッセルの事を問うのに、さらりとこう告げて]
そう、毒。
……夾竹桃の花はご存知かしらね?
一部の方には、その名を冠して呼ばれる事もありますわ。
[冗談めかして返すものの。
『くのいち』についてはさすがに理解が及ばず]
あら、そうなんですの?
[きょとり、としながら首を傾げてみせた]
[ギルバートとセシリアにも、同じように頭を下げる]
ギルバート殿にセシリア殿か。
我の事はシラヌイでもマンジローでも好きな用に呼んでくれて構わぬよ。
堅苦しいのは我も望むところではない。
それにしても本降りになる前に一夜の宿が取れてようござった。
雨の中野宿するのは、慣れていても余りいい気分ではのうござるからな。
[そうしているうちにも、広間に人が集まってくる。
やってきてそのまま部屋の隅に座り込んで、キャロルの声に首を振るラッセルには]
あまり無理しなくていいんだぞ?
[とだけ声を掛ける。
あまり言い過ぎると返って困らせると知っているからで。
その後でやってきたセシリアには、あまりいつもと変わらずに]
少しは落ち着いたかい?
その…からかったつもりはないから、さ。
[謝罪にも似た言葉を。
広間を出るシャーロットは視線だけで見送って]
─広間の隅─
…………。
[キャロルに気遣う言葉をかけられたが、素直に頷くことは出来なかった。
今まで治らなかったものが直ぐにどうにかなるはずがないために]
[部屋の隅で膝を抱え、視線は床に向ける。
耳を塞いでいないだけ状態としてはマシな方だったが、知らぬ者が見たなら不思議に思うことだろう。
くぅ、と小さく腹から音がする。
空腹を訴えていたが、しばらくは部屋の隅から動こうとはしなかった]
ああ、そっちの子は、ラッセル…ラッセル=クラフ。
アーヴァイン卿に世話になっている子だ。
だいぶ人見知りする子だけど…あまり気にしないでやってほしい。
[シャーロットの時と同じような紹介になったが。
伝える術のないラッセルの事も、そう紹介しておいた。ユージーンあたりがいれば、任せたのだが。
名と姓に間があいたのは、こちらも思い出すのに少し時間がかかったからだ。
キャロルがラッセルに近づいたのが見えたが、その前に、新たに増えた人の気配に入り口へと顔を向けた。]
……?ええと、君は、どこかで会った事がある、かな?
ああ、俺はハーヴェイ。ハーヴェイ=レイという。
[見た事はあるのだが、思い出せない。
やや首をかしげながら、セシリアにそう告げた。]
―廊下―
[足早に玄関に向かいながら、先ほどすれ違った少女にそういえば自分は名乗っていなかったかなと思った。
けれどもキャロル達が自分の名前も確か呼んでいたはずだし伝わってはいるだろうと。]
……
[玄関をくぐると外の天気はだいぶ崩れており、一歩ずつ慎重に墓のある方へ向かった。]
[シャーロットと入れ違いに、使用人らがワゴンを運んで入ってくるのが見えた。
トビーは匂いに引かれ、そちらの方を向くだろうか。
そのうち、テーブルに新鮮な野菜や、ウサギなどが使われた料理が並ばれていく。]
―墓―
[しばらくして白い花畑に黒い墓石が見える。
向かうのはそちらではなく離れた一角、自分で作った小さなお墓。
盛り土にした上にちょっと形のよさそうなちょっと大き目の石を載せただけの簡易なもの。
墓標に刻まれてる名前もなく。眼を瞑り小さく祈る]
…とう…さん…かあ…さん…。
[小さく呟いて漏らす声、死んだ実父母のためにひっそり建てた小さなお墓。]
また…いや……まも……って……。
[祈りの言葉は小さな声になりすぐに風雨に消える。]
私、エッタ。
[確りと聞こえたコエに戸惑いながら応える。
意識して使った経験が殆ど無いので無意識に紡いだコエと違い酷くたどたどしい]
貴方…誰。
[複数の意識に向けて少し震えながら問いかける]
―廊下―
[書庫の前で使用人に出くわす。
そろそろ食事の準備ができるから、広間に行ってはどうかとの言葉]
客人方の後に頂きますよ。
死に近い者が同じ食卓に就くなど、不快を与えてしまいますから。
[常と同じ言葉で断る。
親しい使用人は尚も何か言いたげにしていたが、墓守は苦笑を返すのみだった。
実際過去にそう言う客人も少なくはなかったからだ]
[広間を離れるシャーロットと、入れ違いになるよに運ばれてくる料理に目を細める。
ラッセルの様子には、やれやれ、という感じで息を吐くものの、それ以上は無理に言葉を重ねない。
あれやこれやと言っても、負担にしかならぬものもあるのだから、というのもあるが。
何より、そこまで踏み込む意思は女にはないから]
ああこんばんは、久しぶり。
あの吊り橋な…相変わらず危ないっていうか。
うっかり気を抜いたら本気で飛ばされて谷底行きだ。
[ギルバートに、風が本格的に吹く前に辿り着けてよかったと、軽い笑いに肩を竦めて笑み返し。
泊まっていくには、へぇと珍しい顔をした。]
ならお小言はなしか、良かったような残念なような?
[とは冗談めかしてこちらも返す。]
それにしても……賑やかな滞在になったな。
2,3人と被る事はあったけど、こうも多いとなると。
[嵐のせいかな?とちらと窓の外を見た。
雨は少し強くなってきただろうか。]
[しばらく祈りをささげた後に顔を上げ]
………
[周囲を見回し、首を微かに振る。
祈りを済ませた後は慎重に今度は玄関に向かい屋敷の中へと戻った]
―客室―
[小さな音を立てて扉が開く。
寝具に沈めていた半身を起こして其方を見た]
『お着替えをお持ちしました』
…有難う。
少し手伝っていただけるかしら。
[僅かな沈黙の後に頷いて寝台から出た。
小さく震えながら窓の方へ顔を向ける]
雨が降ってきたの。
『はい。
降られる前にいらっしゃられてようございましたね』
[レェスのシャツに天鵝絨の上着とスカート。共布のリボン。
シャーロットから借りた衣装のサイズは程好かった]
エッタ…?あの子?
[聞いたことのある名前、確かに意識して聞けばそのコエの印象は依然聞いた声によく似たもので]
ハーヴ…?
[伺いを立てるようにその名前を呼んだ。]
[キャロルの言葉に、ラッセルの方をちらりと見た。そう言えばこの子は玄関でトビーが手を振ってたときもすぐに隠れてしまったような]
なるほど。とすれば、この屋敷のように客人や使用人が沢山いる場所は居心地悪いでござろうな・・・。
[そう小さくひとりごちて、すぐにそれでもわざわざ広間に来るくらいだからそうでもないだろうかとも考える]
夾竹桃・・・あぁ、あの竹のような幹に桃のような花が咲くという。枝には猛毒が含まれて居るとか何とか・・・
恐ろしい話でござるな、それは。
やはり花とおなごは離れて眺めるが良いと言う事か・・・
[くのいちについては良く分かっていなかったようだが、あえて特に説明はしなかった。説明するほど詳しくもないし、必要もないだろう]
ああ、そうか…。
[ならば止める術はない。
くれぐれも、気をつけるんだぞと念をおしてから、彼女を見送る。]
何かあったらすぐ囁きかけるんだ。
[そうして、届いた名前に、驚いて瞬いた。]
……エッタ嬢、か?
おかしいな。さっき触れ嗅いだ時には、仲間の匂いはしなかったんだが。
[そう言い、誰かとの問いには少し間を空けて。]
ハーヴェイだよ。
眠っていたようだけど、気分はどうだい?
[そう、表で話しかけたときと、同じ調子で話しかけた。]
[思ったよりも気さくなマンジローの様子に、少しだけ安心して]
東国の人は礼節にうるさいって聞いてたけど、そうでもないんだな…っと、ちょっと失礼だったか。
それじゃ、マンジローさんって呼ばせてもらうな。
[ようやく固さの取れた笑みを向けて、聞こえてきた植物の名前に小さく首を傾げる。
それがどういうものか多少の知識はあったから。
だけど、それは口にする事はなく]
綺麗な花にはなんとやら…ってやつ?
[どこか冗談めかして呟くだけ]
―廊下―
[玄関に入りぬれた外套を脱ぎ、玄関前で待っていた使用人に渡した。
代わりに乾いたタオルを渡されて少しぬれた顔や髪を拭く]
……
[水分をふき取ったところで礼をして使用人にタオルを返し、
廊下をしばらく行くとユージーンの姿を見かける、何か使用人と話してる様子だった]
─広間の隅─
[鼻孔を擽る料理の匂い。
少しだけ顔を上げて、匂いのする方を見た。
腹は尚も空腹を訴えている]
………。
[けれどやはり直ぐには身体が動かなかった。
周囲を伺うように視線を軽く彷徨わせる。
その様子はびくついているようにも見えたか]
父の?…ええと、君の姓は何ていうんだい?
[それを聞けば、ようやく思い出せるだろうか。
そう思い、逆にセシリアに問いかけた。
少し空腹を覚えてはいたが、会話中に食事を取るには気が引けて。
とりあえず、用意された紅茶を飲みながら。]
[ハーヴェイが自己紹介をする様子に自分も続いて]
私はシャーロット、さっき会ったよね。
服、サイズあったかな?
[ハーヴェイが普通に話しかけるので自分も普通に話しかけることにした。
表での印象の違いに向こうはどう思うだろうか]
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